2016年07月23日

セトウツミ

 若手実力派の二人ががっちり組んで二人芝居!、といった感じのポスター&チラシイメージを見て、「おおっ! これは観なければ!」と固く決意。 特に池松くんには前から注目してはいましたが、『MOZU』の宏美ちゃん役がすさまじくよかったのでそれ以来すっかり追っかけ気分になっております(この二人に窪田正孝を加えて、あたしの中では若手三大実力派と認定)。

  セトウツミP1.jpg 「喋る」だけの青春。

 高校2年生の内海想(池松壮亮)と瀬戸小吉(菅田将暉)は、いつの間にやら放課後にいつも河原で話をしながら暇つぶしをするのが日課になっていた。 話す内容といえば大概くだらないことだが、ときには思いを寄せる女子へのメールをどうするか、家族や将来のことなどが最低限話題にのぼったりすることもあるがあまり追及しない。 近くにはそんな二人を時折見つめる同級生の樫村一期(中条あやみ)の存在が。 実は瀬戸くんが恋心を抱いているのは彼女で、でも彼女は内海くんのことが気になっており・・・という話。
 バンドネオンのようなアコーディオンの哀愁漂う音楽が、このなんともいえない物語に奥行きを与えているような気がする。

  セトウツミP2.jpg ケンカもない。部活もしない。壁ドンもない。
     「喋る」だけの放課後。

 通行人とか不自然ではない程度に他の登場人物も出てくるけれど、基本は瀬戸くんと内海くんの二人芝居。 それを舞台っぽくもなく漫才っぽくもなく、<男子高校生の日常>としてリアルに表現できているのが素晴らしい!
 内海くんの「誰でも必ず部活に入らないといかんのか。 この川で暇をつぶすだけのそんな青春があってもええんちゃうんか」というモノローグに激しく共感。 同調圧力に屈しない、わが道を行く強さをその歳で持っているのはえらい!
 で、瀬戸くんは自分の考えをうまく言語化する能力がないけど、「誰かに迷惑かけたり疎ましがられたりしてまで自分の我を押し通したくない」と思っている気配濃厚。 うん、おバカでも気ぃ遣い(そして天然?)。 そんなところが内海くんとウマがあったのではないか。 でも、出会いなんてタイミングだからね! 付き合いの深さも時間の長さと比例するわけじゃないから!

  セトウツミ4.jpg 「(距離)近いって」と怒られる瀬戸くんだが、多分怒られていることに気づいていない。

 映画を推薦する有名人のコメントで、やはり関西人は「M−1ええとこまで行けんのちゃうか?」とか「5年後に天下を取る漫才師コンビ<セトウツミ>の今を観ているようだ・・・」みたいなものが多いんだけど、わかってないなぁ、と思う(もしくは、関西人はお笑い至上主義だという証明なのかもしれないが)。
 彼らにとってはあくまで日常会話に過ぎない。 街で行き交う高校生の会話が断片的に耳に入ってくるときだってあるじゃないか。 そういう瞬間に近いんだよ。

  セトウツミ3.jpg でも夏休みにも会っちゃってるあたり、やっぱり仲良しなのね♪

 それに、性格や考え方だけでなく将来の道も瀬戸くんと内海くんはまったく違う道を行くだろう事は明白。 なんだかんだ言いつつそこそこいい大学に進むのであろう内海(何を専攻するかはわからない)、ぼやっと就職組にいてなんとなく就職して、もしかしたら3年以内に辞めてしまうかもしれない瀬戸(いや、意外と長く働くかも、そこで奥さんになる人に出会っちゃうかも)。
 彼らの未来はきっともう交差することはない。 お互いはっきり口には出さずとも、そして明確に言語化できているかどうかもわからないけど(瀬戸くんは出来てない気がする・・・)、一緒にいる時間は今だけだとお互い気づいてる。
 だから、必要以上にお互いの深いところには踏み込まず(自然にわかってしまう部分は仕方ないとして)、ただ、いまを大切に、学校が終わって内海くんが塾に行くまでの一時間半を川辺でだべってつぶす、その“時間”を守ってる。
 男子にとってはそんなことが、ものすごく大事なことだったりするのさ。
 樫村さんは多分内海くんと同じ大学か同じエリアの大学に行くんだろうから、個人的に付き合うとしたらそれからにしなさい。 と、つい老婆心が出てしまうよ〜。
 「内海くんって、ゲイなの?」
 「自分に興味を持たない男はみんなそうって思うのはえらい自信やな。 どうかと思うで」
 と、真顔でテンション低く樫村さんに言えちゃう内海くん、やっぱすごいよ!

  セトウツミ5.jpg 樫村さん、玉砕。

 連作短編なつくりですが、<エピローグ>とテロップが出て「えっ、もう終わっちゃうの!」という気持ちになった。 せめてもう一話ぐらい観たい・・・でも、そのあたりで寸止めする匙加減がいいところなのかなぁ(もうちょっと長いとだれてくる、的な?)。
 その短さが彼らの青春の短さにも重なるような気がして、コメディだし笑える話なんだけど、なんだかとても切なくなってしまいました。
 事前にひよ次郎さまから「堺市オールロケ」とうかがっていたので、堺市とわかるものは映っていないだろうかと最初は気にしてたのですが、途中から瀬戸くんと内海くんに集中してしまい、忘れました・・・。

  セトウツミP3.jpg おしゃべり、ひとやすみ。
     たまにはこんな放課後も。  ← ちなみに映画にはこんなシーンはない。

 チラシ3種類全部集めちゃったあたし、どうよ、って話です。
 この二人もそろそろ高校生役をやるの限界に近付いてきてるから、ほんと奇跡のようなタイミングで仕上がった映画なんだろうな。 『さよなら渓谷』のあとにこれを撮っちゃう大森立嗣監督、さすが。

ラベル:映画館 日本映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする