2016年04月08日

ロブスター/THE LOBSTER

 これは予告を観た時だったかチラシを見た時だったか、「おぉ、シュールなナンセンスコント!」と大いに盛り上がったのだが・・・仕事の都合と上映時間が合わず、気がつけば神戸最終日。 最近、こういうの多いぞ(それでも間に合っただけよかったというべきか)!
 最終日だけ上映時間が違っていたので、これまでタイミングが合わなくて来れなかったのかもしれない人たちがぞろぞろ。 珍しく、5割以上埋まっていたのではないかしら。
 しかし観に行った甲斐のある、冒頭から理不尽映像てんこ盛りの、暴力的なまでのナンセンス(ラヴ)コメディでありました。

  ロブスターP.jpg ルール @45日以内にパートナーを見つけること A独身は罪 B捕まれば動物になって頂きます

 成人以上はカップルでなければ街で暮らすことができない世界(もしくは時代)にて、パートナーをどのような形であれなくしてフリーになった者は街から離れたホテルのような宿泊施設に送られる。 そこで45日以内に新たなパートナーが見つかれば街に戻ることができるが、そうでなければ自分が選んだ動物にならなければならない。 しかし宿泊施設の裏にある森にはこの制度に耐えられない独身者たちがコロニーをつくって逃亡生活を送っており、ホテル滞在者たちは独身者狩りをすることで滞在期間を延ばすことができる(一人を捕まえたら一日延長、麻酔銃が支給される)。 11年1カ月の結婚生活の末、突然妻に心変わりを告げられたデヴィッド(コリン・ファレル)は、ルール通りにパートナーを見つけられなくて現在は犬になっている兄とともに施設に向かうことになる・・・という話。
 タイトルの“ロブスター”とは、「もしパートナーが見つけられなかったら何の動物になりたいですか?」と聞かれた時のデヴィッドの答え。
 とりあえず、「この初期設定なんなの?」と疑っていては話は始まりません。
 あぁ、そういう世界なんだな、とすんなり受け入れられるか否か! それがこの映画を楽しむための鍵といえましょう。
 結構な豪華キャストなのに作家性が強いというか、説明しようという色気さえ見せずにばしばしと断片でぶった切りされる置いてけぼり感がむしろ爽快で、監督は誰かと思えば『籠の中の乙女』のヨルゴス・ランティモスだったんですね・・・多分初めての英語での映画であろうに(監督はギリシアの人)、自分のスタイルを放棄しない。 それもまたすごいことである。

  ロブスター2.jpg 品定めのダンスパーティー。 まともだとかまともではないとか、そういう基準すらすでに曖昧。 とにかく、45日ルール下にある独身者たちをめぐる状況はすべて異常である。

 コリン・ファレルがのたっとした印象のちょっとダメ男な感じをやっているのがすごくこの映画の雰囲気づくりにぴったりで(いろいろ疑問に思いつつも反論できない感じのわずかな愚鈍さがこのストーリー展開に説得力を与えている)、ジョン・C・ライリーの期待を裏切らない“いつもの感じ”で、更にベン・ウィショーもまた素晴らしく美味しい! あの絶妙な空気読めなさ、最高!
 一方、森で逃亡生活を送る独身者たちにはリーダー(レア・セドゥ)がいて、強烈なリーダーシップを発揮しているのだがそこでは「恋愛禁止」がルール。 それを破った者には恐ろしいことが待っている・・・という選択肢がまた極端から極端しかないのである!
 街に戻るために妥協の結婚も考えたデヴィッドだったが、結局、ホテル内の雰囲気に耐えきれずに逃走、森の独身者たちに加わるのだが、そこで運命の出会いをしてしまうんだな、これが。

  ロブスター1.jpg 運命の皮肉ってやつですね。 でも静かな時間は長くは続かない。 レイチェル・ワイズ、ヘンだけど相変わらず美人♪で見ているだけで気持ちが盛り上がるな〜。
 ルール的にはパートナーは異性でも同性でもいいらしい。 ということは少子化対策とは関係ない。 森のルールは「おひとり様でなければいけない」という個人主義を尊重しているようでいてこれも一つの価値観の押し付けである(制裁を加えるレア・セドゥの姿に、思わず『実録・連合赤軍/あさま山荘への道程』を連想してしまったのはあたしだけではあるまい)。 体制側の冷酷さと、反体制側にもある冷酷さ。 社会という構造そのものがはらむ矛盾を極端な例でつきつける。
 かといってそんな身も蓋もない話で終わらないところがこの映画のニクいところ。

  ロブスター3.jpg こんな美しい場面を不意に挿入してくれたり。
 そんな異常下でも純愛は存在する、という救いが描かれているところが監督の優しさではないだろうか。 でも、こんないかれた社会に対抗するために払われる犠牲もまた欠かせないという点で、素直な優しさじゃないんだけど。
 あぁ、あたし、この社会では絶対生きていけないわ。 何の動物になろう・・・。
 とはいえ、この社会が現代社会の風刺でないわけないわけで、誰しも少数派に転がり落ちる危険があることを、そして必ず助けてもらえる保証なんてないことを教えてくれているわけです。 だったら最初から少数派であるという自覚を持っている方が、いざというときショックが少ない、ということでしょうか。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする