2015年04月15日

ディオールと私/DIOR AND I

 新しいクリエイティブ・ディレクターを迎えた老舗メゾンの、コレクション発表前の舞台裏、というのはファッション・ドキュメンタリーのひとつの定番。 WOWOWでもときどきやっているし、あえて映画館に見に行くこともないかなぁ、と思ったのだけれど、時期が2012年となれば少々話は別。 ラフ・シモンズが迎えられた年、ディオール首脳陣が大決断をした(せざるを得なかった)年ではないか!
 ということで、観てきました。

  ディオールと私P.jpg そのドレスは世界を魅了する。
   Dior新任デザイナーと誇り高きお針子たちのパリ・コレクションまでの8週間

 あたしにとって“ディオール”というブランドのイメージは、ジャン・フランコ・フェレからジョン・ガリアーノ時代のもの(決して買ってなどおりません−というか買えないし)。 先日観た『イヴ・サンローラン』で初代クリスチャン・ディオールのデザインもみたけど、「(ある意味、過剰なまでの)ゴージャスさ」というのがブランドとしてのトータルイメージなのは変化なし。 その当時としては斬新だったんだろうけど(「ニュールック」と呼ばれているわけだし)。 この映画は時折、そんなクリスチャン・ディオールの過去のインタビューがあたかも「アトリエに棲みついた幽霊」のような形でナレーションで入る。 それがタイトルに示した効果なのか?
 映画では当然のように全くまったく触れられていない、ジョン・ガリアーノの解雇以降のどたばたのほうが個人的には興味があったのだが、さすがにディオールとしても封印したい歴史なのであろう。 基本的に真面目そうなラフ・シモンズを主役に据えて、初めてディオールのアトリエをカメラの前に披露するという話題性で、それ以前のイメージを払拭したいのかもな。

  ディオールと私1.jpg が、ディオールの宝はなによりも、実力あるお針子集団なのである。
 ジル・サンダーから右腕のピーターを連れて移籍したラフ・シモンズはオートクチュール未経験。 “ミニマリズムの代表格”と見なされてきた彼のディオールのクリエイティヴ・ディレクター就任はファッション業界ではかなりの冒険(つまりは危惧がある)とみなされていたようである。 でもあたし、彼がやってたときのジル・サンダー、結構好きだったんだよね(勿論、買ってはおりませんぞ)。
 しかしデザイナーはアーティスト、求められてきた仕事以外にできることを内に秘めていなければやっていられないだろうし、未経験だからこそオートクチュールの常識にとらわれない発想ができ、「え、そんなこと、したことないけど」とスタッフを戸惑わせながらも職人魂に火が付き、時間がないと文句は言いつつもラフ・シモンズの要求に技術で応える優雅で厳しいバトルが繰り広げられる。 あぁ、あたしに技術があったなら、こういうところで働いてみたいなぁ!、と思わせるに十分なお仕事映画でもありました。

  ディオールと私3.jpg フィッティングにて。 美しいレースのチュールも容赦なく裾を切られる。
 ただ、<8週間>と期間が区切られている割には映画内での時間の経過がわかりにくく、「時間がない!」という全員の焦りが伝わってこないのは少々残念(通常、新作コレクション発表には半年前後かけるのが通例と言われている)。 ラフ・シモンズのナーバスさだけはものすごく伝わってくるものの、そこは「老舗メゾンをまかされた責任と重圧」によるものと思われるし。 アーティスト特有の気難しさを、彼の右腕であるピーターの気遣いで周囲を和ませる感じがとってもキュートで、こういう人と出会えないと才能あってもブランドを持ってやってはいけないんだろうなぁ、と感じることしきり。

  ディオールと私2.jpg どうにかこぎつける、新作発表会。
 セレブ大集合ではあるが、始まる前のラフ・シモンズの緊張感が観ているこっちにまで伝染するほど(あたしも本番前は緊張する性質なので余計にわかる)。 まぁ、成功したんだからこうして映画にできてるんだろうし、とは思っても、ハラハラしてました。
 で、結局印象に残っているのは、カメラ嫌いで「ショーの後、あいさつに出て行きたくない」と言っていたラフ・シモンズが、ショーのあとのあまりの高揚感に自ら進んであいさつにまわっちゃったことと、ディオールの刺繍の入った白衣を着たお針子さん一人一人が実はとてもおしゃれで、モデル体型ではないけれども白衣の下はみなさんゴージャスだったということ(たとえば、10センチもありそうなピンヒールでミシンを当たり前に踏む、といったような)。 ま、それくらいのお給料を払っていないと、ディオールのアトリエは維持できないということなのであろう。
 ほんとはもっと職人技を見たかったのだが・・・企業秘密の部分もあるのであろう。
 大変ゴージャスな時間だった。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする