2016年06月06日

アイアムアヒーロー/I AM A HERO

 世界各地で行われているファンタスティック映画祭はSF・ファンタジー・ホラーといったジャンルの映画の祭典なので、個人的には大好きだけど基本的には“B級映画の集い”。 勿論、その中にも傑作はあるので(特にあたしは『ヒドゥン』など大好きです)、この映画の<三大ファンタスティック映画祭制覇>はめでたいとは思うものの、手放しでよろこべないなにかを感じるのは何故なのだろうか。 自分でも意味がわからないので、確認のために観に行くことにした。
 原作は未読(というか、電子書籍で期間限定無料の1巻をダウンロードしたのだが、最初数ページで一回挫折。 次に臨んだときには期間が終了していて読めなかった。 やはり初めて読む作家って、難しい)。
 とりあえず大泉さんが出てるよ!、ということぐらいしか前知識なし(でも宣伝でいっぱいネタバレしてくれているので、ほんと余計なことしてくれた・・・)。

  アイアムアヒーローP.jpg ようこそ。絶叫のゾキュンパニックへ。

 なるほど、R15+は伊達じゃないな!、というくらいグロさ爆発である。
 日本がこつこつと世界に広めてきたJホラー様式を真っ向からぶっ壊すその姿勢をよしとするか、「あー、完全に向こうのホラーテイストに乗っかっちゃったなぁ」と感じるかどうかで評価が分かれそう。 とはいえパニックものでもあるので、Jホラー様式だけでは成立しない部分はある。
 主人公・鈴木英雄(大泉洋)はずっと前にマンガ雑誌の新人賞を獲ったことがあるものの、今は泣かず飛ばず、売れっ子マンガ家(マキタスポーツ)のアシスタントをして糊口をしのぐ日々。 長い付き合いで同棲中の彼女(片瀬那奈)にもすっかり愛想を尽かされ気味で、「今度こそ!」と気合を入れた原稿も編集者に突っ返される。 どん底の気持ちで仕事場に向かえば、なにやらそこここで異変が起こっていて・・・という話。
 キャスティングもB級路線の豪華さで(英雄と同期だけど現在は売れっ子マンガ家になっている人物として片桐仁が登場したときにはそれだけで笑える。 チーフアシスタント役の塚地武雅さんも絶妙)、いいですねぇ。 それにしても大泉さんが大泉さんたる所以はやはりあのくるくる髪なんだな、と改めて実感。 ショートカットに帽子、脱いでもぺたん髪のストレートでは(でもだんだん時間の経過とともに毛先がくるくるしてくる感じが話とは全然関係ないんだけど面白かった)、大泉さんぽくない、全然。

  アイアムアヒーロー1.jpg だから“大泉洋”ではなく、“鈴木英雄”として存在していたような気がする。

 監督がインタビューで「異質なものに出くわしたときの大泉さんの表情が素晴らしくて、彼に主役をオファーした」みたいなことを言っていたような気がするんだけど、実際は鈴木英雄がかぶっているヒステリックグラマーの帽子のほうが目立っちゃってて、せっかくの表情を隠しがちになっていたような・・・なんかもったいない。
 多分一般社会がある程度崩壊したのであろう予測の元、辿り着いた富士山麓にあるアウトレットモールが出現してから、あたしの違和感は頂点に達する。 確かに見た目は三井系のアウトレットモールそっくりなのだが・・・看板が、ヘン。 ローマ字・アルファベットもヘンだし、<駐車場入口>といった日本語の看板もなんかヘン。
 フォント? バランス? 色?
 どこがどう違うとははっきり言えないのだが・・・「なんか日本じゃない!」とは断言できる感じで、なんかちょっと冷めてしまった・・・低予算であっても、荒唐無稽の話であればあるほど、ディテールには手を抜かないでほしいのですが(外国の人から見たらまったく気にならないんだろうけれど、日本に住むものとしてはとても気になるのです)。 チラシの裏を見たら廃墟になっている韓国のアウトレットモールで撮影したそうで・・・そういうの日本で作って持って行けなかったのか?! それとも現地で作ってお金を落とすことも契約に含まれていたのか? ・・・まぁ、違和感の正体はわかりました。

  アイアムアヒーロー3.jpg 逃げる途中で一緒になった女子高生ヒロミ(有村架純)とともに富士山に向かうのは、標高が高い場所のほうが安全らしいというネットの伝言板で情報を得たから。 それが正しいかどうかはわからないけど。

 そしてそのアウトレットモールで展開される“社会”は、あたかもロスジェネ世代のある人が出した論文『希望は、戦争』にとてもよく似ていて(というかまさにその通りで)、別の意味で絶望的になる。 所詮、日本人もその程度か、という。
 現実と思わせておきながら実は英雄の妄想、というシーンがちょっと多すぎて、だんだん「あ、ここも妄想シーンだろうな」とわかってしまうのがつらいところだが、いろいろ無理のある設定も最後まで引っ張るのはひとえに大泉さんの力!
 是非また主演男優賞にノミネートされてもらいたい。

  アイアムアヒーロー4.jpg 本来爽快感をもたらすこのシーンも、あまりに繰り返されると観ている方も疲れる。 勿論、鈴木英雄さんの疲労のほうが半端ないわけですが。

 モールを舞台にしたところは(原作通りなのかもしれないが)ロメロ御大へのオマージュでしょうし、過去の名作ホラーの一場面を彷彿とさせるシーンもガンガン散りばめられているのはホラー好きとしてはニヤリなんですが、それがパロディの域を出ていないのも事実。 ラスボスはあいつだろうな・・・と予測通りなのもちょっと物足りない。 結局、「まぁ、日本映画としては」という但し書きつきの「がんばったね」という評価になってしまうんだよな・・・これで「世界で評価された・日本映画のレベルを超えた」というのはちょっと違うんじゃないかな、と思う。
 あぁ、(これも予想通りだが)なんかすっきり!
 原作上のテーマは不明だが、「ヒーローとは自分からそう名乗るものじゃない、他の人から言われてこそ意味がある」というタイトル自体が逆説である、とはっきりわかるエンディングはすっきりしてていいと思うのだが、根本的な解決にはまったくなっていないんだよね・・・でもそれこそが、「先のわからない人生を生きること」なのかもしれない。
 続編、あるのかな・・・でもここで終わっておいた方がいい気がする。 絶対する。

ラベル:映画館 日本映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする