2016年01月19日

クリムゾン・ピーク/CRIMSON PEAK

 ギレルモ・デル・トロ最新作、というだけで自然と期待値は上がるのに、正統派ゴシック・ロマンでゴースト・ストーリーなミステリーホラー、しかも主演はミア・ワシコウスカ、おまけにタイトルに<クリムゾン:深紅>という単語があるとなれば、もうこれは間違いなくあたしのツボ! 見逃すわけにはまいりません。
 しかしそこまであたし好みの路線ということは当然観客も選ぶわけで、早く終わってしまうかもしれない! 早々にレイトショーに駆け込む。 もしかして、多分同志、なのだろうか。 レイトショーの割にお客はそんなに少なくなく(多くもないけど)、ほぼ一人客ばかり。

   クリムゾンピークP.jpg 絢爛豪華な心霊屋敷が、人の心を狂わせる。

 イーディス(ミア・ワシコウスカ)の母が死んだのは彼女が10歳のとき。 葬儀の後、死んだ母の幽霊を見た彼女は、それ以来亡霊が見えるようになる。 成長したイーディスは小説家志望でゴーストストーリーを描くが、出版社は「女性ならば恋愛ものを」と原稿を引き受けてはくれない。 イーディスは実業家の娘なので生活に不自由はないが、時代的にその年代の女性は結婚しているか婚約者がいるのが当たり前なので社交界での彼女への風当たりは強い。 ある日、イギリスから貴族のトーマス(トム・ヒドルストン)がやってきて、イーディスの父に事業協力を求める。 高貴な物腰とその美貌、そして漂う憂いを秘めたトーマスはたちまち社交界の花形となるが、彼が求めたのはイーディスだった。 結婚し、トーマスの姉ルシール(ジェシカ・チャステイン)と共にイギリスの彼の領地に移り住むことに決めたイーディスだが、その土地が<クリムゾン・ピーク>と呼ばれていることを知り愕然とする。 母の幽霊がいっていた言葉、それは「クリムゾン・ピークに気をつけて」だった・・・という話。

  クリムゾンピーク2.jpg 髪をアップにしていれば、サラ・ウォーターズが描くところの<老嬢>とはこういう感じか、と思わせておきながら・・・。

  クリムゾンピーク1.jpg 髪をおろすと一気に“少女”になってしまうその姿はなんなんですか! 年齢不詳すぎるぞ、ミア・ワシコウスカ!

 正直なところ、話は結構スタンダードというか、特別新しいものは何もない(だから話の展開は予想通りに進んでしまう)。
 だが、なんだろう。 この尋常ではない美しさ。 臆面もなく構築される直球のゴシック・ロマン。 細部まで作りこまれた映像美と、それに違和感も不自然さもかけらも抱かせることないキャスティングの勝利。
 あぁ、と、ただひたすらに、ため息。
 少女から大人への通過儀礼、という『パンズ・ラビリンス』にもあったテーマを読み取ることは勿論できるし、ゴシック・ロマンにしてはヒロインの行動が現代的過ぎるかもしれない(なにしろ男に頼ってばかりではなく、自ら戦うヒロインだから)。
 だからなんだというのだろう、美しいんだからそれでいいではないか!
 ネグリジェのいささか大きすぎるパフスリーブが彼女をまるで蜘蛛の巣の網にかかった蝶のように見せようとも、彼女は自ら燭台を手に持ち屋敷をさまよう。 たとえ崩れかけた身体を引きずるような全身真っ赤であまりにも見た目が怖すぎるゴーストたちに遭遇しても。
 あ、ちょっと残念だったのは音で驚かす演出が多かったことかな。 音でゴーストが出てくることが事前にわかってしまったから。

  クリムゾンピーク5.jpg 鉄の門の内側の錆具合とか、もうディテールがたまらない!

 白一色だった雪原が、地面から染み出た赤粘土のためにまさに深紅の血に染まったようにみえる、というのが<クリムゾン・ピーク>の名の由来。 上から飛び散ったのではなく、実は下からじわじわ広がってくる、という図は、あたかも人の心の中に巣くった何物かがその人の表面に徐々に漂いだしてくるような比喩であろうか。

  クリムゾンピーク3.jpg この姉弟、絶対あやしいのはわかるのに。 トーマス役のトム・ヒドルトンは『マイティ・ソー』のロキさんですが、最初は全然気づかなかった。 ヘンなコスチューム着なくても、この時代の正装をしている方が男前度は上! 姉がジェシカ・チャステインでも違和感なし!

 後半は玄関ホールの天井に穴が開いていて雪が降り積もっていくような、絶対に普通は住まない城(というかイギリス地方のカントリーハウスというか)を舞台にしながらも、「それはおかしい」と思わせない絵力というか、比喩を情景とうまくマッチィングしているところ、しかもそれをすぐには悟らせないところが粋(別に気付かなくても支障はないし〜)。 それでも、コピーの“絢爛豪華な屋敷”に偽りはない気がするし。
 普通は見かけたらギョッとしそうな大きな蛾(マイマイガではない。 羽が多少グレーがかりつつも透き通っているので、気持ち悪さはやわらいでいる)にもひるまない、そしてさっきので足の骨が折れたはずでは?、とは思えない行動力を発揮する、けれどそれでも雰囲気にはかなさをも漂わせてしまうイーディスに、ひたすら見惚れて。

  クリムゾンピーク4.jpg そりゃ、イーディスの幼馴染アラン(チャーリー・ハナム)も新事実が判明したら、彼女のことが心配になって追いかけてきちゃうよね。

 ミステリ要素はありますが、謎解きは期待しないでください。
 ホラー要素もありますが、怖くはありません。
 それでも、“ゴシック”という言葉に惹かれてしまう人ならば、間違いなく満足できることを保証します。 この映画を観ている間、あたしは完全に現実を忘れました。
 これぞ至福の時。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする