2016年05月18日

スポットライト 世紀のスクープ/SPOTLIGHT

 これは題材が題材だけに、よろこび勇んで「観たい!」と大声では叫べないんだけど、ほんとにキャスティングがあたしのツボばかりなので、すごく観たかったのです。 トム・マッカーシー監督も『扉をたたく人』、すごくよかったし。 たとえ今年のアカデミー賞作品賞じゃなくっても、観逃してはいけない映画!
 そんなわけで結構前に観たのですが、まとめるのが遅くなってしまいました。

  スポットライトP2.jpg 暗闇にひときわ輝く、希望の光――

 ボストンの地方紙<The Boston Globe>にはひとつのテーマを追いかけて連載するコラム“スポットライト”というコーナーがあり、2001年当時、そのチームには4人の記者、チームリーダーのウォルター(マイケル・キートン)、マイク(マーク・ラファロ)、サーシャ(レイチェル・マクアダムス)、マット(ブライアン・ダーシー・ジェームズ)が専属で在籍していた。 新聞社には新たな編集局長マーティ・バロン(リーヴ・シュレイバー)がやってきて、「このままでは新聞は今にもインターネットにやられてしまう。 もっと新聞ならではの読みごたえのある記事を載せなければ」と、“スポットライト”コーナー強化の指示が。 たとえば『ゲーガン事件』を掘り下げろ、と。 ゲーガン事件とは地元ボストンのカトリック教会のゲーガン神父が児童らに性的虐待をした罪で逮捕されたが、起訴されていない件。 その背景には何があるのかを明らかにすることがチームに課されたテーマだった。
 だがボストン市民の多くはカトリック、ボストングローブ紙の読者の53%もまたカトリックの信者である以上リスクの高い取材であり、事件のもみ消しにかかわった人物たちは地域の重要人物たちと推測される。 だが被害者の声を聞き、記者魂に火がついたマイクらはタブーに果敢に挑んでいく・・・という話。

  スポットライト4.jpg 「あのとき、ぼくは11歳」 元少年の被害者の訴えが痛い。
 <事実をもとにした映画>なので結果はわかっているし、むしろその後の反響の大きさから事実を知った身としては(前ローマ教皇が生前退位したのはその責任をとったためだったとか)、「あー、これがそのきっかけか」という後追い感でいっぱいですが、映画はスキャンダリズムに走らず、被害者側の痛みを描きつつ感情に流されすぎず、加害者側も描くけど掘り下げすぎず、あくまでスクープを追いかける新聞記者の人間性を中心に、社会派だけど人間ドラマにしてくれてました。 だから大変地味な映画ではございますが、うまい役者が揃っているのであたしは地味さを感じません。 というか、むしろ彼らの姿をじっくり見られてうっとり♪、みたいな。
 特にマイク役のマーク・ラファロのかっこよさときたら!

   スポットライト1.jpg 『はじまりのうた』のときとまた全然違うし。
 仕事に向かって猪突猛進、被害者の弁護を担当しているというガラベディアン(スタンリー・トゥッチ)が相当な変わり者だと聞かされても「話を聞いてきます」と先入観なく飛び込むし、被害者の痛みを知ってからはどんどんのめり込み「いつ記事を出すのか!」とチーフと大喧嘩もするし、必要な書類を申請するために時間がないとわかるととにかく走る!
 使命感とかを自覚していないけど持っている、そんな感じがすごくかっこよくて、その姿に惚れちゃいました・・・(しかしそんな仕事命の彼は奥さんと別居中であり、「ええっ!、こんなかっこいいダンナを何故捨てる!」と個人的に驚愕。 まぁ、仕事をしている姿を奥さんは見ていないのかもしれないけれど、そういう仕事をしていることはわかっているはずで・・・アメリカと日本の文化の違いですかねぇ)。

  スポットライト5.jpg リーヴ・シュレイバー、いろいろ葛藤はあれど表面には決して出さないバロンの姿は、『完全なるチェックメイト』での役柄にも通じるけど、またちょっと違うんだよなぁ。

 編集局長バロンの「『ゲーガン事件』だけで終わったらダメだ。 問題は数多くいる加害者の神父たちを転属させ、ことをうやむやにするカトリック教会側の責任を追及するまでいかないと」という方針により取材は一年以上の長きに渡るが、逆に権力者側から「バロンはユダヤ人だから(カトリックの我々とは違う)」とあてこすられたウォルターのとった態度は一時的にせよ痛快だし、それだけ題材に集中して取り組める環境を与えられるというのは、新聞記者冥利に尽きるのではないか。

   スポットライト2.jpg サーシャは敬虔なカトリックである祖母とともに教会に行くのが習慣だったが、調査が進むにつれそれが苦痛に・・・被害者に寄り添い、証言を引き出していく穏やかさと何を聞いても動じない強さが信頼を勝ち得ていく彼女の武器だが、祖母に事実を話すことにはためらいが。 そんなレイチェル・マクアダムス素敵!

 とはいえ、ボストングローブは所詮地方紙。 大手新聞やテレビの三大ネットワークほどの影響力はないし、しかし関係者は身近な人だったりする分、記者たち自身に負担や影響が・・・、真実に斬り込んだ分、自分たちも結果的に傷を負う、というあたりが見どころのような気がします。 ジャーナリストといっても人間、すべての記者が正義漢じゃないし、日々の雑事にまぎれて重大な告発を見逃してしまうこともある。 けれど気づいた以上はあきらめることなく最後まで追いかけて、背後に隠れた真実を明らかにして読者に、社会に届ける。
 自分たちの独断や偏見を交えず、ただ詳細な事実だけを。

   スポットライト7.jpg それをより体現するのがマイケル・キートン。
    記者として生きてきた自分の人生そのものも賭けるぐらいの覚悟が渋い。
 「ペンは剣よりも強し」だけれど、強すぎてマスメディア自体が巨大な権力になってしまっている現在において、“スポットライト”チームとそれを補佐した編集局長とブラッドリー部長(ジョン・スラッテリー)の存在はまさにジャーナリズムの原点そのもの。 ジャーナリズムに身を置いている人たちは、これを観て襟を正してほしい、と切に思ってしまう内容です(特に日本のジャーナリズムのダメさ加減を見るにつけて、ね)。
 もう一回観たいぐらいだけど、結構細かいところまで記憶に入ってしまったので(最近のあたしにしては珍しい)。 だから何年か経ってから、ぜひまた観たい。 なのでWOWOW待ちということで。 そのときにはこの実力派俳優陣たちを誰が日本語に吹き替えるのか、吹替版の出来も期待したい。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする