2016年06月15日

神様メール/LE TOUT NOUVEAU TESTAMENT

 ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の新作。
 監督の名前は覚えていなかったんだけど、『八日目』『ミスター・ノーバディ』の人、と言われて「あぁ!」となる。 作品を量産するタイプの監督ではないのでついつい忘れがちになりますが、この監督のセンス、好きだ!
 というわけで期待してハーバーランドへ。 ちなみにこっちはベルギー映画です。

  神様メールP.jpg うれしい未来、受信中!

 ベルギーのブリュッセルにて、とある高層マンションの最上階にある一家が暮らしている。 実はその一家の父は神で、鍵をかけた自分の部屋でコンピューターを使って全人類の運命を管理していた。 気まぐれで奇跡を起こし、退屈すれば災害や大きな事故を起こし、人間が右往左往するのを見て楽しんでいる。 長男はとっくの昔に家出している(そしてもう生きてはいない)が、10歳の妹エア(ピリ・グロワーヌ)を見守り、相談相手になってくれてはいるのだが、もはや父親に対するエアの怒りは爆発寸前。 父の目を盗んで部屋に忍び込み、パソコンから人類の携帯電話に余命を知らせるメールを一斉発信後、パソコンを使用不可能にして下界(人間界)へ家出、6人の使徒を探すことに。 事態を知った父である神は怒り狂うが、パソコンが使えないと実は何もできない。 娘を追いかけて彼もまた下界に降りることに・・・という話。

  神様メール4.jpg 家長の横暴に母である女神は抵抗できず、無口に。 それもまたエアには耐えられず。
 いやー、一神教をここまで茶化すとは、実に爽快。
 とはいえ、一神教だけでなく宗教全体を決してバカにしているわけではない(と言っておかないと最近は怖いからな・・・)。 あくまでギャグですよ、ギャグ。
 様々な比喩にとんだ映像や展開、過去の映画を思い起こさせるディテールも含めて、「そんなに真面目に受け取っちゃダメだよ〜。 でも言いたい事はわかるよね」という監督のお茶目なウインクが見えるよう。
 次々にエアが出会うことになる使途たちが抱える苦悩を、素直に「知らなかったわ」と受け止める彼女がすごくかわいい!、んだけど、「違う世界にいました」という証明のようでそれもまた切なくて。 結局、神の側の視点と人間側の視点は同じ高さになることはない。

  神様メール3.jpg でも使徒たちは、エアを特別な存在とわかっていながら慕いつつ心配。 やっぱり見た目が子供だから?
 6人の使徒たちのそれぞれの物語も面白いので、オムニバス的に駆け足になってしまうのがちょっと残念なんだけど、配分としてはそれくらいがちょうどいいのかもしれないなぁ。 個人的には<新・新約聖書>の綴り手、ヴィクトールの存在がすごくよかった(彼はホームレスで携帯を持っていないので、自分の余命については知らされていないという特別感も相まって)。
 そして、実は世界は女性が管理したほうがずっとよくなるのではないか、を示唆したラストの痛快なこと!

  神様メール1.jpg それがエアのこの笑顔に集約される。 そういえばそれまでは無表情に近かったなぁ。
 自分の寿命を知らされる、というショッキングな出来事がきっかけなのに、意外にそのポイントはそんなに重要じゃないというか、普段通りに生きることにする人が多くて、それ以外の人たちはネタ扱い、というあたり、ちょっと日本人にも通じるものがあるような(まだ自分の寿命の日が来てないから、とあえて無謀なことにチャレンジするやつもいそう。 でも日本ならすごくネットでたたかれて炎上しそう)。
 そんな感じでとてもファンタジーなのですが、自分の身の回りのことと比較できるというか、思いをはせることができるという点で<ブリュッセル限定>の物語でありながら結構普遍的だったり(まぁ、イスラム原理主義的地域などでは難しいかな)。
 やっぱりこの監督、好きだなぁ!、と思い知る。 ちゃんと名前、覚えよう。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする