2015年05月19日

ノヴァーリスの引用/滝 /奥泉光

 『ベルリン・レクイエム』に手をつけてしまいましたが、先に手をつけていたこっちの方が薄いので、読んでしまうことにしました。 たまたまちょっと、長く電車に乗る機会があったので。

  ノヴァーリスの引用 滝.jpeg ウィリアム・ブレイクにこの記号的なものを重ねた意味は?
 帯には、<終わりなき推理の連鎖が、現実を変容させる>とあります。

 その通り、『ノヴァーリスの引用』は、ほぼ『虚無への供物』のオマージュ?!
 150ページに満たないその中に、あたしは何度『虚無』の面影を見ただろう。
 なんかもう、ためいき(というか、嘆息?)が何度こぼれたことか。
 海泡石のパイプに至っては、和田慎二の『パパ!』シリーズを思い出しちゃいました。 自分が本から受けてきた影響が、ぶくぶくと湧きあがってくるようで。

 一転して『滝』は一行目から不穏で、「なにこれ、短縮・濃縮された『蝿の王』?」という感じ。 あえて詳細な説明を排除して、特殊な状況に放り込まれた少年たちに生じていく心理的な葛藤を悪意に変換して放置という・・・作者によってきっちり計算された着地点が、多分そういう感じなんだろうなぁと予測させつつも短編故の見事な切れ味で展開する。
 そして読後感最悪という素晴らしさ。
 作家の初期の作品にはその人の描きたい本質がストレートに出ていることが多いとよく聞きますが、そう思うと『グランド・ミステリー』の頃は随分と優しく?なっていたのね。
 解説によれば著者の第一長編『葦と百合』『虚無への供物』の流れをくむ作品だとか。
 そっちも読んでみたくなっちゃうではありませんか。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする