2016年08月24日

ミモザの島に消えた母/BOOMERANG

 『サラの鍵』と同じ原作者の作品、ということで(日本では未訳)興味あり!
 歴史が絡んでいなくても、さぞ重たいものが降りかかってきそうな感じがして。 予告やチラシもミステリー感、煽ってますし。 ほんとは先に原作が読みたかったのだけれど、邦訳が待たれる!

  ミモザの島にP.jpg もし、語られてきた家族史がすべて偽りだとしたら――?
     美しき母の死の背景に渦巻く、禁断の“家族の秘密”とは?

 30年前に<ミモザの島>と呼ばれるノアールムーティエ島の海で溺死した母親を弔うため、40歳になった息子のアントワン(ロラン・ラフィット)は5歳年下の妹アガット(メラニー・ロラン)とともにこの地を訪れる。 そこで、当時別荘の家政婦をしていた女性と再会し、母の遺体が見つかった場所がこれまで聞かされていたのとは違うことを初めて知る。 母の死は事故ではなかったのか? 父はなにかを知っているのにずっと黙っていたのか?
 “真実探し”にのめり込んでいくアントワンだが、アガットは同じ気持ちを共有できない。
 だが、辿りついてしまった真実とは・・・という話。

  ミモザの島に7.jpg 島でバカンス中の、母との最後の記憶。
 母が死んだ時、兄は10歳で母の記憶は残っているが、妹は5歳だからあまり覚えてはいず、その後父が再婚した相手が自分にとっては母親だ、という感覚があるので兄のように<幻の母>へそこまで執着できない、と反発しながらも渋々協力するのは、アガットの兄への愛情故である。 メラニー・ロランが35歳の役をやるようになっちゃったのか!、とびっくりするが(まぁ実年齢がわからないのでなんとも)、やはり日本での知名度のせいか彼女が主役っぽく宣伝されてますが、あくまで主役は兄を演じるロラン・ラフィットのほう。
 この二人の温度差が年齢のせいだけではない、とわかるラスト近くからのくだりは解決編と見事に絡み合っていて、怒濤のようなカタルシスをもたらす。

  ミモザの島に2.jpg ただ、そこへ繋がるまでの前半は結構つらい。
 アントワンは離婚し、失業中。 恋人はいるが元妻はアガットの同僚なので(まぁ、それがきっかけで結婚したんだろうな、と想像がつくけど)、ちょくちょく顔を合わせることに。 いいお年頃の娘との関係も順調ではなく、まさに事実上<中年の危機>。 そこに母親の死に不可解な点があると知ってしまったものだから、追いかけずにはいられない。 事実を問いただすにも父や祖母は揃って口をつぐんでおり、つい怒鳴り散らしてしまうアントワンの孤立感が際立って、観ていてこっちも落ち着かない。 知っているはずの人が何も話してくれなければ、結局は堂々巡りだから。

  ミモザの島に5.jpg 喋ってやればいいじゃないか・・・とつい思ってしまうのだが、祖母(ビュル・オジエ)は頑として口を割らず、そんな問いかけをするアントワンをむしろ責める。 このババア怖いです!

 それにしても特筆すべきなのは西フランスにあるノアールムーティエ島である(ポスター参照)。 モン・サン・ミッシェルのように引潮の数時間だけ<海の中道>が現れて本土と行き来ができるのだけれど、その<海の中道>の描写が素晴らしい。 海面が次第に道を覆ってしまう様、そして逆に、徐々に道が現れていく様子。 それは見え隠れする家族の秘密とシンクロしている。
 道は岩で囲われているけれど、浸食されないのかな? 定期的にメンテしているのかな?と関係ないことが気になったりして。
 そして勿論、母の死の真実にもまたこの<海の中道>が関係してるんだよね!

  ミモザの島に3.jpg それを乗り越えられるのも、兄妹の強い絆があるからである。

 どんな家族にもそれなりの秘密はあるものだが、中にいるとそれが秘密だと気づかないことが多い(もしくは、他の家族と違って異質であることなども。 虐待やDV・家庭内暴力がまかり通ってしまうのもそのためである)。 家族の結束はそんな暗黙の了解のうちに成り立っていることも多いので、アントワンのように騒ぎ立てる存在は異分子扱いされてしまうのが悲しい。 本来、隠し通してなかったことにしてしまう側のほうが悪いのに。
 「うちの家族に秘密はないよなぁ」と思える人たちは幸せだ。 そうではない者にとっては、この映画の結末は最高のカタルシスなのだ。 だから中盤のぐだぐだも許せてしまうほど、ジーンと胸に広がるあたたかい何かを抱えて映画館をあとにできた。
 この強烈さは、しばらく忘れられそうにない。 原作者タチアナ・ド・ロネって何者!?

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする