2016年05月13日

ルーム/ROOM

 先に原作を読んじゃったのはよかったのか悪かったのか。
 「あ、あの場面カットされてる!」・「いいと思ったあのセリフがない!」など、そっち方面にハラハラしてしまった部分もあったから。 しかも脚本を担当しているのは原作者のエマ・ドナヒューなのである。 相変わらず、向こうの小説家の思い切りのよさというか、「小説と映画は別物」という割り切り感はすごい。 より説明を省き、映画は5歳のジャック目線ですべて進んでいく。 ブリー・ラーソンさんすごいけど、立場的には助演では?、と思えてしまうほど、完全に主役はジャックなのです。

  ルームP.jpg はじめまして、【世界】。

 5歳の誕生日を迎えたジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)にとって、<へや>が世界のすべて。 ママ(ブリー・ラーソン)といつも一緒で、いろんなお話をしたり運動したり料理をしたり。 でもTVばっかり見てたら頭がおかしくなっちゃうからと一日に見る時間は決められている。 TVに映っているのは存在しない“うそっこ”の世界。 天窓から入ってくる光で、昼か夜かを区別する。 オールド・ニック(ショーン・ブリジャース)が持ってくる<にちようびのさしいれ>で、ジャックとママの暮らしはなんとか成り立っている。
 ある日、ママはジャックに衝撃の告白をして、この部屋を脱出する計画を立てるけど、ジャックは怖くてたまらない。 でもそうしないとママがダメだというから、ジャックは決死の覚悟で勇気を振り絞る・・・そんな話。
 説明が少ないので、ドキュメンタリーか再現フィルムのように思える部分も。 だから役者陣の演技がとても自然に見えるのでしょう。
 なにより驚きは、オールド・ニックが体格的にはフツーの男性でしかない、というところ。 ジャックからしたら「初めて見る・そして唯一の大人の男」だから巨大に感じるのは当然なのだが・・・拍子抜けするぐらい腕っぷしも強くなさそうで、それでも若い女性ではどうあがいても勝てないのだ、という根本的な差(それは大人と子供もそうだけど)。 これがある限り、世界から暴力犯罪はなくならないんだろう、と思うと悲しくなる。

  ルーム1.jpg けれどママはジャックを暴力や危険なものにさらさないため、身体を張って守り続ける。 その強さ! でも、それもジャックという<守るべき存在>がいたからこそ。

 けれどどうにかこうにか外に出て万歳!、で終わらないのがこの映画(というかむしろ後半のほうが本題と言うべきか)。 ある種の密室で、濃密な二人の時間を過ごしていただけに、ジャックにとって世界は広すぎて、他の人も多すぎて、現状を理解しきれない。 そんな時こそママに頼りたいのに、彼女は一気に娘の立場を取り戻し、被害者であることも追認させられ手いっぱい(“ママ”が名前じゃなくて呼び名で、ママにはジョイという本当の名前があるんだと聞かされたときのジャックの驚きようと認めたくなさは素晴らしかった。 自分の親にも子供時代があった!、と知らされた時の誰しもの反応と同じはずなのに、このような状況下では・・・痛々しくて)。 ジョイの母・ナンシー(ジョーン・アレン)は娘の苦悩を受け止め、同じ強さでジャックを守る。 ああ、母は強し、である。 それに比べてジョイの父(ウィリアム・H・メイシー)の情けなさや腹立たしさときたら・・・そりゃ、離婚されますよ、と納得の逆好演。 いろんな方向でダメな人ができるんだなぁ、さすがです。

  ルーム3.jpg そのかわり、ナンシーと再婚したレオ(トム・マッカムス)がいい距離感でジャックを導いていくさりげない描写がとてもいい。 血の繋がりよりも思いやり。 いや、場合によっては血の繋がりがあることが関係性を平和に保てないこともある、という例ですなぁ。

 そして恐るべきマスコミ。 世間の人が知りたがっているという“純粋な好奇心”を盾に、ジョイを気遣いながらもとんでもなく恐ろしいことを聞いてくる。 まさに二次被害。 結局、外に出たのにまた閉じこもるはめになるというとんでもない皮肉。 更に母と息子の心の絆にヒビを入れようとするのが<へや>の存在。 ジョイにとっては思い出したくもない、一刻も早く忘れたいものなのに、ジャックにとっては懐かしい、むしろ早く帰りたい場所。ジャックに他意はない故に、そのこともジョイを追い詰める原因になったのかな、と思うとそれも悲しすぎる。
 けれど、時間は流れる。 子供は目に見えて成長する。
 あぁ、子供は希望だってこういうことなんだ!
 ジャックが初めて見た、どこまでも広がる青い空のように。
 出番は少ないながら、賢くてキレのあるパーカー巡査(アマンダ・ブルジェル)の存在もよかったです。 ジャックが出会ったのが彼女でよかった。
 そして子役のジェイコブ・トレンブレイくん、かわいすぎる! 俳優を続けるならこのまま道を外さないでね、と祈らずにはいられない。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする