どうせ原題は切れてしまうので。 “MISSION:IMPOSSIBLE ROGUE NATION”。
あたしの夏祭り第二弾、『MI:』シリーズ最新作であるが、そもそもあたしはドラマ『新・スパイ大作戦』が大好きだったのである。 だから劇場版『T』は許せなかった(フェルプスくんの扱いがひどい!)。 トム・クルーズのためのようにシリアス重視に進んだ『U』もあんまり好きじゃないし、そもそもトム・クルーズ自体そんなに好きではなかったんですね、当時。 でも『V』でドラマ的なチーム路線への下地ができて、『W』である『ゴースト・プロトコル』から、「あぁ、これなら楽しめる!」となったのだった。
なのでよく考えれば『ジュラシック・ワールド』とは時間の長さも気合いの入り方も違うわけで(『新・スパイ大作戦』からだったら20年以上はたっているけれど。 あ、でも『T』の公開は1996年なので19年たっているんだけど、あたしは映画館では観ずにレンタルか金曜ロードショーで観たような)。
だから「あれ?」と拍子抜けしたような感じがしたのは、きっとあたしは何かを勘違いしていたというか、『ジュラシック・ワールド』並みのノスタルジーを期待してしまったからだろう。
間違ってた、『ゴースト・プロトコル』はせいぜい4年前くらい。 だって本作は決して面白くない出来ではないのだから。
ちなみに、いつの間にかあたしはトム・クルーズを結構好きになっています。

絶対不可能に挑め。
前作から引き続き、正体不明の謎の集団“シンジケート”をひそかに追っていたIMFのエージェントのイーサン・ハント(トム・クルーズ)は、ロンドンで敵にとらえられてしまう。
一方、アメリカでの公聴会ではIMFの存在がやり玉に挙げられ、CIA長官(アレック・ボールドウィン)がブラント(ジェレミー・レナー)を引きずり出してIMF解体を叫んでいる。よってイーサンのチームメイトながら公に行動できないベンジー(サイモン・ペッグ)とルーサー(ヴィング・レイムス)は影に隠れてイーサンをサポート、“シンジケート”の謎に迫る・・・という話。
なにしろCMでバンバン流れている旅客機にしがみつくシーンがオープニング扱い(つまりあってもなくても本編には関係なし)というのがすごい。 というか、そこにいくまでの「動いている飛行機の翼に飛び乗る」のをさらっとやってのけるイーサンにびっくり!
すげーな、トム・クルーズ、と素直に感嘆。

これ、簡単にできないよ!
ただ、このシリーズの特徴として、007なんかと比べてイーサン・ハントは決して完璧ではないし完璧であろうとしない(特に自分を助けてくれた美女を無条件に信用してしまう傾向あり)というところがあり・・・そこがイーサンの人間的な魅力でもあるからチームのみんなは彼を支えようとするわけなんだけど、だからってちょっとは学習して!、と観ていて言いたくなるのは否めない。 スパイにしては甘い、というのがイーサン・ハントなんでしょうけど。
今回の敵は各国のスパイ組織から脱走したエージェントたち(だから各組織では死亡もしくは行方不明扱いとなっている)が集まった<ローグ・ネイション>(ならず者集団)と影で暗躍するMI6とIMFという、最近珍しい欧米のみなさんで完結する話で、ストーリーの骨格は“古き良きスパイ映画”の世界。 これ、カンパニーマークに中国資本が絡んでいるのと関係ある?、と思わず勘繰ってしまうあたしは考えすぎでしょうか。

今回も敵か味方かわからない美女をあっさり信用し、翻弄されてます・・・でもいつも結果オーライ。
以前007でもそんな場面あったけど、劇場で公演中の舞台裏&舞台袖で要人暗殺阻止(もしくは客席にいるはずの誰かを探す)のシーンはスリリングですな! こっちが舞台裏がどうなっているかをちょっと知っているせいもあるかもしれませんが、何の関係もない客に気づかれないよう舞台の進行も邪魔しないように、というハラハラ感も含まれているせいかもしれないですが。 しかしスパイ映画と舞台の生公演中って相性がいい組み合わせかも(しかも今回、上映されていたのは『トゥーランドット』でしたよ)。
相変わらずベンジーはお笑い担当ながら、どんどん役割も出番も増えているのがうれしいですねぇ(その分、ジェレミー・レナーのブラントくんが明らかに減ったよ)。
どんどんイーサンに対してタメ口、ときには罵倒してしまう遠慮のなさが、仲間感を強めているなぁ(まぁ、助手席に乗っているのに無茶を越えた運転されれば、誰でも叫びたくなるでしょうけどね)。

公演パンフレットを開いたらノートパソコンになるのがかっこいい!!!
今回の悪役(ローグ・ネイションのリーダーというか創始者というか)の外見が微妙に地味なところもよかったですね(これまでは結構顔の知れた大物俳優さんが多かったから。 でもイギリスの俳優さんで舞台系という感じがする実力を感じさせる)。 また声にもドスがきいてない感じもリアルっぽくてよいです。
しかし、ならず者とは・・・結局、スパイとして生きていく・生きていける種類の人間たちは基本的には一般社会に適応が難しい(もしくはそのように訓練されてしまった)から、信頼できる仲間たちとチームとしてやっていけるなら<信念を貫くスパイ>でいられるけれど、一歩間違えればはぐれ者になってしまう、という危険性をイーサン・ハント以下全員が持っているわけで、今回の戦いは同病相哀れむというか、骨肉相食むというか、善と悪との戦いという単純な対立軸では語れないことはかなり前からわかっていることですが、これもまた「深淵を覗く者は深淵からもまた覗かれている」ということなのかもしれない。
水中のアクションシーン、「なにやってる、イーサン!」と彼のうっかり度が炸裂している場面なれど、実はリアルにノーカット長回しで撮ったとあとから知り、「もっとちゃんと観ておけばよかった・・・」と後悔。 あ、今回3Dにしなかったのも好印象です。
やはりリアルで冷や汗をかきそうなアクション、時折こぼれるユーモアとチームプレイ、それがこのシリーズの魅力なんだなぁ。 原点回帰を持続してくれて、よかった。
そして、アレック・ボールドウィンの役者としての完全復活を目撃!、という感じ。
今作公開記念ということで、WOWOWが過去4作品一挙放送をしたのですが・・・一作目って監督がブライアン・デ・パルマだったんですね!
改めて観ればオープニングから無意味な血しぶきがあったり、夢と現実が混濁したり、螺旋階段に長回しとデ・パルマ節が爆発してました。 トム・クルーズを主演に迎えてのTVシリーズのリメイク映画なのに、自分のスタイルをまったく崩さないデ・パルマ監督、さすがです。