ドラマ化の発表前に予約したつもりだったのに、まわってきたのはつい数日前。
いったい、何ヶ月待ったのだろうか。 約一年?
そしてカウンターでは『ソロモンの偽証』について問い合わせている人がおり、「文庫は
最近出たばかりなので、こちらの大きい本(ハードカバー)で予約された方が早くまわって
きますよ」と助言を受けていた。 文庫でも全6冊だもんね、買うのもチャレンジだ。 先に
読んでおいてよかった。
そんなわけで、あたしの読書キャリアとしては宮部作品としては初めて先にドラマを見て
しまったので、バスジャック場面は役者のみなさんの顔がちらついて困った。 不意に、
地の文が小泉光太郎の声で聞こえてきたりして(本文は杉村三郎さんの一人称だから)
びっくりしたり。 それはそれですごいことなんだけれど、小説の中の杉村三郎さんは
あたしよりも年上のイメージなので、困惑する。
先に映像で観てしまうと、そのインパクトってなかなか消えない。

実はかなりおそろしい意味だった。
そのせいか、『誰か』や『名もなき毒』のときのような一気読みよりは勢いが落ちたかも。
先がわかっているせいもあるし、ドラマとの違いをつい確認してしまったせいもあるでしょう。
まぁ、<探偵・杉村三郎>が誕生するためにはこの“通過儀礼”は必要だったのだろうと
思うけれど・・・なんとも後味はよろしくない。 贅沢を当然と思って育ってきたお嬢様に、
中途半端な自我が目覚めるとかなりめんどくさい、ということがわかった感じ、というのが
結論とは・・・シリーズ物であるが故、「悪は、伝染する」というせっかくのテーマがぼやけて
しまったような気がするのは残念か。
ドラマは続く方向性で終わったので、きっと原作のほうも<探偵・杉村三郎シリーズ>と
して続いてくれるんだろうなぁ、と期待しつつ、痛みを乗り越えて、かつ自由をかみしめて
いる彼との再会を待ちたい。