2015年05月15日

ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判



 えっ、尾野真千子って藤野さんの成長後の役だったわけ!



 予告で、どの役だろうと思っていたのでした。 そんな、野田君の立場は!



 と、原作既読組は同じような感想を持つのではないかしら。 藤野さんが死体を発見する



役になっちゃダメだろ、それでは完全に藤野さんが主役の物語になってしまう(原作では、



スポットの大小はあっても“中学生”全員が主役であるという空気だったはず)。



 そのほうが、映画的にはわかりやすいのかもしれないけれど・・・オーディションで揃えた



という中学生役の子たちが、同じくオーディションで決められた藤野さんの前にかすんで



しまうじゃないか(それでも強烈な印象を残す松子ちゃん役の子はえらいよ。 二人とも、



演技は未経験だそうなのだけど、そういう子たちのほうがむしろ印象深い役を与えられて



いる感じ)。 まぁ、あくまで前篇なので、中学生たちがキャラ立ちするのは後篇で、という



ことなのかもしれないが(すでに片鱗は見えてはいるが。 野田君、ぱっとしなさすぎて



泣きそうになったけど、じわじわといい味が出てきてます)。



   嘘つきは、大人のはじまり。



 1990年のクリスマスの朝、東京は前夜から記録的な大雪に見舞われた。 その日は



終業式、裏門から学校に入ろうとした2年生の藤野涼子(藤野涼子)は同級生の野田健一



(前田航基)とともに、雪の中にほぼ埋まっているクラスメイト柏木卓也(望月歩)を見つけて



しまう。 事件は自殺として判断されるが、柏木くんが前夜、大出俊次(清水尋也)たち不良



グループによって学校の屋上から突き落とされるのを見た、という告発状が送られてくる。



教師・保護者・マスコミがパニックに近い大騒ぎをする中、実際の当事者であるはずの2年



A組の生徒たちは「子供だから」と“守られる”という言葉の影で真実から遠ざけられている、



と感じた藤野涼子は立ち上がる。 法が関知できないというのなら、自分たちの力で真実を



見つけよう、学校で裁判を開こう、と。



 ただ、原作を読んでいない人がこの映画だけ見たら、「どこがミステリーなの?」と思って



しまうかもしれない。 警察も自殺と判断するだけの物的証拠はあり、柏木くんの両親も



納得している。 藤野さんたちだけがヒステリックになっているだけではないのか?、と。



   でも理解を示してくれる先生もいる。

        松重さん、かっこいい!



 中学生たちも数が多すぎて、メインキャラ以外微妙な扱い。 藤野さんの親友の彼女も



本来、藤野さんにいちばんに反対意見を突き付けてくる役どころなのだが(それ故に藤野



さんの気持ちはより固まるわけだが)、普通に藤野さんをバックアップする役になっている



・・・中学生たちの複雑な内面、もっと描いてほしかった。



 それに対して大人たちもこれまた多すぎて、カメオ出演レベルなのでありますが、結構



適材適所というか、モリリン先生役の黒木華がとにかくすごかった。 ある意味、原作の



キャラを飛び越えた説得力(映画としては全体的に背景の説明が足りないので、個人の



性格付けは演技に頼ってしまっている面がある)。それに対する隣人役の市川美和子も



すごかった。 古賀新一のヘビ女シリーズを思い出したのはあたしだけか?、というくらいの



怪演でインパクト十分。 校長先生の小日向さん、佐々木刑事役の田畑智子さんも原作の



イメージ通りというか、それを補ってあまりある適役でした。



   ジャーナリスト役の人もいかにもって感じで。



 ただ、前篇でいちばんのクライマックスが、<後篇予告>というのはいかがなものか。



 そして後篇。 前篇以上に大人の介入は排除され(原作からも更に大人の出番は減らされ



ている)、中学生たちにほぼ任された状態で・・・もしかして、前篇からもっとこの感じでいった



ほうがよかったのか?、と感じてみたり(でもそうなると、大人になった藤野さんたちの回想、



という形もいらなくなるか)。 でも後篇の中学生たちのやりとりは、もっとずっと見ていたい



ような、かつての自分たちの美しくも醜い思春期そのものを思い起こさせられて、ぐっときた



のですが。



   弁護側。 キャストは大概原作を読んだ

    イメージに近かったのであるが、あたしの中では野田くんと、裁判長を務める

    ことになる井上くんがビジュアル的には逆だったかな。



 ガラスの十代な彼らの思春期のひりひりした感覚をしっかり描きたかったのなら、設定は



90年代のままでいいので、それをリアル現代という形で描いたほうがよかったのでは



ないだろうか。 ビッグネーム宮部みゆきの原作をそんなに大きくは変えたくない、という



気持ちがあったのだとしたら、もう原作に負けている。 映画的にしか描けない表現をする



ことに意味があるのに。



 もしかしたら、33人に絞られた一万人オーディションの過程のほうが面白いかもしれない



(ドキュメンタリーとして撮ってくれていたらいいのに)。



 結構な大人の役者を揃えておきながら、あえて<主役は中学生たち>というのなら、特に



脇役になっている彼らにもっとクローズアップしてほしかった。 大出くんをしっかり押さえ



込めるという理由で廷吏を務めたあの彼について説明も紹介も全然なかったもんね。



 学校裁判、という前代未聞の行事(?)をまるで文化祭のように扱う中学生たちの“無垢



なる残酷さ”(これは物語の至るところに出てくるポイントでもあるのだが)こそがいちばんの



サスペンスであると思うのだが・・・回想シーンのおかげで結果的に「いい話」っぽくなって



しまっているのがなんだかな。



 やはり時間が足りないせいか・・・この予算と演出のクオリティが保てるならば、テレビ



ドラマで1クールかけたほうがよかった気がする(NHKなら可能なのでは!)。 そうすれば



もっと、中学生たちに迫れたのに。


posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする