2016年02月01日

凍氷/ジェイムズ・トンプソン

 『血の極点』の刊行をきっかけに、読みかけであったこれを読んでしまおうと思った。
 というか、あたしには“読みかけの本”が結構な数あるんですけどね!
 カリ・ヴァーラ警部シリーズ2作目。 前作『極夜<カーモス>』で心身ともに深い傷を負った彼はそのまま同じ仕事を続けられるのだろうか、そもそもキッティラにも住み続けられるのだろうか、と思っていましたが、なんとすでにヘルシンキにお引っ越し済み。 キッティラでは小さい町ながらも警察署長だったのに、殺人課の一警部としての再スタート。 カリの妻ケイトの当初からの希望通りのヘルシンキの都会生活なれど、それがいまいち合わないのか、前作からのトラウマを引きずっているのか、ケイトが妊娠中だから心配でたまらないからなのか、カリは絶え間ない偏頭痛に悩まされており・・・という、土地は変わっても前作ラストのダークさは引きずられている。

  凍氷.jpg 原題は『悪魔(ルシファー)の涙』ですが、ルシファーがいるのは氷の地獄。 「氷も凍るほどの寒さ」はヘルシンキを襲う稀に見る大寒波と、知っている気でいたけどまだまだ人間の残酷さには底がない、という意味のダブルミーニングかと。

 今回、カリが扱うことになる事件は残忍だけれど内容は単純なのでミステリとしての意外性は低い。 そのかわり、カリがヘルシンキで出会う人々、フィンランド警察の組織の中にしっかり組み込まされた自分、アメリカ人であるケイトの弟妹が訪ねてきたことによって起こる文化的衝突、等々、カリのパーソナルな部分にかなり踏み込んだ内容になったとともに、フィンランドの歴史の暗部にもまた触れている。
 第3作目の原題が“HELSINKI WHITE”、4作目が“HELSINKI BLOOD”
 もしかしたら完成しなかった5作目のタイトルは“HELSINKI BLACK”で、シリーズの中でも要の三作になるはずだったのではないだろうか。
 『凍氷』『極夜<カーモス>』とそれらをつなぐ意図で書かれたのではないだろうか。
 どうもそんな気がしてならない。
 魅力的なキャラクターも多く登場し、読者として、前作よりも明らかにカリに共感している自分もいるし(向こうの方が当然すごいのだが、<北国に住む人間>としてわかる部分があったりするから)。 と、盛り上がってきているのに、作者の不慮の死によって中断したシリーズの続きを読むのは、気が重い。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする