2016年02月25日

愛しき人生のつくりかた/LES SOUVENIRS

 予告を見て、「フランス映画にもこんなふうに観ている間はほのぼのっぽくて、更にあとには特に残らなそうな映画ってあるんだ!」という印象を受け・・・言い方は失礼な感じですがこれはいい意味で。 どうもフランス映画って手触りがざらっとしているというか、ハッピーエンドっぽく見えてもどこか後味の悪さが気にかかる、そういうのが多い気がして(それはあくまで日本で公開されるもの・もしくはあたしが目にするのがそういうものが多い、ということかもですが)。

  愛しき人生のつくりかたP.jpeg 季節は巡りゆく。想い出だけを残して――。

 SOUVENIRは受験英語的にはフランス語からきて英語に定着した“お土産”、転じて“思い出”という意味もある。 こっちでは元々の意味“思い出”のほうでしょう。
 パリのアパルトマンで暮らしていたマドレーヌ(アニー・コルディ)とその夫との間には3人の息子に恵まれ、孫もおり、幸せな人生だと思っていた。 だがクリスマス目前に夫はこの世を去り、マドレーヌはふと自分の人生とは何だったのか立ち止まってしまう。
 長男のミシェル(ミシェル・ブラン)は母を一人でアパルトマンに置いておくのは心配だと老人ホームを手配するが、ある日突然マドレーヌは失踪。 夢見がちのぼんやりとした孫のロマン(マチュー・スピノジ)ではあるが祖母とは親友のように仲がよく、彼女の思い出の品からその行方を探そうとする・・・という話。

  愛しき人生のつくりかた1.jpg こういう祖母と孫息子の関係ってキュート。
    ロマンくんは「運命の恋の相手はいつか現れる」と真剣に思っている(だけ)のちょっと困ったくんではあるが、純朴なキャラクターである。

 三世代にわたる家族の姿を描きつつも、やはり物語の中心にいるのは(たとえ不在だとしても)マドレーヌ。 彼女がとてもキュートで、「こんなふうに歳をとりたい」と思わせてくれる愛らしさ(息子からなんと言われても自分の意志を曲げない頑固さすらも説得力あり)。 彼女の幼少時には当然のように戦争の暗い影が落ちているのだけれど、それに踏み込み過ぎないところも家族映画としてバランスがよかった。
 でもそんなふうに描けるのも此頃の時期がギリギリなんだろうな、というのも感じた。
 で、意外に笑いどころも多くて。 脇役の方々が呟く金言の数々!

  愛しき人生のつくりかた2.jpg 3人の息子の特徴がそっくりすぎる。
    ミシェル・ブランって『仕立屋の恋』の人じゃないか!、とその変わりように愕然としたり。

 息子たちは母の誕生日のために張り切ってレストランを予約するも、母には「どうせまたあの店で、あの料理よ」とお見通しだったりして(それでもよろこんでみせてあげてしまうので、息子たちは今後も気が利かないままであろう)。
 これって、ある種の男たちはそういうところがほんとにダメであるということなのか、そういう男たちを育ててしまった女がいさぎよくあきらめなければならないのか、「卵が先か鶏が先か論争」になりそうである。 変化はしてくれないのだろうか。
 そしてなにより、ポスターの絵のようなノルマンディー地方の海岸風景の美しさときたら!
 シャルル・トレネの名曲“残されし恋には”にのせてフランソワ・トリュフォーに捧げられたオマージュ、とのことでしたが、どっちもよく知らないあたしにもこの曲がぴったりなことはよくわかり。
 笑って、ほのぼの・しんみり・ちょっと憤り・そして穏やかな気持ちに。 いろんな感情を激しすぎることなくやんわりと浮かび上がらせる、全方向ビタミン剤みたいな映画。
 いろんな意味で疲れておりましたあたしですが、ちょっとそれを忘れました。

ラベル:外国映画 映画館
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする