2014年12月05日

ペンギン、日本人と出会う/川端裕人

 仕事帰りの寄り道がしやすくなって、三宮図書館を利用することが最近増えた。
 神戸市内には中央図書館の他、各区に分館という形で図書館があるのだけれど、それぞれに個性・特徴がある。 スペースや客層の問題なのだろうけれど。 しかし、神戸市の図書館は日本十進分類表を採用していないので、本のジャンルが探しにくい。
 三宮図書館で<エッセイ・ルポルタージュ>と分類された棚を見てもほぼエッセイしかなく、「ルポはどこじゃ!」とうろうろする羽目になり、<社会問題>コーナーで発見したりすることに。
 だけど、そんなうろうろの結果、この本を見つけました。

  ペンギン、日本人と出会う.jpeg 表紙・背表紙・裏表紙・折口へと、日本の水族館にいるペンギンが大きい順に並んでおります。 表紙は左から、エンペラーペンギン、キングペンギン、アデリーペンギン、ヒゲペンギン。

 あたしはペンギンが結構好きですが、この感覚って全世界共通ってわけじゃないのね!、と思い知らされたのがこの本を読みたかったきっかけ(著者の作品は結構読んでいるので、この本の存在も結構前から知っていたのですが、これまで機会がなくて)。
 出版されたのが2001年なのでこれに出てくる最新情報は少し古いですが、ペンギンが日本にやってきた歴史などは変わりようがないので、いま読んでも全然問題ない(というか、野生のフンボルトペンギンの問題など出版当時と比べてあまり変わっていないかも・・・という哀しい事情もありです)。
 その昔、南氷洋に向かった捕鯨船が“南極土産”としてペンギンを持ち帰ったことが日本の動物園・水族館での飼育のはじまりだったなんて知らなかった(飼育のための試行錯誤の中、死んでいくペンギンたちや、昔だから仕方ないんだろうけど南極に行った一部の人々によるペンギンへの蛮行について記された章には読んでいて涙がにじんでしまった)。
 でもそうよね、南半球にしか野生のペンギンはいないんだから、日本にいるペンギンたちは必ず<よそから持ち込まれたもの>。
 そんな当然のことに言われるまで気づかないほど、ペンギンはどの水族館にもいる“身近な生き物”のイメージ。 で、好きなので生態とかいろいろ調べてしまっていたのだけれど、そんな人たちが多いのは日本人だけというか、世界的には少数派らしい・・・それにびっくり。 『皇帝ペンギン』というドキュメンタリー映画がかつて大ヒットしましたが、確かに映像は素晴らしかったけど内容的には新しいことないなぁ、という印象を受けたんだけど・・・つまり世界的にはあれは<知られざる世界>だったってこと?!
 日本人がペンギンを好きなのは、かわいいもの好きのキャラクター文化にぴったりはまる生き物だから、ということなんだろうけど、知れば知るほど奥が深い生き物である、というのもポイントだと思います。 だから長崎水族館のように“種の保存”を目的にした施設があるし、野生のペンギンの保護に関して日本がイニシアティブを!、と外国の人にいわれるのも仕方がないくらい日本はペンギン飼育充実国なのです(現在、存在するペンギン18種類のうち、12種類が日本にいる)。 その分、日本人は自分たちの身近にいる生き物たちに対して若干無頓着なところはありますけどね。
 イルカ・クジラに神経をとがらせるグリーンピースな方々、日本人がそうやって野生動物の保護に貢献していることをちょっと評価してほしいな・・・でもペンギンは鳥だから、哺乳類であるイルカ・クジラ類とは違うと言われてしまうんだろうか。
 あ、本書は勿論「日本人、がんばってる!」という内容だけじゃなくて、動物園・水族館が抱える原罪とか、「かわいい」で終わってちゃダメとか、野生動物としてのペンギンの姿をしっかり見つめよう、という提言がしっかり組み込まれており、大変バランスのよい一冊になっていると思います。
 でも文庫になってないし、品切れ・重版未定(事実上絶版)なんだな・・・ちょっとかなしい。

posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする