2015年03月18日

フォックスキャッチャー/FOXCATCHER

 今年のマーク・ラファロ映画第2弾。 この映画でマーク・ラファロはアカデミー賞助演男優賞にノミネートされましたが(オスカーをとったのは『セッション』J・K・シモンズ)、まさに2・3番手でいい味を出す俳優の本領発揮(そういうところもあたし好みです)。
 ですが、今回は彼が出ていると知っていなければ、ぱっと見わからなかったかも・・・ビジュアルもかなり違うし、喋り方や声まで違う感じ。 実在の人物がモデルだから、メインキャストのみなさん、かなり似せてきているのだろうか(スティーヴ・カレルはモデルの家族? 本人?から批判を受けるほど似ているらしいという噂)。

  フォックスキャッチャーP.jpg なぜ大財閥の御曹司は、オリンピックの金メダリストを殺したのか?

 オリンピックレスリング競技のメダリストのマーク・シュルツ(チャニング・テイタム)は、大学のチームでコーチをしていたが、予算がないと解雇される。 金メダリストなのにまったく尊敬されない日々に鬱屈していたところに追い打ちがかかる。 そんなとき、デュポン財閥の御曹司である大富豪ジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)から、ソウルオリンピックに向けたレスリングチーム結成プロジェクト<フォックスキャッチャー>に勧誘される。 渡りに船と申し出を受けるマークだが、ジョン・デュポンもまたレスリングという競技を母親に認めてもらえず、金にあかして専用練習場をつくって選手を集めてコーチとしての栄誉を得たいと考えていた。 「認められたい」、という欲求がジョン・デュポンとマークを結びつけ、いささか歪んだ友情以上の関係が築かれる。

  フォックスキャッチャー1.jpg 最初はね、二人の関係はとてもよかったよ・・・。
 マークとともに金メダリストとなった兄のデイヴ(マーク・ラファロ)は競技人生に未練もなく、家族とともに暮らすことがいちばんのしあわせだったが、弟の苦境を知り、不本意ながらも<フォックスキャッチャー>に参加することに。 競技者としても、コーチとしても、才能があるのはデイヴのほう。 それを思い知らされ、マークは自棄になり(しかしそれを助けてくれるのもまた兄)、マークとの絆が壊れたとも感じたジョン・デュポンの屈折した精神は次第に狂気をはらんでいくことになる。
 男の嫉妬はリアルに怖いよ、という話であります。
 筋肉バカのイメージが強いチャニング・テイタムが、筋肉バカなんだけど屈折した心を無表情〜不機嫌・怒りといったマイナスの感情を顔であますところなく表現。 筋肉バカは明るくないとね、と思わせるよ(ちょっと付き合うの大変そうだし)。 実際の事件がモデル、と言われても事件のことはまったく知らなかったので、ジョン・デュポンが誰かを殺すことはポスターからわかっても、そのタイミングがいつなのか、誰を殺すのかまったくわからず、だから映画のあらゆるシークエンスがいつ<事件>につながるのかとはらはら。 ここの緊張感もただ事ではなかった(事件を知っている人にとっては、ただ事実を追っていったものにすぎないのかもしれないが)。

  フォックスキャッチャー3.jpg 特殊メイクでこれまでのイメージが全然ないスティーヴ・カレルがとにかく怖い。
 そんな二人の間に立つマーク・ラファロは普通の人で、その普通さが痛々しくて、ここ3人(ときには2人同士)の演技合戦は見物であり、ほぼ見どころはそれがすべて、といってもいいかもしれない。 ちょっとしたことがきっかけで、3人の関係性や相手への感情がくるくると変わるから。
 レスリングというスポーツが題材ですが、知識がなくてもわかるようになっています(そのへんは『マネーボール』の監督ベネット・ミラー。 あれも野球の知識がなくても楽しめたし)。 マークとデイヴの兄弟の練習風景はかなり自然で、相当練習したんだろうな、と感じた。
 おカネが得られないことで充たされなさを否応なく突きつけられるマークと、いくらでもお金があるのに(敷地が南北戦争跡地だからと古い戦車なども集めまくる)それでも満たされないジョン・デュポン。 正反対なのに同じ気持ちを共有する二人をいささか同性愛的関係に描いているのが面白かった(ここは事実に反するとモデルの人は批判しているらしい)。 でも匂わせてるだけだし、事実を知らないあたしとしては「そういう解釈もあり得るよな」と納得しちゃいましたが。 フォックスキャッチャー:キツネ狩り、というのも、“貴族の遊び”というダブルミーニングだろうし。

  フォックスキャッチャー4.jpg お兄さん、ひたすらいい人だ・・・。
 登場人物はそれほど多くないのに、「なにが起こるのか一寸先がわからない」という緊張感と、合間に襲ってくる空虚感。 大変疲れるけど、見ごたえあり。
 でも、おカネと才能はほどほどに、という教訓もあり、かな。

ラベル:外国映画 映画館
posted by かしこん at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする