2016年05月25日

最高の花婿/QU'EST-CE QU'ON A FAIT AU BON DIEU?

 原題は“QU'EST-CE QU'ON A FAIT AU BON DIEU?”であります。 「神よ、何故こんな目に?」って感じかな?
 重たい映画が続いたので軽いコメディを、という気分で。 しかし相手はフランス映画、一筋縄ではいきそうにない(むしろいってほしくない)。 現実にテロも起こっている移民社会をいかに笑い飛ばすのか、それに興味があって(動機は全然軽くないではないか、と今気づいた)。

  最高の花婿P.jpg “違い”を楽しめば、人生はおいしくなる。

 フランスの郊外・ロワール地方に暮らすヴェルヌイユ夫妻(クリスチャン・クラヴィエ&シャンタル・ロビー)には自慢の美しい娘が4人いて、代々カトリックの一族故町の教会で伝統的な結婚式を挙げることが夢であった。 しかし最初に長女が選んだ結婚相手はアラブ人、一年後の二女の結婚相手はユダヤ人、そのまた一年後の三女の結婚相手は中国人。
 「普通にフランス人でカトリックの相手と結婚してほしい!」という夫妻の希望は末娘に託される。 しかし彼女が結婚相手として連れてきたのは、カトリック教徒ではあるがコートジボワール出身の青年だった・・・という話。

  最高の花婿4.jpg 姉の結婚式ではこんな表情でした。
 夫妻にとっての幸せは、4人の娘がそれぞれに幸せな結婚をして幸せな生涯を送ること(そしてあわよくばかわいい孫たちにちょくちょく会わせてもらいたい)、という慎ましいようでいて現在のフランスの状況を考えたら(映画上の設定は2013年)、意外に図々しい願いかも。 しかも、「普通にフランス人の婿がほしい!」というのも、その言葉の使い方によっては人種差別と取られかねない危険な(!)願望。
 それだけフランスにおいて<移民>とはセンシティブな話題であることがわかるのだが、それをテーマにコメディ映画を作ろうというのだから、それだけ身近な問題でもあるのだろう。
 <移民>という状態がどういうものかの定義がよくわかっていないのだが、たとえルーツがどこであろうとも現在はみな<フランス人>ではないのか?、というのが疑問(国籍のことで言えば)。 単なる国際結婚とは意味合いが違う気がする・・・(はっきりそのへんの区別はされていないが、全員フランス語で喋るし、三女の夫は国籍的には中国系フランス人であるみたいなニュアンスが感じられた)。

  最高の花婿2.jpg 先に結婚した三人の夫たち。
    アラブ系はイスラム教徒なので、ユダヤ系の義弟とちょっとしたことですぐに言い争い→特に殴り合いになる。 間を取り持つ中国系は「いつも笑ってごまかしやがって、本心を見せろ!」ととばっちりを喰らう。 中国人ってはっきりモノを言う印象があるんですけど・・・東アジア系は世界から見たらひっくるめてそういうイメージで見られているの?

 とはいえやはりルーツは誇りでもあるので、譲れないところはそれぞれあれど、夫たちはそれぞれの妻のために義父母に気に入られようと努力している様子は微笑ましく、それがときに上滑りして失敗するというのも「男は3人以上いるとぐだぐだになる」というある種の法則が万国共通だと思えて面白い。
 ただ、おかあさんの娘たちへの(精神的)依存ぶりが大変痛々しく、前半はかなりしんどい(それはあたしが<娘>という立場であるせいかもしれない)。 「そんなこと、勝手に期待されてもね・・・」という気持ちになって、つらいのです。

  最高の花婿3.jpg そんな情緒不安定な母親のために、娘たちとその夫&婚約者は総出でなんとかしようとする。 実は家族礼賛映画でもあったりするのだ!
 でも立ち直ったら回復が早いのも女性の特徴でもあるので、後半はおかあさんの明るさに救われる部分はあるのだが。 夫妻のそもそもの気持ちだって差別意識からくるものというよりは慣れないモノへの不安 ― 家族として同じ時間を過ごす際に様々な宗教儀式から食事のルールまでどこからどこまで違うのかよくわからず、とにかく相手を不快にさせないように気遣わなければ、という疲れから来てしまったもの。 異文化へおののくばかりではなく歩み寄り、出来る範囲で受け入れる。 それが相手に伝われば十分なのでは。
 結局のところ、お互いがお互いを同等と認め合う間柄だからこそ出身国や文化の違いをジョークで笑い飛ばせるのでは(なんだかんだいって三人の夫たちは共同で事業を始めようという話になっているし、コートジボワールの彼も協力しそう)。 「差別だ」とみなされてしまうのは、その間に信頼関係がないから。 ある意味、一部のセクハラ問題に似ているな・・・(同じ事を言っても許される人と許されない人がいる、みたいな)。
 すべての異文化交流が、こんなふうに進めばいいのに。
 しかしこれがコメディというよりも一種のファンタジーと映ってしまうことが、世界にはびこる異文化不寛容の根深さを物語るような気がする。 だからこそ制作陣は性善説ど真ん中ストレートのこの映画をつくったのかも。 問題をリアルに深刻に描いても変わらないなら、いっそのことノー天気に行こう!、みたいな。
 実際、フランスでは国内映画興行収入歴代第6位の記録的大ヒットだったそうで、なんだかんだ言いながら<真の寛容とは>というメッセージが伝わっていたらいいなぁ、と思う。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする