2015年11月08日

ヴィジット/The Visit

 こっちこそ、「おかえりなさい!」という声にふさわしい相手、M・ナイト・シャマランの、ホラー・サスペンステイストに回帰した新作。 シャマランに対してはいろいろと毀誉褒貶がありますが、あたしは一度「この人、すごい!」とか「この人、好き!」と思ってしまった相手は決してキライになれない性格。 『シックス・センス』で「やられた!」と裏をかかれる気持ちよさ(と同時に、何故気づかなかったのだ、違和感はずっとあったのにという悔しさ)を体験させてくれた彼のことを、多分あたしはずっと好きだと思うのです(だから前作『アフター・アース』は悔しさを通り越して泣きたくなりましたよ。 当時評判いまいちだった『アンブレイカブル』なんか、アメコミ作品の映画化全盛の今、改めて観直したら絶対に再評価されると思う)。
 で、てっきりドラマ『ウェイワード・パインズ』が好評だからまた映画が撮れるようになったと思っていたのですが、なんとカンパニーマークは『パージ』と同じところ! しかもPOV視点! なんと彼の新作は、低予算のある意味インディーズ映画だったのでした。

  ヴィジットP.jpg 祖母の家には奇妙な「3つの約束」があった。
     あなたは絶対に、“その約束”を破ることになる――。

 ポスターもコピーも、タイトルが似ているせいか過去の作品『ヴィレッジ』になんか似ています(真っ黒ベースのところは『シックス・センス』もか?)。 というかあえて似せていることが丸わかり(まぁ、舞台は同じペンシルベニアだし、風景もどこか通じるものがあるけどさ。 ときどきワイエスの絵みたいで)。
 日本の宣伝会社、そこまでつらいのか・・・『シックス・センス』の、というだけではもう効果は得られないと判断されたのか・・・シャマランファンとして、あたしもつらいです。

  ヴィジット1.jpg この雪がちょっと残ってる感じ、いいよ!

 15歳のベッカ(オリヴィア・デヨング)は映画監督志望のおしゃまさん。 母がかつて両親と大喧嘩をして家を出て以来帰っていないことを気にしている。 男に捨てられてからは女手ひとつで13歳の弟タイラー(エド・オクセンボウルド)も育ててくれていたが、ネットを通じて連絡がついた母の母(つまり祖母)から冬休みに孫二人の顔を見せてほしいといわれる。 これは家族のルーツ、なによりも母を縛り付けている呪縛を解く旅になるだろうと確信し、ファミリームービーの格好の素材として祖母の家に行くことに承諾する。 その間、母にはボーイフレンドと一緒に楽しんできて、と。
 メインカメラマンはベッカ、ときどきサブカメラマンのタイラーで、二人は電車に乗ってペンシルベニアに向かう。

  ヴィジット2.jpg 駅で迎えてくれたの図。
     祖母の手作りクッキーでおもてなし、だが、普通そこで渡す? 家に行ってから、もしくはせめて車の中じゃない? 祖母がタッパーを常にカタカタいわせているのがもう不気味。

 そして訪れた祖母の家だが、なにかがおかしくてどこかずれている。 普通のように見える祖母は暗くなってくると様子がおかしいし、子供の頃のベッカの母の話を聞こうとすると半狂乱になる。 年をとってきたからおばあさんは病気なんだ、という祖父もかなりの確率で会話が成立しない。 これは二人が年寄りだからなのか? しかしベッカとしては祖母に母を許すという言葉をいわせてカメラにおさめるまで帰るわけにはいかず・・・それがいつしか姉弟を窮地に陥れていく、という話。
 「またPOVかよ!」とホラー好きのみなさまからはお叱りとお怒りの声が聞こえてきそうですが(あたしも最初そう思いました)、途中で気づきました。 よくある低予算POVホラーは<どこどこで見つかった謎のフィルム>というパターンがほとんどですが、この映画は違います。 ちゃんと、編集された後のもの!、なのです(気づくまでちょっとかかりましたが、それもまたあまたあるPOV映画に対するイメージを利用して観客をトリックにかけようとしているわけです)。
 それに気づいたとき、「あぁ、シャマランはまだやる気満々だ!」と大袈裟に言うならば胸が熱くなりましたよ。 それ故に、あたしはこの映画に対して明らかに点が甘くなっていますがそういう事情です。
 というか、あたしだったら二日目ぐらいでもう帰ると思う。 それくらい不審であやしげな兆候が沢山出ているのに帰らない姉弟にあたしは素直にすごいと思いました。 これがアメリカンな“家族の絆”の強さ?

  ヴィジット3.jpg それぞれがひどい目にあうけど、カメラを離さないベッカはえらい。

 しかしこの映画の本質はそこではない(実際は悲惨な出来事が次々起こっているのであるが説明が少なく、ショッキングシーンもチラ見せなのでこちらの恐怖心はいやがおうにも高まるのだが)。 母親が男に捨てられたということは、つまり姉弟は父親に捨てられたということ。 ベッカが母親の気持ちを慮るのは、父親を許せない自分を許せないから。 タイラーはそのショックで潔癖症になっているし、お互い正面切って話し合うことを避けてきたようにも思えた。 それがこの二人旅でお互い思っていることを言い合い、そして死の恐怖を目の前にその困難に打ち勝つことで、彼らはトラウマを克服してる!
 救いのない物語の中にある救い。
 それがシャマランの描きたいホラーなのだと今更ながらに気づいたりして(しかも今回はタイトルに複数の意味が!)。
 祖父母役の方々(特に祖母役)の俳優さんたちも大変怪演で、それ故の説得力も素晴らしかったです。 それにしてもタイラーくん、小生意気だけどいいキャラだ。 やはり少年を描かせて輝く腕は鈍ってないなぁ。
 思いのほか、よかったです!
 次回作はまたホラー・サスペンステイストでお願いします。

posted by かしこん at 18:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

虫の知らせは恐ろしい

 おかげさまでのどの痛みはかなり緩和しました。
 ただ抗生物質や抗菌剤をのむと、なんだか呼吸が浅くなってふわふわくらくらする。
 あぁ、まだクスリと菌が戦っている・・・完治まで、もう少しかかりそうです。
 それとは関係なく、何故か妙に、東京創元社のホームページにアクセスしたい気持ちに。
 そんなにマメに見に行っているわけではないのだが(特に『桜庭一樹読書日記』が終了してからは尚更)、メルマガは読んでいるが気になる記事があっても「うーん、読むと時間がかかりそうだからまた今度まとめて!」となってしまってより後回し(過去記事は全部読めるので、タイムリミットがないのも大きいかと)。
 なのに、そのときは何故か切羽詰まったものを感じたのだ。
 そして<トピックス>欄に恐ろしい文字を見つけた。

    2015.10.05 作家ヘニング・マンケル逝去

 ・・・頭が、一瞬真っ白。
 変に呼吸したらしく、咳が止まらなくなる。
 ええっ、病気だとか聞いてないし、67歳だよ!
 なんで、なんで、なんで?!
 ・・・あぁ、これって虫の知らせだったの?
 急性副鼻腔炎の症状が、悪化しそう。

 BBCの記事を読んだら、2014年の早い時期にがんが見つかっていたらしく、そのときの経験を本にしているらしい。 年末あたり、ヴァランダーシリーズの新しい邦訳が出るはずなので、そのときの訳者あとがきにくわしいことを柳沢由実子さんが書いてくれるのを待とう。
 それしかあたしにできることはない。
 ――あぁ、明日(もう今日だが)、仕事行きたくない・・・。

posted by かしこん at 00:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事問題・ニュースに思うこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする