2015年06月09日

百日紅 〜 Miss HOKUSAI

 アニメ映画を見るのは久し振りだったので微妙に不安はあったのですが、熱狂的な愛好者の方々が集まる題材じゃないよな、と(時折、シネリーブル神戸に渦巻く一体感めいたものに自分に軽くアウェイ感を見つけてしまうので)、原恵一監督作品だから一般向けなはず、と自らを奮い立たせて臨む。 おかしい、なんでこんなに自分に言い訳をしなきゃいけないんだろうな、と思いつつ(でも結果的には様々な世代のお客さんで、結構席は埋まっていたのだった)。

  さるすべりP.jpg お栄23歳。職業、浮世絵師。父、葛飾北斎。
    江戸に恋する、浮世を描く!

 お栄(杏)は頑固で偏屈な天才絵師である父・葛飾北斎(松重豊)の浮世絵制作を陰で支えつつ、自らの絵を模索する浮世絵師(のちの葛飾応為)。 今日も江戸の町を闊歩しながら様々なものを見、そして絵を描く。
 杉浦日向子の原作『百日紅』は連作短編・点描の積み重ねなので、この映画も大きな一本の線がある物語ではなく、小さなエピソードを繋げていく形になってしまったのはちょっと残念か。 実際の上映時間以上に長く感じてしまった。 まぁ、日常を描くのだからそれは仕方のないことなのだけれど。
 ただ、実写映画も撮った原監督がまたアニメーションという手法を選んだ意味がよくわかる、アニメでしか表現できない場面がいくつもあった。

  さるすべり1.jpg 原監督がProduction I.Gと組んだのは意外でしたが・・・おかげで背景のクリアさというか、奥行き感がきれいです。
 でもやっぱりヴォイスキャストに顔も売れている俳優の方々を多く選ぶのはちょっと・・・「あ、この声、聞いたことある。 誰だっけ?」とつい考えてしまい、ストーリーへの没頭の妨げになったように感じたのは個人的理由であろうか。 そんな中、クレヨンしんちゃん父子がワンシーンだけ登場の人を何人も吹き替えている職人技を見せられ(聞かされ?)、なんだかほっとするのでした。 松重さんも声を潰し気味にしてだみ声風に喋り、もう少し上の年齢感や天才らしき気難しさを声だけで表現しようとしていたけれども。

  さるすべり3.jpg 母親の違う妹・お猶とのエピソードの膨らませ方はよかった。 咲いている花で季節の変化を表すのも。
 “百日紅”を“さるすべり”と読む、と知ったのは確か小学生の頃、多分横溝正史の『古井戸は何故軋る』だったのではないかと思う。 だからずっと百日紅の赤さにはどことなくおどろおどろしいイメージを抱いてきたのだけれど、この映画で「百日紅って、こんな明るい花だったんだ」と驚いた。 言葉が持つ印象をはじめにどこで拾うか、というのがこんなにものちのちまで影響を与えるものなんですね(あたしだけかしら?)。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする