2016年01月02日

約束の森/沢木冬吾

 昨年、みこさまからご紹介いただいた本を読む。
 あぁ、500ページ越えであっても、日本人作家のものはやはり読みやすいなぁ。
 だからといって翻訳ものが読みにくいということではないんだけど、やはり読者として文化というか常識の前提がだいたい同じだから、ということでしょう。
 物語は、かつて警視庁公安部の刑事だったが、今は世を捨てて生きているような主人公が、かつての上司からの繋がりで潜入捜査を依頼されるところから。 謎の組織をあぶり出すためという計画に乗る必要はなかったが、潜入先にはかつて警察犬候補だったが今は打ち捨てられ、すさんだ犬がいるという。 それが気になって、依頼を引き受けてしまう、という話。

  約束の森.jpg ドーベルマン・ピンシェルと覚えていたのですが、いつからドーベルマン・ピンシャーという言い方になったのでしょうか。
 ドーベルマンかシェパードであればシェパード派のあたしですが、昔、家の近所にドーベルマンが飼われていたのを覚えています。 顔が怖かった、というか威厳があった。 通学路だったのでその家の前を通る度ほえられましたが、こっちも懲りずに毎朝挨拶をし続けていたら、一年ぐらいしたら吠えられなくなり、見送ってくれるようになって。 「飼い主に絶対忠実」であっても、他人の悪意のなさが通じたら認めてもらえるんだな、というのがあたしのドーベルマンの印象です。
 なので、任務よりも心のすさんだ犬のため仕事を引き受ける主人公に共感し、逆上したら犬を虐待する人間の屑を殺しかねない情熱(?)も、なんだか理解できるのです。
 しかし、“公安”と“謎の秘密組織”というキーワードが揃うと胡散臭く感じてしまうのは何故でしょうか。 これも刷り込まれ?
 <日本版『ウォッチャーズ』>(ディーン・R・クーンツの)と言っている人もいましたが、残念ながらそれは言いすぎ。 バイオレンス描写は近いものはあれど、人間外の種から見たもの、のような視点はない(その分、人間の情と非情のせめぎ合いが多く、「その人、死ななくてもいいでしょう!」な場合もあり−しかし残念なことに「死んでも仕方がない」的過去が添えられたりしてがっかりだ)。
 そういう意味では意外に、勧善懲悪?
 そして終章の余韻が短すぎ! せめて宮田獣医師が登場する場面がほしかった。
 でも奇跡の犬・マクナイトの存在が、この物語のレベルを上げているというか、読ませどころになっているのは事実です。

ラベル:国内ミステリ
posted by かしこん at 23:59| Comment(4) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする