2016年09月10日

秘密 THE TOP SECRET

 あー、やっちまったよ。 よく考えたら萩尾望都さんは人のつくったものの悪口とか不平不満とか一切言わない人だった・・・忘れてた!
 そう、あたしは久し振りにほんとにひどい目にあってしまったのでした。
 いくら原作と映画は別物だってさ・・・これはひどい、ひどすぎるよ!
 というわけで以下、不平不満が並びます。 ご了承ください。

  秘密P1.jpg 死者の記憶を覗き見る勇気はあるか?

 死者の脳をスキャンし、生前の記憶を映像化することができるMRIスキャナーが開発され、それを事件の捜査に活かすことにした近未来。 科学警察研究所法医第九研究室・通称<第九>がその任を担うことになり、室長・薪剛(生田斗真)のもとで様々な難事件が解明されてきた。 そこに青木(岡田将生)という青年が第九に配属されてくる。 薪は青木に、家族全員殺害の罪で死刑になったばかりの男(椎名桔平)の脳をスキャンするよう指示するが・・・という話。
 はっきり言うが、この作品の原作はミステリではない。 SFミステリである(むしろSF色濃厚)。 映画の制作陣はそこをわかっているのだろうか・・・というのがいちばんの印象であった。 冒頭から<第九>についての説明テロップが出るのだが、このMRIを利用したシステムは数行の文章で説明できるものじゃない。 完全に、原作未読者をそこで置いてけぼりにするのだ、ひどくないか?

  秘密2.jpg なんか青木くんが思っていたより早口で話す人でびっくりした。 ちなみに原作ではこんな機械は使わない(こんな映像向けの機械をつくったのなら、もっと効果的に使えばいいものを)。

 薪さんの原作のビジュアル(35歳の警視正だが、見た目は男か女かわからないほどの美貌かつ高校生にしか見えないか細さ)を再現できないことに文句は言わないが(一応少女マンガだから・・・でも神木隆之介や林遣都といった選択肢もあったと思えるのだが、仕上がりがこれではビジュアルを近づけない方がむしろよかったと言えるかも)、キャラの性格設定まで変わっているのはさすがにちょっと・・・行動の理由づけに納得いかない感じがする。 そもそも、なんで薪さんがその若さで、なおかつ過去に問題を起こしていても室長を続けていられるのか、の説明がまったくできていないのもどうかと思う(周囲の人間に「あの人は特別だから」と呟かせるだけでは説得力がない)。 これだからマンガ原作の映画化はリスキーなのである。 原作と全然違うけど、伝えたい本質を外してなければOKと思えるものなのだ。 なのにそれすらもこの映画はどこかずれているので・・・手に負えない。
 原作から違う二つのエピソードを取り上げて、それが実は裏でつながっている・・・という構造にしてしまったのでかなり無理が生じており、物語上いちばんの“怪物”である貝沼の存在がぼやけてしまうというか、あー、なんかもう必要な描写がないのにいらん説明台詞はあるな!、とイライラしてしまうことに。

  秘密1.jpg てっきり大森南朋は岡部さんだと思っていたのだけれど・・・原作オリジナルキャラの所轄の刑事。 そんな人に「死者の記憶を覗き見ることは倫理上許されるのか」という大きな命題を語らせてしまうのもなんか違うんじゃないか、という気がする(本来、薪さんと青木くんがすべき会話をこの人と青木くんがしている時点でおかしいでしょう)。 オリジナルキャラって、便利な存在だなぁ。 その分、大森南朋はおいしいけど。

 あと、衣装というか服装もヘンなのだ。 <第九>職員は拳銃の携帯を許可されているが(そのへん、説明がなかったような)、革製のしっかりしたホルスターをしているんだけれど・・・その上からジャケットをはおったらホルスターが浮き出て、まるで拘束着のように見えてかっこわるい。 あと、多分ベストは薄い金属を内側にはりこんだ防弾仕様なのだろうけど(これも特に説明なし)、これもなんかヘン。 着物の応用のようでいてそうじゃない。
 更にすごく気になったのは、この物語は近未来設定なのだけれど、そのことにまったく言及してない点。 <第九>のモニターやPCはLG製であることが強調されるかのように何度も映されるのだが(青木くんの私物モバイルはVAIOだったが)、そういうメーカー名出すのやめてほしいんだけど。 近未来までそのメーカーが残ってるとは限らないのだし、知らない人は現代設定だって思うじゃないか!

  秘密3.jpg ベストのとめ方ヘンじゃない? しわが寄りすぎだし。 でも鈴木くんを演じる松坂桃李は、『MOZU』でのダメダメ感を払拭するかのようにいい感じでした。 逆に岡田将生がいまひとつだったかな・・・よく考えたらこの二人、『ゆとりですがなにか』でも共演していたが、ドラマのほうが二人ともいい演技だった(多分、映画のほうが先に撮影されているのもあるだろう)。

 おまけに大事なラストシークエンス、ある脳が残していた記憶に、ある人物までも美しく邪気がないように映っているというのは・・・それは「本来そうあるべき姿」を描きたかったのかもしれないが、その人物の悪意を見抜けなかったとその脳の持ち主を暗に責めているようにも感じるし(それは不当なのだが)、そもそも最も愛する者だけをひたすらに目で追う(その対象だけが特別に輝き、他はそれほど意識に残っていない)というまっすぐな想いが胸を打つからこそ「世界は美しい」のであり、その想いを誰しもが持つことができるのなら「もっと世界は美しくなる」というテーマだったはずなのに、そこがぼかされた!
 名もなき少年の死をほんとに名もない扱いにされてしまったことには、怒りしか湧いてこない。
 ちなみにエンドロール見たら、脚本家が4人いた。 あたしの経験上、脚本家は多ければ多いほど物語は迷走する。 しかもうち2人は朝鮮半島系のお名前だったんだよね・・・LG推しはそのせいか(スポンサーに名前載ってましたしね)。
 となるとMRI捜査について薪さんが発表する場で、世界中の警察関係者が集まる席でやたら韓国国旗が目立っていた(映っている時間も長かった)のもそのせいか、と勘繰りたくなってくる。 あー、やだやだ。
 複数の脚本家でチェック・ダブルチェックをするのは構わない。 でもその結果、「初めて観る人」の視点が欠落してしまうのは弊害以外の何物でもない。 今度からあやしい映画は脚本家の人数も確認しよう・・・(っていうか、観に行くなよ)。
 ま、わかってましたけどね、ダメだろうということは。 それでも二時間半付き合わされてこの疲労感・・・ぐったりですわ。
 多分、生田斗真や岡田将生を目当てに来たのであろう大学生らしき女子たちが帰りがけ、「どうしよう、全然わからなかったよ〜」、「原作読めばわかるんかなぁ」と話しており・・・やっぱり原作未読者置いてけぼりじゃないか!、と憤りがふつふつと。
 『るろうに剣心』シリーズがヒットしたからといって大友啓史監督になんでもかんでもマンガ原作の企画を持ち込むのはやめてください。
 SFマインドのない人にSFを扱われると、ほんと迷惑なんで。

ラベル:日本映画 映画館
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする