2016年09月13日

生きうつしのプリマ/DIE ABHANDENE WELT

 家族ネタというのは世界でも追求し続けられるものなんだろうな。 でもあたしは今回<『ハンナ・アーレント』監督による最新作>というキャッチにつられてしまいました。 ドイツ映画の雰囲気ってなんか好きだし。

  生きうつしのプリマp.jpg 母と同じ顔をしたメトロポリタン・オペラのプリマドンナ。 彼女は誰なのか? ニューヨーク、ドイツ、イタリアを辿り、<母を知る旅>が始まる――
  オペラの旋律にのせて紐解かれていく、ある母娘の過去をめぐるミステリー。

 結婚式のプロデューサーとして働くゾフィ(カッチャ・リーマン)の本職はジャズ歌手。 しかしあまり売れておらず、小さなクラブでのレギュラーを失って落ち込んでいるところに、強引に父親から電話で「とにかく家に来い」と呼び出される。 動揺しているのか要点を得ない父親にどうにか事情を話させれば、インターネット上で死んだ母親のエヴェリン(バルバラ・スコヴァ)とうり二つの女性を見つけたのだという。 その人物はニューヨークのメトロポリタン歌劇場のプリマドンナ、カタリーナ(バルバラ・スコヴァ)。
 どういうことなのか調べてきてほしい、というめちゃくちゃな父親の頼みを断り切れず、それ故に同居中の恋人とも別れることになって、失意の中ゾフィはニューヨークへ旅立つことに・・・という話。
 オープニングの映像、そしてゾフィがこれから結婚しようとするカップルに尋ねる言葉などがラストへの布石になっているのだが、実はミステリーというよりはどちらかといえばコメディ寄りの物語(『ミモザの島に消えた母』のほうが家族をめぐるミステリーとしての完成度ははるかに上)。 でもドイツ人気質というかその生真面目さ故でしょうか、コメディとして成功してはいないのが残念というか、らしいというか。
 でも『帰ってきたヒトラー』がコメディ映画の振りしてホラー映画だったことを思えば、これは監督の資質ではないかと感じたり(きっと真面目な方なんでしょう)。
 そう思うと主役を演じるカッチャ・リーマンさんが『帰ってきたヒトラー』のTVプロデューサー役で出ていたことがちょっと面白い(ただ単に、ドイツの売れっ子女優さんだということかもしれないが)。 しかしプリマドンナのカタリーナを演じるバルバラ・スコヴァさんがハンナ・アーレントとは同一人物に見えなくて「あぁ、女優とは髪型とメイクでここまで別人になるものか」と改めて驚愕(横顔を見て、「あ、同じ人」とわかったけれど)。

  生きうつしのプリマ1.jpg そんな実力派お二人を観る映画。

 まぁなんとなく因縁は見えるのだけれど、方や世界的に有名なオペラ歌手、方やしがないジャズシンガーという対比もまた人生の複雑さ? その割にオペラのシーンよりもゾフィが歌うシーンのほうが目立っているというか多いというか印象深いというか・・・ご本人が歌っているんだとしたらそれはそれですごいんですけど!
 でも改めて考えると、いちばんの困ったちゃんはゾフィの父親というか・・・「頼むから調べてきてくれ!」と娘を送り出しておきながら、娘がぶつかった疑問にはだんまりだし、妻を愛しているといいながら夢を見て「復讐される」と口走るなど意味不明。 そもそもゾフィが訪ねてこなければカタリーナ側も何も知らずにすんだわけだし、娘たちは不本意ながら親世代のごたごたのしりぬぐいというか後片付けをさせられたような・・・。
 もし、娘世代がもっと若かったら今後の人生人間不信に陥ったかもしれないけれど、ほどほどいい歳である彼女たちは「まぁ、人生、そんなこともあるわよね」と受け止められたのかもしれないし(結構悲劇的というかそのあたりの“秘密”は大真面目に語られるのではありますが)、だからこそコメディだと思える軽い気持ちで観終われたのかな、という気もする。

  生きうつしのプリマ2.jpg ドイツではさっぱりだったけど、ニューヨークのジャズクラブに飛び入り参加させられたゾフィが拍手喝采を受けるのも、視野が広がったことへのご褒美というか。 観客としてもカタルシスを得られるし。

 それにしても、出てくる女性たちはそれぞれ魅力的なのに、男性たちの影の薄いこと・・・女性にとって息子以外の男はいつでも取り換えのきく存在なのであろうか(逆に言えば男性から見て女性もそう)、とつい考えてしまったりしてしまうのは何故かしら? ここはこの物語とは直接関係はないのだけれど・・・ゾフィの彼氏とのあっさりしすぎな別れや、新たな相手とのあっさりとした出会いがそう感じさせるのかしら。 それともゾフィという主人公を中心に据え過ぎた結果? バランスって難しい。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする