2015年05月10日

ファイアーウォール/ヘニング・マンケル

 ヴァランダーシリーズ8作目ということで・・・読み終わるのがもったいなくて2年越しについに読破。 邦訳本が出る前にケネス・ブラナー主演のドラマ版を見てしまったこともあり、大まかな筋は頭に入っているので間があいても問題なく物語に入っていけるのだが・・・当然のようにドラマ版よりは原作のほうが細かくて深い。
 前作『背後の足音』のショックも抜けていないとは思うけれど、いつも以上にダメダメなクルト・ヴァランダー。 それとも、ほぼ不眠不休の捜査の日々がダメ度の高さの原因か。

  ファイアーウォール1.jpgファイアーウォール2.jpg 原著は1998年刊行。
   邦訳は2012年。 しかし内容はIT世界を扱いながらまったく古びていない。

 それは技術や機械的なことよりも、“ネットワークが世界に張り巡らされたことでどんな地域も世界の中心となりうる”という発想自体が明らかに事実だからでしょう。
 「読み終わるのがもったいない」という理由で、読みかけのまま長らく放っておいたこの本を読もうと思ったのは、今年の東京創元社新刊ラインナップ(予定)にヴァランダーシリーズの新刊があったから。 6月の予定にはまだ載ってなかったので「秋かな?」と思いつつ・・・新しいのは読みたいのだけれど、もうこのシリーズも終わりが近いという背反する気持ちに思い悩むのであった。
 『ファイアーウォール』自体も、未成年の少女によるタクシー運転手殺害事件に端を発した警察小説でありながら(マーティンソンとヴァランダーの関係が悪化するなんて全然予想してなかったよ!)、コンピューター一台で世界のシステムを破壊できるという話でもあるし、基本は推理小説だけどわからないままのことも多く残され、それがとてもリアルで救いがない。 世界は大丈夫なのか、という暗澹たる気持ちになる。
 しかしそれがまた北欧ミステリの醍醐味でもあるし、容易に抜けられない原因でもある。
 ヴァランダーは今回思っている、「若者たちはちゃんとした仕事に就くことができない。 仕事がないのだ。 彼らは必要とされていないだけでなく、歓迎されないのだ。 自分自身の国で」。
 これってスウェーデンのことじゃなくて日本ですか?、と思うのはあたしだけではあるまい。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする