2016年03月01日

第88回アカデミー賞授賞式@WOWOW

 仕事を休めないので衛星生中継はあきらめるとしても、午後9時からの再編集字幕版放送には間に合うだろうと思っていた。 が、間に合わなかったのである!
 急いで家に帰った上にダッシュでシャワーを浴び、簡単な夕食をこしらえてお茶を多めにつくり(終わるまで席を立たなくていいように)、追っかけ再生で見ていくことに。
 帰りの電車内で、携帯電話ニュースに「5度目の正直」という文言が流れたのが見えたので、「あぁ、ディカプリオ」とわかってしまっていたが、それ以外はまったくの白紙。 結果がわからないで見られるって、いいなぁ。
 今回のアカデミー賞、ディカプリオも話題だったけれど、「黒人無視・白人優先」問題も事前に物議を醸していた。 しかし司会はクリス・ロック。 勿論生放送だし、事前準備もできたし、結果的にその問題にも十分切り込んで、かえって話題になってよかったんじゃないの、ぐらいの勢い。 「黒人は差別というか区別というか、確かにちょっと違う扱いをされてますよ!」みたいなことをジョークのネタにも、合間のVTRの小ネタにも使いまくりで、それがガンガン受けている。 それがタブーではない、というところにも、そういうネタにしてしまうあたりにも黒人側の余裕を感じるんだけど、どうなんだろう。
 勿論、すごく頭の固いお年寄りとか、差別主義者は存在するけれどそれを別にすれば、かなり黒人の地位は向上していると思われるのですが(そしてそのあとにはヒスパニックの差別があり、それが問題になると今度はアジア系が差別の対象になってたと聞く。 人種のるつぼもといサラダボールであるアメリカでは差別の階層ができている。 黒人はすでに最上位だ)。 クリス・ロックはうまいこと言っていた。 ハリウッドにおける黒人の扱いは、大学の女子寮みたいなものだと。 「あなたがいい人なのはわかってるわよ、でもなんか、ちょっと雰囲気違うのよね〜」的な。
 あたしは見た目で何人(なにじん)とか区別のつかないやつなので(何故に向こうの人は一目でたとえばユダヤ人だとわかるのか不思議)、そういうことは意識したことがあまりないのですが、それは意識しなくても生きていける場所に住んでいたからに過ぎなくて(というか田舎者だという自覚があるので、いつ差別される側に立つかわからない、という気持ちはあるかも)。
 まぁ、ともかく、そんなわけで今年のアカデミー賞。 受賞者のスピーチは例年になくメッセージ性が強かったというか、はっきりした主張が織り込まれたものが目立った気がする。 みんな、クリス・ロックにつられたのか。 それとも、「物を言うハリウッド」が時代の流れということか。

 前半は、『マッドマックス』祭り。 だいたい初ノミネート・初受賞のパターンが多いのも特徴。 このような賞に縁のなかった人たちが称えられるのは大変よろこばしい。 ヘアメイクで受賞した女性に「このままだ遠くない未来に、この地球は『マッドマックス』みたいな世界になっちゃうわよ!」と言われたのが印象的だった。 あんなイカれた世界を作り出しながら、ただの作り事ではなく現実に直結していることをわかっている。 不思議で面白いけど大変な仕事だろうなぁ、と改めて感じる(日本アカデミー賞の授賞式ではこんな裏方の発言が聞けないので面白くないよな、とも思う。 それ以外にも面白くない要因はあるけどですが)。
 まぁ、残念ながら技術系の賞を多くとればとるほど作品賞など主要部門から遠ざかるってことはありますね(『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』は唯一例外かもですが、俳優部門ではまったく賞をとっていないし)。
 ひとまず、主要部門の結果です。 ( ← やっと!?)

<作品賞>  『スポットライト 世紀のスクープ』/Spotlight
 カトリック教会の神父における性的虐待を世に訴えたジャーナリストたちの実話がベース。
 受賞スピーチではバティカンやローマ教皇に現在進行形で解決していないこの問題に対して早く手を打つようにという提言としての告発が。 映画のテーマにぶれないエピソードです(それに対してバティカン側がどう答えるかは不明だが)。 マーク・ラファロをはじめとした実力派アンサンブルキャスト、というところもあたしの大好きな要素。 絶対観に行くぞ!

<主演男優賞>  レオナルド・ディカプリオ(『レヴェナント:蘇えりし者』)
 そろそろあげておこうか、ということなのかこれまでとイメージがまったく違う力技なのか、確かめたい気もしますが映画的にはあたしの好みとはちょっと違いそうな気がするのが・・・復讐譚は大好きなはずなのですが。 でもオールバックでスーツもしくはタキシード姿より、乱れた長髪でちょっと薄汚い感じのほうが若かりし頃のイメージと繋がり、ビジュアル的にはこの映画の彼、ちょっと好きです。
 また、スピーチも満を持したという感じでしたねぇ。
 映画関係者への感謝と自らの謙虚さを忘れず、環境問題のこともしっかり折り込み、全世界に発信されることを十分に意識して吟味されたのであろう言葉。 そこにあるのは、スターとして生きていく重圧を引き受けた人の姿でしたよ。

<主演女優賞>  ブリー・ラーソン(『ルーム』)
 新星と紹介されていましたが、落ち着き払った態度はただ者とは思えませんでした(まぁ本命視されていたし、これまでいくつもの主演女優賞をこの役でとってきたという自信が積み重なったものかも)。 彼女も今後が期待される実力派になりそうです。

<助演男優賞>  マーク・ライランス(『ブリッジ・オブ・スパイ』)
 ノミニーとして座る彼は映画よりずっと若くて温厚そうで、「あぁ、この人も役によって化けるタイプか!」と。 スタローンが本命視されていたのは承知の上だったのでしょう、他の候補者の方々への賛辞をまず表現するところが大人(そして自分に対する謙虚さには嫌味がまったくなく、結構苦労人だったのかと感じさせられた)。

<助演女優賞>  アリシア・ヴィカンダー(『リリーのすべて』)
 なにかの役作りなのか、ひげをたくわえたプレゼンターのJ・K・シモンズがやたら渋くてかっこいい!、とおじさん好きの血が騒いだ(すみません・・・)。
 彼女も演技経験はかなり少ないと聞いておりますが、『リリーのすべて』の予告編を見る限りエディ・レッドメインもすごいんだけど、彼を引きたてているのはまぎれもなく彼女、というのがすぐわかります。

<監督賞>  アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(『レヴェナント:蘇えりし者』)
 ここは是非ジョージ・ミラー監督(『マッドマックス 怒りのデス・ロード』)にとってほしかったけど・・・二年連続監督賞ってのも珍しいような気がするんだけど、今回あまり話題になってないような気がするのは何故?
 まぁ、二回目ということもあってかレオナルド・ディカプリオへの賛辞がすごく(監督賞のほうが発表が先だった)、映画の内容にも関連し、「肌の色はまったく意味がなく、髪の長さと同じくらい無意味なもの」だと人種差別意識をしっかり批判。 彼もメキシコからハリウッドに進出してきた人だし、去年『バードマン』でアカデミー賞を席巻したときに「(文化も食われるから)メキシコ系移民を規制した方がいいんじゃないか」とジョークのネタにされてましたしね。

<脚本賞>  『スポットライト 世紀のスクープ』
 基本的には脚本賞か脚色賞をとった方が作品賞をとる、というのがお約束。
 字幕には出なかったけど『エクス・マキナ(原題)』はアレックス・ガーランドって聞こえたよ!(『ザ・ビーチ』『四次元立方体』の作者)。
 そりゃ期待しちゃいますなぁ! 是非日本(神戸)で公開してほしい!

<脚色賞> 『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
 なので作品賞はこのどっちかなんだろうな、と予想していました(『レヴェナント』ではないんだな、と)。
 これまた『ブルックリン』はニック・ホーンビィ(『ハイ・フィディリティ』『アバウト・ア・ボーイ』等の原作者)って聞こえたけど・・・イメージと全然違うじゃん!(調べてみたら『17歳の肖像』も脚本は彼でした・・・そういえば当時それで驚いたことを思い出した)
 表現者として彼は枠をどんどん越えていっているのでした。

<外国語映画賞>  『サウルの息子』(ハンガリー)
 これまた大本命。 ノミネート発表前に日本公開が早々に決まっていた、というのも作品の質の高さを物語る。 『悪童日記』もハンガリー映画だし、あまりなじみのない国の作品が気軽にどんどん公開されるようになるのは大変よろこばしい。

<長編アニメ映画賞>  『インサイド・ヘッド』
 ここも予想どおりでしたが・・・個人的には『ひつじのショーン』も捨てがたいと思っていましたよ。

 こう見返してみれば、どれか一強というわけではなく、いくつかの作品で順当に賞を分け合った、という感じか。 それだけすべて一定基準をクリアした良作ばかりだったのか、ただ決め手に欠けたからだったのか、こればっかりは観てみないとわからないぜ。
 授賞式翌日の仕事場で、朝の情報番組で紹介された結果を見たという方々から、『スポットライト』について「あの映画、かしこんさん好きだろうなぁ、絶対観に行くだろうなぁって思ったよ」と言われました・・・はい、その通りです。

ラベル:アカデミー賞
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画関連情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする