2016年04月11日

幸せをつかむ歌/RICKI AND THE FLASH

 あたしはジョナサン・デミ監督が好きである。 映画は子供の頃から沢山観てきたが、それはストーリーを追うことだったり、いい役者さんを見たり見つけたりすることでしかなかった。 『羊たちの沈黙』が、映画のすべてのカット・アングルには意味があり、ストーリー以外のテーマに関わることを時にははっきり、時にはひっそり潜ませているのだと教えてくれた。 残酷な場面にすら(いや、だからこそ、か?)、美しい意匠が施されているということを。
 それからあたしは少しずつではあるが<映画の観かた>というものを独力で学び、今の自分がある気がする。 ちなみに『羊たちの沈黙』を映画館で観たのは大学一年のとき(大学生協の書籍コーナーで割引券をもらい、「前売券を買うよりこっちの方が安くない?」と真剣に話し合った記憶が残っている。 そのとき一緒に観に行った友人とは、住んでいる場所は違うが今でも友人である)。
 そんなわけでジョナサン・デミに関する思い出話は尽きないが、今回久し振りの新作ということで、巷の話題は「メリル・ストリープ、実の娘と初の母娘共演!」なのでしょうがそんなことは関係なく、たとえ誰が主演であろうが気にせず観たことでしょう。

  幸せをつかむ歌P.jpg わたしを救ったのは、“大っ嫌いな母の歌声”でした。

 妻となり母となり、音楽は趣味の範囲でと自分の夢を抑え込もうとしたリッキー(メリル・ストリープ)だったが、ロックスターへの夢をあきらめきれず、家族を捨て、今は<リッキー&ザ・フラッシュ>という名前で小さなライブハウス専属のコピーバンドのリードヴォーカルとして57歳の今も(スーパーでレジのバイトもしながら)音楽活動を続けている。
 そんなある日、元夫(ケヴィン・クライン)からの電話で、娘のジュリー(メイミー・ガマー)が離婚した、しかも相手の突然の心変わりが原因でひどく落ち込んでいてどうしようもない、と聞かされる。 20年間振りに娘に会いに行くが、ジュリーはジュリーで結婚が破綻したことで深く傷ついているうえ、自分は母親に捨てられたと思って育ってきているので、この再会はすんなりうまくいくはずがなく・・・という話。
 正直なところ、「え、ロックスター目指してるのにコピーバンド?」と思ったが・・・ある意味カラオケと一緒で、観客がよく知っている歌だからこそ容易く盛り上がる・そういうのはほぼ名曲なわけだから歌っていて気持ちがいい、などステージに上がる快感を覚えたらこりゃ中毒になりますな、というのはよくわかる、ものすごい高揚感。 そこはカバー文化が確立されている欧米ならでは、という感じもするが(日本でもカバーは当たり前になってはきたけれど、自分のオリジナルを出してある程度評価されてからでないと、という前提がある感じなのでカバー文化は向こうほどではない)。

  幸せをつかむ歌2.jpg ちなみにギターでリッキーのメインサポートをしているのはリック・スプリングフィールド・・・『ジェシーズ・ガール』の人ですか?! 実はバンド仲間を演じているのは一流ミュージシャンの方々である。

 ポスターは<母と娘の物語>を謳ってはいるけれど、原題がそもそも“RICKI AND THE FLASH”なのだから、バンドの物語でもある。 だから前者を期待するとわりと肩すかしにあうというか、「音楽とバンドの話、多すぎない?」と感じてしまうかもしれない。 でもその比率が、リッキーの願う人生そのものなのだ。 家族も音楽も、ほんとは両方を手に入れたい!、という。
 脚本が『JUNO/ジュノ』などのディアブロ・コディということで、負け犬人生の痛々しい台詞が痛々しくなく、下品なジョークもほどよく盛り込み、20年振りの母娘の再会を皮肉な台詞の応酬でニヤリとさせてくれるのですが、なんというか、メリル・ストリープに「下品」や「負け犬」といった言葉がなんか似合わないわけで、そこはもう長いキャリアの中で出来上がってしまっているイメージなので演技力の問題ではどうにもならないというか・・・「この人、教養ないキャラだけど教養ない人の振りをしているだけでは?」という目でこっちが見てしまう(それはあたしが悪いんだろうか)。 ギターもバリバリ自分で弾いて歌も自分で歌っているみたいですが・・・まぁそれくらいできちゃうでしょうね、この人、と思っちゃうから怖いね!

  幸せをつかむ歌3.jpg 右の人:エイミー・ガマー。
 ドラマ『恋するインターン』でこの人のことをはっきり認識して、それ以来ちょこちょこドラマで見るなぁ、と思っていたのですが・・・今回、「あれ、こんな顔だったっけ?」と。 今、『エクスタント:インフィニティ』に出てて毎週見てるはずなんだけど、と改めて見たら、それはグレース・ガマーさんだったのです! 姉妹だったのか?! というかメリル・ストリープの娘は2人いて、2人とも女優なんだね!
 並べて見たら違うんだけど、この2人、結構似てる! 今まで一人だと思っていたから、もうどのドラマに出ていたのがどっちなのかわからない。
 ちなみに、ブルース・スプリングスティーンの曲が重要な役割を果たすのですが・・・あぁ、『フィラデルフィア』で主題歌お願いしたもんね(確かそのビデオクリップをジョナサン・デミが監督してるはず)。 監督好きなんだなぁ、とつい感じてしまいました。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする