2015年12月22日

黄金のアデーレ 名画の帰還/WOMAN IN GOLD

 なんだかひっそり公開され、ひっそりと終わってしまいそうだったので早々に観に行ったのだが、口コミで地味に支持が広がっていったらしい。 本来、もっと早く『ミケランジェロ・プロジェクト』をかけるつもりだったOSシネマズミント神戸がそっちの映画の公開中止?・公開延期?のスケジュールの都合によって上映できなくなって(その分、短期間ですがシネ・リーブル神戸で緊急公開中、あたしは最終日に行く予定!)、その代わりに持ってきたのかな?、とあたしは思ってしまいましたが。
 どちらにも共通するキーワードは、<ナチスに強奪された美術品>です。
 でもこの映画に対するあたしの本来の目的は、ヘレン・ミレンだったりするわけですが(あと、ダニエル・ブリュール。 すみません、ライアン・レイノルズはどうでもいい)。

  アデーレP.jpg クリムトが描いた、一枚の肖像画。
   幸せな記憶を封印したウィーンで、私は<家族>を取り戻す――

 アメリカ在住の82歳のマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)はずっと考えていた。
 グスタフ・クリムトが描いた伯母アデーレをモデルにした肖像画“アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像T”を自分のもとに取り返したいと。 第2次世界大戦中、この絵はナチスに奪われ、現在はオーストリア政府の所有物として美術館に飾られている。 マリアは友人に弁護士を探しているんだけど、というと、「うちの息子が弁護士で独立したばかりなんだけど、仕事がないみたいだから使ってやってくれる?」みたいな感じであっさりとその息子ランディ(ライアン・レイノルズ)はマリアのもとを訪ねさせられ、挙句オーストリア政府を相手取って絵画の返還を求める訴訟を起こすことに・・・という話。
 なにしろ実話であるし、邦題からもう裁判の結果はわかっているじゃない・・・という意味でのスリリングさには欠ける。
 が、なによりもこの映画はヘレン・ミレンにつきる!、といっても過言ではない。

  アデーレ6.jpg このちょっと小首をかしげる角度がたまらない!
 オーストリアの“亡命貴族の娘”がそのまま70歳になり、決して高慢ではなく、むしろ今でもどこか無邪気な高貴さを漂わせている、という時間が経過しても変わらぬ美しさというか。 だから弱気な弁護士もすぐに白旗を揚げてしまう威厳がそこには十分あり、それだけではないチャーミングさにも人はやられてしまうのだろう。 あたしは、やられました。
 しかし、マリアの言っていることは気持ちはわかるが無茶である。 1907年に描かれた絵画を自宅の居間に飾るなんて絵画保護の観点からも論外だし、絵画の流転についてはともかくそれまで大事に保管してきたウィーン美術館の人たちの気持ちはどうなる?
 所有者を自分の名前にして、絵はそのままウィーンで、でいいじゃないか、と絵画ファンとしては思ってしまいました。

  アデーレ4.jpg ちなみに、冒頭で絵のようにアクセサリーをつけたアデーレをモデルにクリムトが絵を描いているシーンはなかなかエキゾチックで素敵です(おぉ、金箔の貼り方が日本の屏風つくる人となんか似てるぞ!、的なのも楽しかった)。
 ただ、ダニエル・ブリーリュ出番少ない!
 まぁ、彼があまり活躍したらライアン・レイノルズがかすむ、ということもあるが。
 ダメダメな若手弁護士(しかしよく考えたらマリアの友人の息子ということは、彼もいい家柄出身なのである。 祖父は高名な作曲家だし)の成長物語、という側面もこの映画にはあり、楽しめる要因の一つかも。

  アデーレ3.jpg はじめはかみ合わなかった二人が、徐々にいいコンビになっていく様も面白いです。
 あとはなにしろマリアの波乱の人生である。 伯母アデーレを含む家族で暮らしていた楽しかった時期、そしてナチスに追われウィーンを脱出しアメリカに渡って・・・派手な描写はないけれど、彼女の感じた恐れや喪失感はしっかり描写されている。
 となると、自分がこれまで失ったものすべてがあの絵に凝縮されていると感じてしまったらやはり返還要求したくなるかなぁ。 しかし始めは芯の強い彼女がランディを押し切る形で話を始めたのに、裁判に持ち込むまでになんらかの抵抗にぶつかると結構すぐくじけがち。 <あきらめる>、というのもまた彼女の人生において学んでしまったことのひとつだと気づかされるのは大変切ないものが。 そしてその度、背中を押すのはやる気になったランディのほうだったりするのだ(勿論、弁護士としての名誉欲やおカネの問題が動機ではあるけど)。
 やはりこの年齢差のある凸凹コンビぶりがいちばんの見どころ?

ラベル:外国映画 映画館
posted by かしこん at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする