2015年10月05日

クーデター/NO ESCAPE

 オーウェン・ウィルソンが珍しくギャグ抜きでシリアス演技に徹しているよ!、という噂を聞いて。 テーマ的にもなんとも言えない今日的な話題ですし。
 失職し、新たな仕事のために東南アジアの某国に妻アニー(レイク・ベル)・幼い娘2人とともに赴任することになった技術者ジャック(オーウェン・ウィルソン)。 到着した翌朝、ホテルから朝刊を買いに町に出た際、暴徒と機動隊が衝突する現場に遭遇。 クーデターらしいと気づいたときにはすでに遅く、暴徒らにより“外国人”というだけで人々が次々に殺されていく状況に愕然とする。 とにかく妻子を守ってこの国を脱出しなければ!、とジャックの奮闘が始まる・・・という話。
 しかし状況を見ていると「クーデター」というよりも「革命」や「暴動」のほうが言葉の定義に近い気もするのですが・・・まぁ、いちばん通りのよいタイトルなのかな。

  クーデターP1.jpg 東南アジア某国クーデター勃発
     標的は“外国人” 敵は全国民 あなたは生き残れるか?
       ↑← 正確には外国人専用ホテルの従業員たちはお客を守ろうと戦うので、<敵は全国民>ではないけどね。

 国の名前は出てこない(あえて出さない)のではあるが、舞台は明らかにタイです。
 でもクーデター実行犯たちの服装はISをはじめとするイスラム原理主義過激派っぽい。 そのあたりがロケ地としてOKが出た理由であろうか(どちらにせよさすがタイ、懐が広い)。 というか中国や韓国あたりでは普通に起こりそうなので洒落にならない、というところかも(が、よく考えればカンボジアで韓国が似たようなことをしているので、それを置き換えたのかな?)。

  クーデター1.jpg わけがわからないけど、もう逃げるしかない。

 奥さんが黒髪なので、遠くからでも露骨に外国人・西洋人とわかるのは夫のジャックの方(しかも彼は国を搾取する外国企業の技師としてほぼお尋ね者状態)だというのがスリルに拍車をかけます。 行きの飛行機で一緒になった、この国には何度も来ているという旅行者ハモンド(ピアース・ブロスナン)の助けがなかったら、かなりあっさり彼らは殺されていたかもしれない。 しかし幸運はいつまでも続かない、というのがこの映画のミソです。
 ジャック側はこの国の実情についてほとんど知らず、何が起こっているのかよくわからないまま逃げ惑う・・・というあたりが大変リアリティあり。 でも、別の国に家族ともども引っ越してくるからには、事前に準備ぐらいしようよ!、とあたしは声を大にして言いたい。
 どうせ英語が話せる相手を会社が準備してくれるだろ、というのはアメリカ人のエゴではないのか(現地の文字をちょっとでも勉強しておけば、逃走途中の地図が少しでも読めたかもしれないし)。 というか、自分一人でまず現地入りもせずに、いきなり妻と娘たちを一緒に連れてくるって危機管理出来てなさすぎでしょ!
 でもそこが、オーウェン・ウィルソンのキャラによって助けられてしまうのよねぇ。
 お父さん一人がヒーローなのではなく、家族みんなでお互いをかばい。助け合いながら逃げる、というのが今日的リアルなのです(女子供が露骨に足手まといになる描写がなくてそれはよかったよ)。 その分、襲ってくる側の得体の知れなさはテロリスト以上ゾンビ並み。 逃げ場がない、という絶望感は、沢山の死体を見てしまっているのでずっと根底に流れていて、普通こういう映画なら多少の希望がありそうなもんですが、ほんとにないんですよ。
 それが素晴らしい。

  クーデター3.jpg いざというときに現れるピアース・ブロスナン、
     やたらかっこいい!

 何故外国人全般が標的になってしまうまでになったのかについてはかつてのジェームズ・ボンドがサラっと説明してくれますが、目に見えない植民地支配が結局続いているってことなのかなぁ・・・搾取する側・される側という構図そのものには変化がないわけで、つらいわ。
 解決のためには地道にフェアトレードを進めていくしかないのかなぁ。
 彼らが生き残るためには、国境を越え、ベトナムに入るしか道はない(そうすれば他国の領土にいる人間を殺すことになるので戦争になりかねないため、敵は引き下がるを得ない)。 内戦に関しては内政干渉を盾に他国の介入をブロックできるけど、逃走者たちに他国に入られたら終わり(逆にいえば、誰しもそういう状況下におかれたらそうするしか方法がないということ。 島国に住んでいるとなかなか思いつかないです)。 アメリカ人が助けを求める最後にして唯一の手段がベトナムって・・・なんとも皮肉な。
 地球上にいる限り、結局逃げ場は限られる。 それでも争いを続けてしまう人間に対する多いなる皮肉なのか・・・B級サバイヴァルアクションの中に堂々と政治的主張を差し込んでくる感覚、ただ者じゃないですね。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 03:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする