2015年04月10日

博士と彼女のセオリー/THE THEORY OF EVERYTHING



 ホーキング博士の宇宙論についてはそれなりに知ってはいても、ご本人がいつから



ALSなのかということにはまったく興味を覚えていなかったあたし。 車椅子込みで



博士と思っていたのであろう。 そんなわけで、奥様の回想録の映画化であるこの作品、



びっくりするほどストレートにラブストーリーとして始まるのであった。



   生きる希望をつないだのは、無限の愛。



 1963年、ケンブリッジ大学理論物理学博士課程にいたスティーヴン・ホーキング



(エディ・レッドメイン)は博士論文のテーマを決めかねていた。 そんなある日、大学の



パーティーで文学部のジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と運命的に出会い恋に落ちるが、



間もなく彼はALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し余命は2年だと宣告されてしまう・・・



という話。



 パーティーにおいて、理系男子らしく自分の興味のある話しかしない、電話番号を渡して



くれたのは彼女からで、その番号が書かれた紙を眺めてにやにやしてるだけ(早く電話



しなさい!)。 そうこうするうちに大学近くのカフェで彼女が別の男子学生とお茶している



ところに出くわし(他の友達もいたけど)、いきなり空気を読まずにその場に割って入ると



いう・・・“いわゆる理系男子”と呼ばれる人々の特性は結構昔から変わっていないらしい



・・・。 そんな人に惹かれてしまった女性は、自分の選択に責任を持つしかないんですね、



という話でもあるかと(すべからく恋愛というものはそういうものでもあるかと)。



   明らかにお互い“一目惚れ”演出が

             施されていたが、現実もそうだったんだろうか。



 もっと博士の宇宙論に踏み込んでくるのかと思った(一人の人間の中にも宇宙はあり、



家庭もまたひとつの宇宙である、という解釈は面白いけど)。



 「余命はあと2年です」と宣告されたあと、明らかに2年以上が比較的あっさりと過ぎて



いくように描かれているのはちょっと納得がいかず。 勿論、そこには二人の血の滲む



ような努力があってのことなんだろうけれど、医者が驚くシーンぐらい入れておいて



ほしかった(時間の経過が特定の長さとして表現されないのは、博士の理論に対応させて



いるのかもしれないのだが)。



 ALSが医学界でもしっかり認知されていない時代、ということもあるかもしれないのだが



・・・この映画だけではALSを全部理解できない。 入口として関心を持ってほしい、という



ことなのかもしれない。



 確かにラブストーリーではあるものの、その愛は一筋縄ではいかないというか、“純愛”と



いう一般的イメージではくくれない。 この場合、愛情はむしろ自己実現の足枷となる。



日々の生活の中で、自分の博士論文を仕上げたい奥様の不意に見せる表情の冷え冷えと



した感じがあたしの心を凍らせた。 “生活”の重さは運命の愛までもかすませるのだ!



 まだ存命の人の実話をモデルとして、ここまで赤裸々に描いちゃっていいんですか?!、



と別の意味でハラハラ。



   ジェーンの美しさと意志の強さが、

             この場合ある種の悲壮さを伴う。



 人間関係は決して美しくない。 ある一瞬は確かに美しくとも、それが永遠に続くわけでは



ない。 それでもあえて続けるために選んだ方法、それが<博士と彼女のセオリー>という



ことなのだろうか。



 時間の経過とともに動かなくなっていく自分の身体を厭い、時間が進まないことを願う



スティーヴン。 夫と子供たちの世話をし、博士論文も完成させたい・学者としての自分の



キャリアもほしいジェーンは時間がいくらあっても足りない。 背反する二人を繋ぐために、



一人の男性を関係に引き込んでバランスを保とうとするとは。



 そこが彼らの非凡なところであるのだろうな、と感じつつ、結局二人は25年後に離婚する



というのは・・・なんだかなぁ、というか現実の厳しさを感じさせます。



 美しくも一定ではない時間の経過を表現する映像は独特で、リアルなときもあり幻想的な



ときもある。 すごいなぁ、とは思えども共感しきれなかったので、どうもあたしの感想は



微妙なのである。 演技の技術面では素晴らしいものを見せてもらったとは思うものの



(特に博士の苦悩などは痛々しいほどなのだが)、あまり大きく心は揺さぶられなかった。



 うーむ、もう何年かたってからまた観直せば違う感想になるだろうか・・・。



 エンドロールの映像が、宇宙と思わせつつ細胞レベルの人体(もしくはその逆)と観る



者によって解釈が変わるようにつくってあるのが美しかった。 それがホーキング博士の



今も続く夢だと感じられたから。 映画の目指しているものはとても前向きなテーマなので、



“希望”の想いが強すぎてその途中にあった様々な負の感情が薄れてしまったせいかも



しれない。



 つまりあたしはマイナスの感情の方に惹かれるのか?


posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする