2014年12月11日

ニンフォマニアック Vol.1&2/NYMPHOMANIAC:VOL.T&U

 ラース・フォン・トリアーにはこれまでにも痛い目にあわされてきたので、「今度こそ!」みたいな気持ちになり、あたかも仇打ちのような気分で新作を追いかけてしまう。
 しかし今回、<色情狂と自認する女性の物語>と紹介されちゃったら抵抗がないわけではないのだが、結局2週にわけて前・後編を見てしまいましたよ(意外に、というか女性の一人客が多くてうれしかった)。
 窓から見える裏路地に降りしきる雪、しかし無音という画面がしばらく続き、突然ほとばしるエレキギターの音。 ハードロック?!、ラース・フォン・トリアーがハードロック使う?!、ということにまずびっくり(冒頭からね)。 これまでの作品とはちょっと違うぞ、と言われている感じ。 どこか『ドッグヴィル』を思わせるセット感の強い裏路地を画面は動きまわり、ボロ布のように倒れている女性をあたかも死体のように映し出す。 結構ここまで長いですが、『アンチクライスト』『メランコリア』ほどではなかったな〜(ついオープニングに仕掛けがあるのではないかと身構えるあたし)。
 そこを通りがかりの男セリグマン(ステラン・スカルスガルド)に助けられ、彼の家でお茶を振る舞われ、意識をはっきりさせたジョー(シャルロット・ゲンズブール)は、彼を相手に「何故このような状態になったのか」を彼女の幼少期から遡って語り始める・・・という話。

  ニンフォマニアックP1.jpg 愛なんて、教わっていない。

 ジョーのナンパ話に対し、大真面目に魚釣りとの類似性を語るセリグマン。 思わず『娘たちのための狩りと釣りの手引き』を思い出してしまったのはあたしだけ?
 自虐的に、バカにしてほしくて過去を語るジョーなのに、すべてを学術的視点に近い形で受け止めようとするセリグマンの姿勢にあたしは大変好感を覚え。 知的好奇心のなせる技というか、知りたい気持ちを追及するが故にやたら真剣になるあたり、ステラン・スカルスガルドが好きなので久々に彼にぴったりというか、不器用なキュートさを醸し出す役柄にあたったよ!、というよろこびがありました。
 なので、ジョーの若き日を体現するステイシー・マーティンが脱ぐまくって文字通り身体を張っているものの、エロさよりはユーモアの度合いのほうが強くて、「どうしたラース、病気、治ったの?」と思ってしまったり。 人間嫌いで過度のうつを発症していた人の手になるとは思えないおおらかさと力強さ。 過去の自己作品のパロディまで入れてくるし(それは過去の自分を肯定できているということか?)。 ということはジョーの遍歴は、実は監督本人の映画遍歴の投影なのかもしれず。

  ニンフォマニアック2.jpeg 1と2を通じて、実質的な主役は彼女(ステイシー・マーティン)であるような気がする。
 セリグマン宅でのジョーとセリグマンの会話は舞台劇の趣き、回想シーン(というか二人の言葉がイメージ映像化される形)はヨーロッパ映画の感じ。 でも音楽はちょっとアメリカ、というごちゃ混ぜ感も悪くなかった。
 あ、Vol.1の続きがそのままVol.2なので(2で1のダイジェスト的なものは一切ない)、パワーのある方は引き続き見てください(あたしはスケジュール的な問題があって2を翌週に見ましたけど、映画館では1のあとに2を続けて上映していたので、一日で見た人たちがどちらの日も何人かいらっしゃいました)。
 で、実はなかなかの豪華キャストでして。
 トリアー組常連さんたちに加えて、意外な新顔も!

  ニンフォマニアックP2.jpg 性に目覚め、性に溺れ、愛を忘れた。

 まさかシャイア・ラブーフをここで見ようとは! 一時期プライベートでの素行不良でいくつかの企画から外されたとか噂があったけど、その間ここで修行(?)して心を入れ替えたんですかね? ジョーにとっての“運命の相手”ジェロームというかなり重要な役柄(勿論、彼もバンバン身体張ってます)。
 ジェイミー・ベルは「ぎゃー、なにやってんの!」と叫びたくなるような役柄で・・・でもあの名作『ディア・ウェンディ』の脚本はラース・フォン・トリアーだったからつながりがないわけではないのよね・・・と納得。
 いちばん不思議だったのは、ジョーの父親役でクリスチャン・スレーターが出ていたことでした(なんかすごく久し振りに見たかも!)。
 まぁ、エログロてんこ盛りで相変わらず悪趣味要素はあるものの、珍しく美しく物語が閉まるんじゃない?、と期待したあたしがバカでした。 閉ざされた白い扉が不自然なほど長く映され、「やめてー、そこ、扉、開いちゃダメ〜!」というあたしの心の叫びもむなしく扉は開き、そうなるような気はしていたけどそうなってほしくない怒濤の終幕へと。
 ・・・まぁ、それでこそラース・フォン・トリアーなんですけど。
 ステラン・スカルスガルド、当たり役!、と思っていただけにダメージは大きい・・・。
 結局、あたしはまた負けを抱えたような気がする。

ラベル:外国映画 映画館
posted by かしこん at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする