2014年10月12日

ハイラム・ホリデーの大冒険/ポール・ギャリコ

 東江一紀さんに敬意を表して、彼が訳したものでまだ読んでないものがなかっただろうか・・・と図書館で検索。 そしてこれを発見。 あぁ、まず表紙から気になってたやつで、実は文庫化を待っていたのだが。

  ハイラムホリデーの大冒険1.jpg なんとなく、『タンタン』ぽいではないですか。

 タンタン(とスノーウィ)が世界(ときには海底や月まで)を股にかける少年記者ならば、ハイラム・ホリデーは同じ新聞社勤務なれど長年校正係を務めてきた40代のおじさん。 原稿チェックの過程で重要なミスに気付き、会社を救ったご褒美として、ためしにやってみるかと提示された“ヨーロッパ特派員”という仕事に飛びついたハイラムは、行く先々で事件に巻き込まれ・・・という、ストーリーもなんとなく<大人向けタンタン>といった趣き。
 しかし荒唐無稽ではなく、当時のヨーロッパ情勢がしっかりと背景に使われつつもユーモラスな語り口でその深刻さを深刻すぎないように伝える心配り。 「これ、児童書としても置けるんじゃない?!」と思わせるテンポのいい平易な文章は東江さんマジックだけど、「このへんはちょっと・・・小学校高学年以上かなぁ」という部分も。

  ハイラムホリデーの大冒険2.jpg オーストリアの王子を助けます。

 ナチスの台頭によるファシズムの広がりを恐れるハイラムはアメリカ人。 現地で友人となったオーストリア人から「オーストリアはずっと帝政の国。 たとえ50年ナチスに支配されようとも、我々は帝政を忘れない」みたいなことを言われてヨーロッパの歴史の長さというか、自分の人生以上の時間の尺度でモノを考えることを知る。 多分そのあたりが、アメリカ人がヨーロッパに憧れる理由なんでしょうね。 そして望んで高い位の家柄に生まれたわけではないのに、パワーゲームに巻き込まれる一部の王族の方々にとってアメリカは自由の国に映る。 その象徴がハイラム・ホリデー。 でも、それって白人だからよね・・・有色人種視点はここにはなかったわ。
 作者はよほどナチスを警戒していたのか、のちにファシズムが吹き荒れるという意味では同じイタリア人を最終的には騎士道精神の持ち主と好意的に描きつつ、徹頭徹尾ナチスを悪役に配置。 こういう作品を1942年ぐらいに書いていたというのだから、いろんな意味で情報を多く掴んでいる方が勝ちになるわけですね。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 15:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする