2015年03月15日

渇いた季節/ピーター・ロビンスン

 長々と読んでまいりましたが(文庫で720ページ強)、ついに読み終える時を迎えてしまいました。 主席警部アラン・バンクスシリーズ10作目にして、アンソニー賞・バリー賞ダブル受賞作。 個人的には、『水曜日の子供』『誰もが戻れない』を飛ばしてしまったことが微妙に心残り(とか言いつつシリーズ12作目『余波』を先に読んでしまっているわけで、もはやあまり意味のない悔恨だが)。
 猛暑に襲われたある夏、干上がった貯水池から半世紀前に沈んだ村が出現。
 その村の小屋から、惨殺された痕跡がある女性の白骨死体が発見される。 主席警部アラン・バンクスはアニー・カボット部長刑事の手を借りつつ、はるか時の向こうで起こった事件の真相に迫ろうとする。

  バンクス09渇いた季節.jpg 訳者の野の水生さんはこれまでの訳者幸田敦子さんと同一人物。 だから訳に違和感もなく、バンクス世界をいちばん理解している感が。

 バンクスたちが調査する現代と、事件が起こるまでの1941年からの手記が交互に。
 だから長くなっているのだが、過去パートだけでも独立した物語になるのがすごい。
 それを時間というフィルターをかけて、過去の選択に苦しむ人に救済を与えるようでいて、それでも苦しみ続ける人の姿を描く、というある意味、殺人事件より残酷な話であった。
 最近、第二次大戦時下のイギリスの話を読むことが続いている(意図したわけではなく、たまたま)。 そうすると共通の用語が出てくるのでいろいろ覚える。 でもこの作品には「日本軍の捕虜となり、身体的にも精神的にもひどい目にあわされた復員兵」が出てきて、なんとも言えない気分になった(フィクションなので、その真偽をうんぬんする気はない。 当時のヨーロッパから見れば日本など知名度もなく明確なイメージも伝わっていなく、とにかく不気味な存在だったというのがわかるだけで十分かもしれない)。 どんな形であれ遺恨を残すんだから、戦争はほんとやっちゃまずい。 21世紀以降の人類は、かつてより賢くなっているといいのだが・・・。
 ミステリと歴史が共存する小説というのもまた、エンターテイメント以上を志向するミステリのひとつの到達点よね〜。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 17:50| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする