日本映画興行成績等で東宝一人勝ちの状況が長く続く中、個人的には東映には是非がんばってほしいと思って応援しています(松竹も応援してますが、結構がんばりが形になってきている感じがするので)。 なにしろ子供の頃は『東映まんがまつり』を欠かさず観に行ってました世代ですよ。 でもなんとなく、東映ってマイナーなイメージがあるのよねぇ(だからつい応援したくなってしまうのかもしれない)。
勿論東映側にも自覚も危機感もあると思うので、ドル箱としての『相棒』を失いつつある状況で、『探偵はBARにいる』のようにシリーズ化できる作品をつくりたい、という熱意は感じる。 だから比較的破綻の少ないウェルメイドな作品が書ける脚本家として古沢良太を担ぎ出し、これを企画したのでしょう。
とはいえ、あたしの動機は普通に野村萬斎さんが好き、ということだったのですが。
その探偵は自らの“手”で謎を解く。
ピアノ教師(木村文乃)が行方不明になる事件が発生。 教え子である高校生(杉咲花)は「先生はコンクール前に突然にいなくなるような人じゃない!」と、その先生がファンだったというお笑いコンビ<マイティーズ>に先生を探してほしいと依頼する。 実はマイティーズのウリは、片方の仙石和彦(野村萬斎)が残留思念を読み取ることができるというもので、その能力をいかしてネタをつくっていたのだ。
だが仙石はそのおかげでいやなもの・きたないもの・おそろしいものを沢山見てしまい、本番中に逃走、マイティーズは解散した。 元相方のマイティ丸山(宮迫博之)は今でもピン芸人としてやってはいるものの、空気が読めず泣かず飛ばず。 「お礼はお支払いします!」という高校生の言葉につられて、ほとんど他人と接触しないようにひっそりと暮らしている仙石のもとを訪ねた丸山は、約10年ぶりに再会をしたのだが・・・という話。
オープニングから、大変残念な仕上がり。 『怪奇大作戦』的な雰囲気を醸し出そうとしたのかもしれませんが、ミステリ好きにはそれがもうレッドヘリング(とも言えないレベルだけど)であることがわかってしまいます・・・。 ミステリーなのに、ミステリーとして成立しない演出。 がっかりです(そして結果は予想通りだったので更にがっかり感倍増)。
おかげで<感動の真実>とやらにもまったく感動できない有様。 仙石が火災で燃え残った倉庫で手をかざし、モノが見えてくる特殊効果のシーンは「おおっ!」と言わせるものがあるだけに、金子修介監督はやはり特撮方面に強く、ミステリーには向いていないのではないか・・・という疑惑がよぎります(なんで引き受けたんだろう&なんで依頼したんだろう)。
動機や背景にいかに悲しい要因があっても、謎が解ける瞬間というのは大なり小なり爽快感を伴うもの。 なのにそれがまったくないのは・・・海外のミステリー映画がいかにレベルが高いか、ということを図らずも証明してしまいましたね。
サイコメトリーという能力自体、物語に取り上げられるのは特に新しいわけじゃないし、やっぱりウリは野村萬斎しかないではないか、的な(なんで引き受けたんだろう)。
だったらもっと仙石のキャラを掘り下げてほしかった。 あ、もしかしてそれは、続編を見越しての出し惜しみか?! でもヒットしなきゃ、面白くなきゃ続編はつくれないんだぞ!
関係者のみなさんには、野村萬斎をいかしきれなかったことを含めて、是非反省していただきたい。 これだから、「テレビのスペシャルでいいじゃん」と言われてしまうんだ!
・・・『星籠の海』もすごく不安だ。