2016年09月06日

ニュースの真相/TRUTH

 「えっ、この映画いつ神戸でやるって決まったの? チラシとか全然見なかったし上映予定にもぎりぎりまでなかったよ!」とびっくり。 最近シネリーブル、そういうこと多いなぁ。 問い合わせが多いのか、たまたまフィルム(と今は言わないんだろうけど)が手配できたのか。 まぁ、シネリーブル梅田まで行かなきゃいけないかな、と思っていたのでちょっとラッキー、ってな具合(そして今現在は映画館に行く時間がほとんどない日々・・・)。
 そんなわけで事前情報がなかったので、「実話の映画化」ということに冒頭は普通に驚いた(しかもそんなに昔の話じゃない)。

  ニュースの真相P.jpg 真実にはすべてを懸ける価値がある。
    このスクープに脅かされるのは、政権か!? それともメディアか――!?

 ジョージ・W・ブッシュ大統領が二期目の立候補を表明していた2004年。 アメリカ三大ネットワークのひとつ、CBSのプロデューサーであるメアリー・メイプス(ケイト・ブランシェット)は著名なアンカーマン、ダン・ラザー(ロバート・レッドフォード)が司会を務める報道番組『60ミニッツU』で、ブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑をスクープ。
 それはまたたく間にアメリカ国内で大反響を呼び、他のメディアは後追い報道をするが、その後、証拠は偽造されたものではないかとブロガーに指摘されたことから、メアリーやダンら番組スタッフは「嘘を報道した」と世間から猛烈な批判を浴びることになってしまい、自分たちが発掘したスクープ内容を正しいと証明しなければならない立場におかれる・・・という話。
 ケイト・ブランシェットは武器を持たずに戦う役をやらせたら天下一品だなぁ、とみとれる。 ほんとにかっこいい。 だが、この映画の原作は彼女のモデルとなった人物が書いたもの−つまり彼女側の視点でつくられている。 かっこいいのは当たり前なのである。

  ニュースの真相1.jpg 知らなかったが、ダン・ラザーはアメリカを代表するニュースキャスター・アンカーマンだそうである。 が、テレビに出るご本人はいそがしいので自ら調査をしている時間はない。 調査責任者はメアリーで、この二人の間の信頼関係があってこその報道。 二人の疑似親子的な関係がちょっと微笑ましかった。

 ここで問題になるのは、「ジャーナリストは自分の報道にどこまで責任を持つべきなのか」という非常にタイムリーな命題。 というか、責任持てない報道なんかするなよ、というのが目にする側の気持ちなのだが、そこまで検証してたら日々のニュースが追いつかない(即時性を旨とするニュースが発信できない)、という事情もありましょうが、そんなことはこっち側には関係ないわけで。 エゴスクープ(どうせ期日が来れば発表になるのに、それを一歩先んじて報道しようとするやつ)なんかいらんのである。
 信頼できる情報を発信し続けない限り信用されないということになるが、それはジャーナリストの道を選んだ宿命というものであろう。 報道とゴシップの違い、わかってるよね、というのは常識だと思うのだが、日本のマスコミはそのあたりが限りなくあやしい・・・そもそも基本、調査報道はしてない印象だからね(記者クラブ問題参照)。
 その調査報道の成功例が『スポットライト』なら、失敗例がこの映画。

  ニュースの真相4.jpg 報道を見つめるチーム。
    退役軍人キャリアのデニス・クエイドがいい味を出している。
 もっともらしい証拠、子ブッシュならやりかねないという偏見(?)、そして放送日が迫っているという現実等、「ウラ取りが不完全」なまま放送にのせてしまったのは事実。 それ故にわずかでもほころびが見つかれば、報道内容すべてが全否定されてしまうおそろしさ。
 結局、問題提起した内容は完全に忘れ去られてしまい、その証拠は可なのか不可なのかといった重箱の隅をつつく論争一色になってしまう。
 追う側が、追いつめられる側に変わったときの緊迫感がなんともいえず。 本読み少女のご多聞に漏れず、かつて職業としてジャーナリストもいいなぁとぼんやり考えたこともあるあたしですが、強心臓じゃないとこの仕事はできないと改めて納得。 ジャーナリズムを目指さなくてよかったと思ってしまった(正義漢ではあるんですけどね、話したくない相手に口を開かせたりインタビューを撮らなきゃいけない、というのがこっちの精神的にきつい)。
 日本でもしばらく前から民放テレビ局のドキュメンタリー番組が軒並み壊滅状態なのは、「放送日が決まっている・スポンサーとの兼ね合い」などがネックになっているからで、その分、規模は小さくともドキュメンタリー映画がどんどん増えているのだから言いたいこと・広めたいことはたくさん存在しているはず。 けれど巨大マスコミがジャーナリスト精神を忘れ「もうひとつの権力」と化してしまっている現状、一体何ができるのだろうか。

  ニュースの真相2.jpg 弁護士同席で第三者査問委員会に出るメアリー。 余計なことは言うなと言われつつ、いろいろあっても彼女から闘志は消えない。 ケイト・ブランシェットの本領発揮!

 メアリー・メイプスはこの一件でテレビ報道から身を引く。
 けれど彼女のチームがこの前にスクープしたアブグレイブ刑務所での捕虜虐待問題はピーボディ賞(放送業界におけるピュ―リツァー賞といわれる)を受賞し、今でも「調査報道のお手本」とされている。 一度の失敗で過去の功績を評価しないなんてことはない、という事実が、ほんのわずかだが慰めになってしまうのは何故だろう。 事実は事実で、変わりないのに。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする