2015年04月12日

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密/THE IMITATION



 原題切れました、“THE IMITATION GAME”です。



 『イミテーション・ゲーム』の説明をするとき、「アラン・チューリング博士が主人公で



(エニグマの暗号を解くために、と続けたい)」、と言いかけて「誰ですか、その人」と返して



くる人と、そのまま合槌を打ってのってくれる人と2種類いることが判明。



 えっ、<コンピュータの祖:アラン・チューリング>って一般常識じゃないの?



 ベネディクト・カンバーバッチを知らない人がいる、というよりもそっちの方がショック。



   挑むのは、世界最強の暗号――。



 1939年、第二次世界大戦下のイギリス。 若き天才数学者アラン・チューリング



(ベネディクト・カンバーバッチ)は国策として、「世界最強」と呼ばれていたドイツ軍の



暗号機<エニグマ>を解読するチームに招待される。 彼の高慢な態度は軍上層部の



機嫌を損ねるが、チューリングは世界一の数学者という自負故に暗号解読に進んで



取り組むことに。 独特すぎて不器用(多分、現代ならば高機能自閉症とでも診断される



のかもしれない)な彼はチームの中で孤立、暗号解読の手がかりがつかめない中での



苛立ちもあってメンバー間との衝突も絶えない。 しかし女性ながらクロスワードパズルの



天才ジェーン(キーラ・ナイトレイ)がチームに参加以降(女性なので当時はチームに



大っぴらに参加できず、事務員として採用される)、ジェーンはアランのよき理解者となり、



彼女の橋渡しもあってチームは目的に向かって一丸となっていく・・・という話。



   集められたのはそれぞれのジャンルの天才。

     一度まとまれば、その威力は絶大。



 戦後であるチューリングの晩年、<チーム・エニグマ>時代、アランの少年時代と3つの



時代が入り乱れる構成だけれど、これ以外は考えられない配置。 暗号を解くまでの物語と



思いきや、そうではないところが・・・戦争や国の思惑などの複雑さを感じさせて絶望的な



気持ちになった(あの時代でこうなんだったら、現代や近未来はいったいどうなることやら)。



 ベネディクト・カンバーバッチ、もともと好きな俳優だということもあっていろいろ観ており



ますが(逆か、いろいろ観ているうちに好きになったのか? でもあたしの中では最初から、



『アメイジンググレイス』のピット首相なんですけどね。 その当時は彼の名前がエンド



ロールで読み切れなかったので)、この作品の彼は、今まで観たどの彼とも別。



 限りなく母性愛らしきものに著しく欠けているこのあたしが、このチューリング博士に対して



だけは「守ってあげたい、というか守ってあげなければ!」と思ってしまった。 オスカーは



エディ・レッドメインがとったけど、あたしにはチューリング博士を演じた彼の方がぐっときた。



ほんと、演技に優劣をつけるなんて難しい話。



   真ん中の人、マーク・ストロング。



 マーク・ストロングが出てきたときは『裏切りのサーカス』に続いての競演だわ!(でも



同じシーンあったかしら?)と盛り上がる。 いかにも“イギリス映画”的な地味系キャス



ティングがあたし好みでございました。



 計算機の誕生は、人間が集まってがんばって計算しても時間がかかりすぎるから、



機械に計算させよう、という発想そのものは簡単なものだけど、いざそれを実現させようと



思ったら、しかもその仕組みがわからない者たちに納得させようと思ったら・・・存在しない



ものを作り出すのだから、そのエネルギーと大変さときたら筆舌に尽くしがたい。 そして



いつも立ちはだかるのは予算と時間の壁。 理系の宿命ではあるけれど・・・国の命令で



やらせておいてそれはないだろ、と理不尽さに胸が詰まるよ。



 アランが現代に生まれていれば、ここまで生きづらくはなかったはず。 でもあの時代に



生まれていなければ戦争はもっと長く続いていただろうことも事実。



 運命? 宿命? そんな言葉は便利だけれど、当事者たちにとってはそれどころでは



ない話。 アカデミー賞で脚色賞を受賞した脚本家グレアム・ムーアがスピーチで、「ずっと



他人とは違う自分を受け入れることができなくて苦しんできたけれど、そのおかげでこれを



書くことができた」みたいなことを言っていた。 『世界に一つだけの花』がいくら歌われよう



とも、誰だって人とは違うと他人から指摘され続けるのはいやなもの。 どうやって自分を



受け入れるかに人生の多くの時間を費やすことにもなってしまう、自分ではどうにも



できないことなのに。



   守ってあげられなかった博士、

            この瞬間がどうぞ人生最上のときでありましたように。



 ほんとは多分ものすごく難しい話なんだろうけれど、かなりわかりやすく大胆に噛み砕き



つつ要所ははずさない見事なドラマ性。 あたし、『博士と彼女のセオリー』よりこっちの



ほうがずっと好きで、切ないけど(そこには身を切られるような痛みも確かにあったけど)、



面白かった。



 あぁ、ポスターに「アカデミー賞最有力」と書きたかった配給会社の人の気持ち、わかる



なぁ。 『バードマン』はこれより面白いんだろうな!、と少々八つ当たり。



 多分あたしの今年のベストテン入り、確定。



 映画館の帰りにエレベーターの中で、同じ映画を観たらしき男性二人連れがいた。



 一人が聞いた、「つまりチューリングマシンって、コンピューターのことなんだよね?」



 もう一人が答えた。 「いや、理想的なコンピューターを、チューリングマシンというんだよ」



 彼の志は、今も引き継がれていると信じたい。


posted by かしこん at 17:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする