2016年07月07日

マネーモンスター/MONEY MONSTER

 ジョディ・フォスターがこんなエンタメ重視の映画を撮るなんて!
 しかも素材は<金融>! ミニシアター系文化系女子というイメージを覆す暴挙(?)に、おののいたのはあたしだけ?

  マネーモンスターP.jpg 真実は生放送で暴かれる。

 セクシーな外見の魅力と緩急取り混ぜた巧みな話術で、株価予想や財テクの助言などをすることで人気の高視聴率番組“マネーモンスター”のMCを務めるリー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)は、いかに自分が影響力を持っているかということを最大限に利用し、生放送なのに思いつきでやりたい放題をすることでディレクターのパティ(ジュリア・ロバーツ)をはじめスタッフみんなを日々困らせ、手こずらせていた。
 だからその日、スタジオに見知らぬ男が侵入していることに気づいても、「またなにか、リーの仕込みか」と思ってしまう。 しかしその男は拳銃を持っており、リーの助言通りに株を買ったのに全財産をすべて失ったという報復にやってきたのだ。
 その男カイル(ジャック・オコンネル)はリーを人実に取り番組をジャックし、恨みつらみを募らせるが、なんとかその場を丸く収めたいリーとパティは、何故彼がそんな大損をすることになったのか、そのからくりを番組中に突き止める、と宣言してしまう・・・という話。

  マネーモンスター2.jpg こんなことになっております。
 当然、番組は生放送されているので、警察やFBIも動き出すし、他の局もニュースで“マネーモンスター”の状況を取り上げて実況する。 それを世界各国の人がリアルタイムで見られる、というのがまずひとつ。 金融も一社・一業種の崩壊で世界経済が大打撃を受けるように、情報の伝達もまた世界の一地区での出来事が(ニュースバリューの大きさに比例してだが)瞬時に全世界に拡散する。
 あ、value、それがすべてってことか、と納得してしまう。
 我儘で自分のアイディア優先の男性キャスターと、調整室を取り仕切る女性ディレクターという関係は、ドラマ『ニュースルーム』の構図ととてもよく似ている(この映画の場合は、二人が過去に恋愛関係にあったかどうかは示唆されていなく、むしろ単なる仕事仲間の域を出ていない可能性が高そうではあるが、根底にある信頼関係の深さは垣間見られる)。
 番組ジャックといっても犯人は一人、過激なテロリストでないことは早々にわかるので、被害者・加害者という単純な構図で物語は展開しないということもわかる(そのへんは割り切った『エンド・オブ・キングダム』とは正反対である)。 誰が正しい判断をするのか、正しい判断に基づいた行動ができるのか、むしろそれを問われているような気がしてしまう。

  マネーモンスター6.jpg カイルの破産の直接原因、アイビス社のCEOウォルト(ドミニク・ウェスト)とCCOのダイアン(カトリーナ・バルフ)。 ダイアンは主に広報を担当しているが、次第に「自分の知らないところで何かが起こっている」と不信を募らせる。 そこにつけこむパティとの関係性が見事。 この映画でいちばんのもうけ役は彼女だったのではないかしら。

 あと面白かったのは、番組内の映像と映画自体のカメラアングルの使い分け。
 警察から避難しろと言われても、番組のメインカメラマンだけは残り放送を続ける職人力(スタジオを出るとなったら即座に手持ちカメラに切り替える判断力!)。 そんな裏方のかっこよさを逃さないのも業界で長く生きてきた人ならではなのだろうか。

  マネーモンスター4.jpg アイビス社CEOに会いに行く二人。
 これは手持ちカメラの映像。 リーが犯人の影に隠れているのに撃たれないのは、リーの胸ポケットに爆弾のスイッチが入っているためで、あえてカイルを盾にすることで彼を守っているのである。 そのへんがリーの良心のあらわれというか、彼なりの責任感と同情心なのであろう。
 ジョージ・クルーニーには彼の派手めの時期のパブリックイメージを利用させ(結構無茶なことも当然のようにやるジョージの妙な真面目さが伝わってきて楽しい)、逆にジュリア・ロバーツからは女性要素を極力排し、<仕事のできる人間>という記号の中にほの見える人間性程度に抑えたのが、見たことはあるんだけどネームバリューには到底この二人に及ばない他の出演者たちとの画面上のバランスを取るための必然だったのかな、と思う(ジョージ=リーは映画内でもスターだから)。

  マネーモンスター5.jpg でもそんな地味なジュリア・ロバーツがすごくよかったんですけど。 最近の恋愛映画のヒロインよりもずっと。

 “現代の問題”を描いているけれど、ストーリー面で新しいことは特にないので、「どこかで見たことある」感が満載といえばそうなんだけれども・・・様々なそういう映画のエッセンスを取り込んで、現代版に仕立てました的な(ジョディ・フォスターが出ていた作品からはちょっと『パニックルーム』『インサイド・マン』を思い出した)。
 だから観ている間はハラハラしたりドキドキしたり、それぞれの登場人物に感情移入してみたりと息つく暇はないのであるが、観終わってしばらくすると・・・驚くほど残っているものが少ない、ということに気づく。
 それもすべて計算のうえでの、あえての<娯楽作>なのであろうか。 投資という実業を伴わない商売のはかなさをも示しているのであろうか。
 多分彼女の監督作品として最高のヒットになるであろう今作が、そんなことでよかったのだろうか。 その潔さもまた、とてもジョディ・フォスターらしいのだけれど。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする