2016年04月26日

マジカルガール/MAGICAL GIRL

 最初のアニメ風ポスターを見たときは、「これはキワモノか傑作かどっちかだな!」という印象を持ち、その後、写真ポスターを見て「うわっ、結構本気!」と感じた。
 だってスペイン映画なのに日本のサブカルチャーをふんだんに取り入れているらしい、ということだったからさ(どうも実際、カルロス・ベルムト監督はかなり日本のサブカル好きらしい)。

  マジカルガールP.jpg 魔法少女ユキコは悲劇のはじまり。

 12歳のアリシア(ルシア・ポリャン)とその友達の間では日本のアニメ『魔法少女ユキコ』が大人気。 ネットでチャットする際のハンドルネームも全員登場人物の名前にしているほど(勿論、アリシアはユキコ)。 それだけなら普通のことだが、問題はアリシアが白血病であること。 病状は深刻であると聞かされたらしき父ルイス(ルイス・ベルメホ)は、娘の願いをかなえてやろうと日記を盗み見る。 そこには『魔法少女ユキコ』のコスチュームを着て踊りたいと書かれていた。 が、そのコスチュームは限定品で、日本円にして90万円。 とても容易に手が出せる代物ではないが、それをなんとかどうにかしようとルイスが動き始めたことで、事態は他人をも巻き込み、予想もしない方向へ転がり始めていく・・・という話。

  マジカルガール2.jpg ほんとうなら、残された時間を一緒に過ごす方がよかったんだろうけど・・・。

 『魔法少女ユキコ』のオープニングテーマ曲として使われているのが80年代前半ぐらいの日本のポップミュージック。 確かにアニメの主題歌と言われれば納得のアレンジなのだが、多分そのようには使われていない、しかしあたしはなんだかこの歌知ってる!、と冒頭からなんだか盛り上がる(エンドロールでその歌が長山洋子の“春はSA-RA-SA-RA”であると知る。 わー、アイドル時代だ!)。
 おとーさんがコスチュームを調べようと立ち上げる検索エンジンは<Rampo>だし(nじゃなくてmを使うところにも本気度が!)、いざ、という扉には黒蜥蜴が描かれていたり、そしてエンディング曲は美輪明宏のカヴァー!、などなど、ひとつひとつをあげていってもきりがない日本ネタですが、それを並べただけの話ではなく、それはほんとに単なるネタ(知らない人が気づかなくても物語の本質はまったく揺るがない)。
 これぞスペイン映画!、という後味の悪さをお約束します。

  マジカルガール5.jpg そうして出会うファム・ファタル。

 たとえ限定版コスチュームが高価であろうとも、別素材のもっと安いやつ絶対どっかで売ってるって!、とおとーさんに言いたくて仕方がなかったですが、思いつめてしまっている彼はふとしたことから知ったバルバラ(バルバラ・レニー)という女性の秘密をネタに恐喝を始める。 そもそもバルバラがそんな秘密を抱えてしまったのは精神的にあやういところにいるからで、彼女を守ろうとする元教師のダミアン(ホセ・サクリスタン)が陰にいる。
 この4人の関係がまた同じようでいて正反対(そして群像劇というわけでもなく、主役がアリシア → ルイス → バルバラ → ダミアンと交代制なのもこの映画の特徴です)。 ユキコのように正義の魔法を操りたいのがアリシアなら、バルバラは魔法の暗黒面を体現しているかのよう。 父と娘が<健全な関係>と周囲にも受け入れられやすいものならば、バルバラとダミアンの関係はちょっと人に説明しづらい(しかしふたりをつないでいるのは“魔”であるといえるのだが)。 かといってアリシアが純粋無垢な少女です、と言いきれないところに彼女の目指した純粋な魔法があっさり闇に落ちるきっかけになったりするのですが(バルバラの持つ“魔”の、その萌芽をアリシアもまた隠し持っているということで)。

  マジカルガール3.jpg それ故か、彼女の目ヂカラが半端じゃないです。

 落ちていたジグソーパズルのピースが、これはミステリでもありますよと伝えてくるんだけれど、純粋推理のミステリかといえばさにあらず、論理よりも情念が勝ってしまう、まさに後年の<通俗小説>と呼ばれる江戸川乱歩の世界に近いものが。 そこに映画『黒蜥蜴』の要素もまじっているような。
 そういう意味で大変ヘビーな映画ですが、きっと好きな人はとても好き。
 オープニングのマジック(それも<魔法>か)が、ラストシークエンスでまた繰り返されて円環が閉じられる構造は、それまでにどれだけひどい展開があったとしても(そう示唆されているだけで直接描写はないんですけどね)、「あぁ、なんか綺麗にまとまった・・・ような」とどん底に落とされた気分の観客(それはあたし)を救ってくれる。
 それも、また魔法?

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする