2016年05月07日

モヒカン故郷に帰る

 金曜日に観た映画がこちら。 神戸、上映最終日のため見逃したらアウトだったのです。
 沖田修一監督の新作、かつオリジナル脚本ということで・・・この人の普遍的なテーマを脱力系な笑いでくるむ手法がなんとなく好きなあたしとしては、やはり押さえておきたかったのです(沖田修一監督はシティボーイズがお好きだということもあり、笑いのツボがちょっと似てるのかも。 テキトーにやっているように見せながら実に考え抜かれているところもシティボーイズライヴを彷彿とさせます)。

 モヒカンP1.jpgモヒカンP2.jpg バカヤロー!、だけどありがとう。
  (メインキャラ分のチラシがあるのが面白かった)

 ヘヴィメタバンド“断末魔”のヴォーカルをしている田村永吉(松田龍平)はライヴハウスに来てくれる一部熱狂的なファンはいるものの、メジャーデビューには程遠い。 そんな状況にバンド内でも不協和音が。 そんな折、同棲している恋人の由佳(前田敦子)が妊娠したので結婚を報告するために永吉は7年ぐらいぶりに彼女を連れて帰省することに。
 広島県の瀬戸内海に浮かぶ小さな島が永吉の故郷であり実家だが、そこには矢沢永吉命の頑固オヤジ・治(柄本明)、広島カープ大好き母・春子(もたいまさこ)、家を出ているはずなのにちょくちょく帰ってきすぎな弟(千葉雄大)というあまりにも濃い家族が待っていた・・・という話。
 正直、主人公がモヒカンであることに特に意味はない、と思う(あえていうなら『カルメン故郷に帰る』に語呂が似てるから?)。 まぁバンドマンという<真っ当でない職業?>をわかりやすく記号化しただけというか。

  モヒカン4.jpg 故郷の島をめぐる海
 ゆったり流れる時間と風景、そこにせせこましく展開する人間たちの営み、という感じでは『キツツキと雨』に傾向が似ているかも(『横道世之介』は原作ありだったけど、明確に書き留めない時間の流れ、というのは共通しているかも)。
 由佳のおなかの大きくなり具合で時間の経過をアバウトに説明する感じが微笑ましくて。
 とはいえ『モヒカン故郷に帰る』が帰るだけでは序盤で話が終わってしまうので、「故郷で何が起きるか」が眼目なわけですが・・・「矢沢は広島県民の義務であります!」と公言するオヤジががん宣告、という展開に。
 でもここでお涙頂戴に絶対ならないのがこの監督のいいところ。 そんな話でもあえて泣かさず、むしろ笑わせる方向に行こうというのが大変あたしの好みです。

  モヒカン1.jpg それはこの家族の特徴でもあるけれど・・・実際ってそんなドラマチックにはいかないよね、という現実の肯定でもあるような。
 オヤジさんが指導している中学のブラスバンド部に矢沢の曲を弾かせているんだけど、あまりにスタンダードジャズ風編曲で最初、何の曲だかわからなかったです・・・(ブラスバンド部の人数少ない上にあまりうまくない、という設定も手伝って。 “I love you, OK?”でした)。 しかし筋金入りの矢沢永吉ファンで、ほぼ崇拝しているといっていいくらいなのに、自分の息子に同じ名前をつけるって感性がびっくりで。 そんな名前を背負わされる息子もしんどいじゃないか(そう思えばモヒカンは比較的まともに育ったと言えるのかな?)。
 「オレ、自分なりに考えてみたんだけど・・・」と言ってから続く言葉は、実はモヒカンくんが何も考えていないという証拠、というのがわかりやすくてとてもダメっぽくてよかったです。 だからそんな彼が、末期の近づく父のそばにいて、次第に“自分なりに考えて”いく様子が、よりよかったです。
 上映終了後にメイキング映像が流れましたが、撮影されていたシーンが本編と結構違っていたりしていたので、小道具や動き等を変えて何パターンも撮っていたのだな、というのがわかったし、そういう一見些細なところに監督がすごくこだわっているのと、それに乗っかって演じているからこそキャストのみなさんが「何度もミラクルが起きた」というような発言につながるんだろうな、と。
 なので観客としては様々に満載の小ネタを楽しめばよいわけで(弟くん、サケフレークの瓶から直箸?! てことは一人ひと瓶なのか?、とか)。

  モヒカン2.jpg 左利きの女たちと、

  モヒカン3.jpg 右利きの男たち。
 揃って食卓を囲めば、まるで鏡に映っているようでもあり、それが<家族>ってことでもあるような。
 母親にもたいさんを持ってくるのはずるいよな・・・としみじみ(しかも要所でモヒカンに投げる言葉は「働け!」)。 なんてわかっているお母さんなんだろう!
 クライマックスはほぼコントの様相を呈していましたが、病院の手術台のライトをそんなふうに使うか?!、と、あたしはちょっと感動しました。
 ダラダラ長いとか、無駄なシーンが多い、と感じる人もいるかもしれないですが、ダラダラ長いのがこの監督の特徴なので。 そして観終わると、その長さが必要のものだったのだと思えるから不思議なもので。 月曜日に「はぁ、今週も長いなぁ」と思っていたのに、金曜には「はっ、もう今週終わり?!、早かったなぁ」って感じるのと少し似ているかも。
 多分、人生というか、リアルな生活の空気が、そこに息づいているからですかね。

ラベル:日本映画 映画館
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする