2016年06月13日

ハロルドが笑う その日まで/HER ER HAROLD

 暑いです、あたしにはもう夏です。
 こういうときには北欧の冬の風景を観て、涼まなければ。 というわけでノルウェー映画。
 『ホルテンさんのはじめての冒険』のイメージで、「ほのぼのしてそうだけど結構シビア、ユーモアはどこかゆるめで、結論ははっきり出さない傾向にある」という印象のあるノルウェー映画ですが、さてこれはいかに。

  ハロルドが笑うその日までP.jpg すべてを失っても、人生はそっと寄り添ってくれる――。

 誇りを持って品質にこだわった家具を黙々とつくり続けてきた職人のハロルド(ビョルン・スンクヴィスト)は、あるニュータウンすべての公共施設に自分の商品が採用されて、それ以来その町で自分の店を構え続けてきた。 が、時は流れ、不況の波はノルウェー全体にも、この小さな町にも及ぶようになる。 高品質の家具を修理しながら長く使うという習慣は薄れ出し、ついにハロルドの店の真向かいに北欧最大級のIKEAができたことで、商売は行き詰まり、店をたたまざるを得なくなる。 ショックで妻が倒れ、何もかも失ってしまったハロルドはその怒りをIKEA創業者カンプラード(ビヨーン・グラナート)へ向ける。 カンプラードを誘拐を画策するハロルドと偶然接点を持った少女エバ(ファンニ・ケッテル)もその計画に加わると言い出し・・・という話。

  ハロルドが笑うその日まで3.jpg ハロルドの職人としての気質が、よくも悪くも彼の生き方を決めている。
 怒り・復讐・誘拐といった単語は出てくるものの、ハロルドの行動は行き当たりばったり。 計画性があるわけでもなければそもそも着地点も見えていない。 そのへんがほんとは<犯罪>なのだけれどそういう重さを感じさせないというか、のんきなコントのような展開になっている(だからご都合主義的展開もナンセンスさもあっさり受け入れられるというか)。 落語的、とでも言えばいいのか(だから予告ナレーションが談春さんだったのだろうか)。
 どこかのんきで、間延びしつつもせつなくて、でもやっぱりちょっとおかしい。 本人はいたって真面目だからこそのおかしさ、というのもあるかな。

  ハロルドが笑うその日まで1.jpg 雪や空気の感じから、マイナス10℃前後の気温であろうと思えるのに、氷が割れた池に落ちてもあんまり切羽詰まった感じがしないところに北欧の人たちのすごさを感じさせる。 あたしがいちばん感銘を受けたのはそこだな!
 そもそも、IKEA創業者のカンプラード氏は実在の人物で、ご存命(実際はもっとご高齢のようですが)。 「こんな映画なんですが、お名前使わせてもらっていいですかね?」的な申し出にOKを出しちゃうんだから、太っ腹というか、豪快というか、世間の目を気にするレベルにいないというか・・・。

  ハロルドが笑うその日まで2.jpg 劇中では頑固でイヤミな偏屈ジジイ(でも人を喰ったところもあり)として描かれていますが・・・彼は彼なりの人生哲学が。
 いい家具は一生ものだけど、家具をファストファッションとしてとらえてもいいじゃないか。 2年ごとに違う家具に代えるもよし、IKEA商品の安っぽさに耐えかねて次は上質家具を目指すのもよし、消費者に選択の余地を与えたというのが彼のプライド。 自分の仕事に誇りを持つ、という意味では実はわかりあえる二人だという皮肉。
 ただ、<勝ち組・負け組>という枠組みで見てしまうとどうしようもないんだけど、そこへ至る過程や心情、そもそも自分自身が納得できる生き方だったのかなど、人生すべてを見直す話になっております。
 人生はまだ続く、だから結論は出ないし出さない。
 あぁ、やっぱりノルウェー映画ってこんな感じなのかなぁ。 でもエンドロールの音楽にはハッピー感があったので、それはそれでよし、と思うことにする。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする