2014年10月27日

ファーナス 訣別の朝/OUT OF THE FURNACE

 チラシや予告を見て、「おぉ、豪華キャスト!」とあたしは盛り上がったものの、同じように感じる人は少なかったのか、映画館のその時間には他に客がいなかった・・・な、なんで。 確かに救いのない、重苦しい話ではあるけどさ。 オープニングから理不尽な暴力が横行していることが示唆されているし。

  ファーナスP.jpg 運命を撃ち破る。

 舞台はペンシルバニア州の田舎町ブラドック。 町を支える唯一の産業は古びた鉄鋼所(“ファーナス”は“溶鉱炉”の意)で、男たちはそこで働くか、外へ出ようともがいてドロップアウトするかどちらか、みたいな閉塞感が漂っている。
 この町で生まれ育ったラッセル(クリスチャン・ベイル)は当然のように鉄鋼所で働き、老いた父の世話をしている。 弟ロドニー(ケイシー・アフレック)はイラク戦争から戻ってきたが、トラウマ故に日常生活が送れずに酒びたり。 ラッセルはどうにか弟を助けたいと願うものの、何もできないままある日、予想外の事件が起きて・・・という話。
 冒頭から理不尽な暴力が、と書いたが、この映画で描かれるのは「物事が常によくない方向へ進む」というすさまじい一例というか、それだからこその緊張感がこっちを息苦しくさせるのである。 華やかなのは都市部だけで、アメリカの地方は今も西部劇の時代と同じ感覚が息づいている?
 半ばあたりで酒場で流れているニュースが「オバマを大統領に」と言っているシーンがあるのだが、外国から見たらアメリカはいい方向に変化するのでは?という期待に満ちていたように思うあの時期ですらも、アメリカ国内の田舎ではまったく何も変わらなかったのだという恐るべきむなしさに襲われた。 地方は疲弊しているのだ、どこの国でも、ずーっと。

  ファーナス4.jpg ケーシー・アフレック、ベン・アフレックとあまり似てないと思っていたけど、斜め下から見る後ろ姿から横顔あたりの角度がすごく似てました。 でもこの映画での兄役はクリスチャン・ベイルで正解。

 死にかけた父を見守り、弟を陰ながら助け、酒場の主で金貸し(ウィレム・デフォー)から遠ざけようとした結果がラッセルの人生を狂わせ、恋人(ゾーイ・サルダナ)も失う。 そして彼がいない時期に弟は更に危険な坂を自ら進んで転げ落ちており、もう後には引けない状態に。 なるべくしてなった、ともいえるのだが、そこに行くまでに何か手はなかったのか・・・と考えずにはいられなかった。 理不尽な暴力の代表としての存在ウディ・ハレルソンと、警官なのにぱっとしない(ある意味、役立たずというか・・・)フォレスト・ウィテカーの無力さがラッセルをより孤独に、絶望に追い込んでいくのだが。

  ファーナス6.jpg 陰の主役ともいえる鉄鋼所。

 テーマソングはパール・ジャム“Release”というあたりに、ラッセルの生き方・選択を肯定する流れを感じてしまい、「アメリカ人、こういうの大好きなんだな・・・」と思ってしまった(製作総指揮にはレオナルド・ディカプリオやリドリー・スコットが名を連ねています)。
 つきつめれば所謂<ヴィジランテ映画>なので、その気持ちはあたしもとてもよくわかるのですが、復讐したとてまったく爽快感がない・・・勿論それは“正しい”のですが・・・あぁ、救いがない。
 しかしそれ故、出演者の気合の入りようというか演技面は素晴らしく見ごたえが。
 でもすごく、見終わって疲れを感じたのも確かなのだった。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 02:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする