2015年09月11日

彼は秘密の女ともだち/UNE NOUVELLE AMIE

 作品によりあたりはずれはあれど、現在のフランス映画界でわかりやすさと作家性を両立しているいちばんのヒットメーカーといえばフランソワ・オゾンです。 最近の作品はこっちのスケジュールとうまく合わずに観れていなかったのですが、これはチラシを見てぜひ観なければ!、という気持ちに。
 なんとなく日本の少女マンガにも通じる内容ではないかと思っていたところ、オープニングクレジットで<原作:ルース・レンデル>とあってひじが落ちそうになった。 えっ、サイコサスペンスになるんじゃないよね!

  彼は秘密のP.jpg 自分らしく生きたいと願う“女たち”の物語――。

 子供の頃からの親友ローラ(イジルド・ル・ベスコ)が病で死去、悲しみのあまり何も手につかないクレール(アナイス・ドゥムースティエ)は、母親の勧めに従いローラの夫ダヴィッド(ロマン・デュリス)と残された赤ん坊の様子を見るために彼らの家に行くことに。 すると、そこにはローラの服を着た上に化粧もしてかつらをかぶった女装姿で娘の世話をしているダヴィッドが。 性的志向はストレートだが女装に憧れている、このことはローラも知っていて理解してくれていたというダヴィッドの突然の告白にうろたえるクレール。
 今までは家の中でしか女性の服を着たことはなかったけれど、女性の姿でショッピングに行きたいと言い出すダヴィッドに戸惑いながらも、ローラを失った喪失感からクレールはやがてダヴィッドを“ヴィルジニア”と名付け、夫のジル(ラファエル・ペルソナ)に内緒で<新しい女ともだち>との付き合いを重ねていく・・・という話。
 葬儀のはじめ、クレールの一言からあと台詞なしで、クレールとローラの出会いから“その日”までをそれほど長くない映像で語り尽くすシーンは素晴らしい! 娘の洗礼式でやせ衰えた状態で車いすに乗っているローラを一瞬映すだけで彼女が深刻な病にあることがわかるし(はっきりと病名には言及していないが)、近しい者たちにはこの日をいつか迎えることはわかっていたという流れには胸が詰まります(いちばん編集に神経を使ったシークエンスかも)。
 と書くといい話っぽいですが、女装姿を最初に見たときにクレールは彼に「変態!」ときつい言葉を投げつけるのである。 びっくりしたよ! フランス人はもっとそういう意識、全体的にさばけているかと思っていたのに(そりゃ個人差はあるでしょうけど)。
 自分はローラの葬儀のときに「彼女は私の初恋でした」とか言っておきながら、他人の嗜好を否定するとはなんて身勝手なんだ!

  彼は秘密の4.jpg 女装を禁止されたダヴィッド、かわいそう。

 そんな感じで、観ていてクレールにはまったく賛同できず。 さすが、女の醜さ(というか自分だけは別なの、という勝手さ加減的なもの)を描かせたら天下一品のフランソワ・オゾン作品のヒロインです。
 それに比べてダヴィッド(というかヴィルジニア)のまっすぐさというか、繊細さというか、けなげさといったら! ロマン・デュリスの綺麗な脚を絶対見切れずに全部撮る!、とでもいうような監督の執念を感じるくらい、ほんと、脚が綺麗です(だから外を歩いても、ひげの濃い顔を隠せば「背が高くて肩幅あるだけの女」にちゃんと見えるんです)。 それにつれて仕草もどんどん女らしくなり、次第に最先端ファッションに身を包んでも違和感がなくなっていく過程がとても興味深く、美しくてうっとり。

  彼は秘密の5.jpg ロマン・デュルスって胸毛が濃くて男臭いイメージがあったけど、実はちゃんと華奢に見せられるのね〜(はっ、ダイエットしたのかも)。

 多様性というのは進化の必須条件なのに、何故人間は自分とは異質のものを排除する傾向にあるのでしょう。 進化の道を進みたくないのか、固定観念による“大多数に含まれている自分”、という安心感をただ求めたいからか。 だとしても、少数派を罵倒し傷つけたりしても平気というのはおかしいでしょう。
 まぁ、クレールの場合は同族嫌悪なわけで、そこもまた卑怯だと思ってしまう要因なのですがね。

  彼は秘密の6.jpeg クレールの夫・ジルはえらい男前だし、理解のあるすごくいい人だから余計にやるせない。
 とはいえ、最強なのは実はローラだったり(彼女こそ偏見なしにフラットに一人一人の人間を見られる人だった)。 ダヴィッドを理解して愛し、クレールのことも理解して受け入れていた。 お互いのローラのイメージを介して二人はお互いを見ていた、ということだったんだろうし、ローラの死がなければ二人はここまで親しくはならなかっただろうし。
 まったく、人生とはタイミングというか、どこでどう転がるかわからないですね。
 愛なんて性別も年齢も関係ないよ!、と思っているあたしですが、誰かを傷つけなきゃ成し遂げられない愛(もしくは“自分らしさ”)って切ないなぁ・・・でも仕方がないのかなぁ、と考え込んでしまうラストシーン。 でも偏見や固定観念に凝り固まっている相手なら「それもいい薬」とか思ってしまうんだろうなぁ。
 どうやらあたしにも偏見、あります。 そこまであぶり出すんですね、オゾンは。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする