2015年06月13日

龍三と七人の子分



 なんとなく<『アウトレイジ』・その後>というイメージで観に行ったのだが(だって、音楽



担当が同じく鈴木慶一さんなんだもの)・・・しょっぱなから繰り広げられるベタなギャグの



数々に肘掛けから腕が落ちそうになる。 こんなに正面切ったコメディ映画だったとは!



   金無し、先無し、怖いモノ無し!

           俺たちに明日なんかいらない!! ジジイが最高!!



 現在は息子夫婦と孫と同居している龍三(藤竜也)ではあるが、かつては組の看板を



背負っていた極道者。 組を解散して引退した身ではあるのだが、ヤクザとしての性分は



簡単に消せるものではないため、息子(勝村政信)が願う“普通の老後”を送ることが



できない。 そんな彼の唯一の親友が、かつての兄弟分マサ(近藤正臣)で、時折二人で



酒を飲むのが楽しみ。 が、ある日、龍三はオレオレ詐欺の電話に引っ掛かりそうになって



しまい(というか、ほぼだまされたままなのだが)、ヤクザを名乗らないくせにヤクザ以上に



あくどいことをしている<京浜連合>をやっつけるため、過去の仲間たち(存命中の者に



限る)を集めるのだった。



 まず、「ジジイ最高!」ではあるのだが、彼らの側が正義でもない、ということ。



 勿論、京浜連合(このチープな団体名も笑える)が悪なのは確実なのだが、ヤクザ時代の



価値観で今も生きている“龍三と七人の子分たち”もまた、一般人からしてみれば迷惑な



存在である、ということをきっちり描いてある点が(そのために爽快さが減ることも承知で)、



なんとも言えぬアナーキーな笑いを生むという・・・北野武監督作品というよりも、むしろ



ビートたけし監督作品とした方がいいのでは?、というくらい。



   ジジイのみなさん、誰ひとりとして印象が

   かぶらないのもすごい。 品川徹さんを「早撃ちのマック」として完全にコメディリリーフ

   扱いにしちゃっているのに度肝を抜かれる。



 七人の子分たち、といいながら7人目がなかなか登場しなかったり、そもそも龍三を今回



親分と決めた点数制ルールとか、細かな面白さの積み重ねがやたら楽しい。



   対する京浜連合のみなさん。



 京浜連合のトップが安田顕、というあたりが個人的には大変ツボでした。 この組織も



存在自体が結構ギャグなんだけれども安顕さんの演技力でもたせてしまった。 サブの



矢島健一さんもいい味出してた。 下條アトムの小悪党感、素晴らしい。



 そう、キャスティングは素晴らしいのです!



 特に藤竜也はかっこいい。 監督の要求に生真面目に応えるが故に起こる笑いは、



本人たちは徹底的に真剣であるからこそ。 近藤正臣はいつの間にこんなおじいちゃんに



なっちゃったの?、ですが、彼がいたからこそ場がぐっとしまるし、中尾彬にこんな役を



やらせるか!、というのも楽しい。



 でも、なんとなく・・・テンポがよろしくない。



 ところどころ落語から引っ張ったネタを織り交ぜているのか近年の彼の嗜好の反映とも



言えるが。 で、結局いちばんいいところは警視庁第四課の刑事であるたけちゃん本人が



持っていく・・・「なんかずるいんじゃないの!」という気がしたのはあたしだけ?



 いや、でもそれが狙いなのかな。 ひたすら真剣だが時代はずれな老人たちの滑稽な



姿を描くことに終始する、という。 感動要素もあるんだけど、そのあとにすぐぐだぐだな



展開を入れていい場面台無し、だし。



 とはいえ、「先がない」ということを実感している人たちは強い、ということはしみじみ



感じました。 そういう意味では確かに“老人讃歌”です。


posted by かしこん at 17:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする