2016年09月14日

血の季節/小泉喜美子

 ちょっとぱらっと読むだけのつもりだったのに・・・読み終われなくてほぼ一気読み。
 というか、「あたし、これ、以前読んだことある?」と思ってしまうほどの既視感(既読感?)。
 いや、きっとそんなことはないはずなんだけど・・・1982年発表の作品だそうなので、多分それまでの先行作品と、これに影響を受けたのかもしれない後発作品とがあたしの中でいろいろないまぜになって出てきた、ということかもしれない。

  血の季節.jpg 著者の代表作とされる『弁護側の証人』は日本を舞台にしながらもどこか文体が翻訳調というか、外国モノっぽい雰囲気があったのだが(これの著者あとがきによれば『シンデレラ』を下敷きにしたそうで。 納得!)、今作は間違いなく日本であった。

 青山墓地で発生した幼女惨殺事件の犯人は死刑を宣告され、刑の執行の前に独房で奇妙な告白を始める。 そもそものきっかけは40年前、犯人の少年時代に出会った異国の公使館に住む、金髪碧眼の美しい兄妹との交流からだった。
 その回想の合間に、惨殺事件を捜査する警部の努力と困惑が挿入され、ただの「嘘かほんとかわからない狂人かもしれない人物の告白」を論理的に補佐する。
 東京大空襲をこんな形で持ってくるなんて!
 火葬が一般的な日本では成り立ちにくいヴァンパイアものを歴史に絡めてリアリティを持ちこむとは・・・脱帽です。
 「語り」の部分には特に目新しさはないものの、それが逆にラスト数行のさりげない描写に込められた驚愕をより強くする、というか。 ミステリやホラーは子供だましではない、優雅で高尚な嗜好品(もしくは芸術品)である、という作者の思いが溢れ出てくるような作品であった(その当時、このような作品への社会的評価は低かったような記憶があたしにはあるので、余計にそう感じちゃったかな)。
 小泉喜美子さんが<翻訳家>という認識でいたのは実にもったいなかった。 翻訳家でありつつわが道を行く作家であったと、もっと早くから認識すべきだった。 しかし早くに亡くなられている以上、もっと作品を!、と望むのは手遅れなのだが・・・。
 あぁ、まったくもって、あたしはいろんなことに気づくのが遅すぎる。 

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする