2014年10月06日

イヴ・サンローラン/YVES SAINT LAURENT

 女性客多し! というかとても込んでるじゃないか、ということにびっくり(あたしが開場時間ぎりぎりに映画館に着いたせいもある)。 メンバーサービスデイなのに、1800円払っている人も結構いた。 しかもそこそこシニアに近い感じの方々。 それだけ、イヴ・サンローラン人気は息が長いということか。
 イヴ・サンローランの天才としての、モード界の貴公子と呼ばれてしまったが故の苦悩も勿論描かれてはいますが、それを見ているあたしは凡人なので、サンローランの生涯のパートナーとなるピエール・ベルジュの苦悩に満ちた愛情の方に共感してしまいました。

  イヴサンローラン映画P.jpg あなたは目撃する。 永遠のエレガンス誕生の瞬間を。

 サンローランがディオールのアトリエに入ったあたりから映画はスタート。 自分のセクシャリティに悩む気配はかなり冒頭から色濃い。
 1953年、クリスチャン・ディオールが亡くなり、巨大メゾンのデザイン面での若き後継者として最初のコレクションは大成功、一躍ファッショ界の寵児に祭り上げられるイヴ。 しかし常に前回を越えなければならないプレッシャーもあり、アルジェリア戦線の兵役に呼ばれたけれど彼の精神は戦場に耐えられるわけもなく。 名門の重圧も彼には苦痛で、ついには自分の名前のブランドを立ち上げる。 そんな彼の傍らには、常にピエール・ベルジェがいた・・・という話。

  イヴサンローラン3.jpg ランウェイの内側でも、オフィスでも、プライベートでも、ピエールはイヴを支え続ける、どんなことがあっても。
 サンローランの最初のディオールコレクションは、「あ、今でも着られる!」という正統派クラシックラインと色褪せないモダンさが同居していて、「ステキ〜」と見とれる(イヴ・サンローラン財団が公式バックアップなので保存されているコレクションをそのまま使ったり、パターンから起こして忠実に作り直した衣装がごっそり)。
 ランウェイの移り変わりも見られて楽しい。 最初の頃はサロンみたいな部屋で、モデルが番号札を持って出てくるという、今では考えられない素朴さである(そういえば前に見たココ・シャネルの映画でもそうだったなぁ)。
 あたしにとってイヴ・サンローランは、ハイヒールの中敷きに書かれたロゴが多分いちばん最初の記憶。 初めて、「わっ、サンローラン、素敵! ほしい!」と思ったのは復刻版のモンドリアン・ルックが紹介されたとき(勿論、買えません)。 サンローラン復調のきっかけがモンドリアン・ルックだったと知って、うれしかったですね。
 かなり早い段階で日本人バイヤーがついていたのも、イヴ・サンローランが日本で人気の理由なのかも。 バブル時代を謳歌した方々にとってとても馴染みのブランドだったのでは(モデルが日本人と中国人の区別もついてない発言がありましたが、イヴ・サンローラン本人は顧客を日本人と認識していたし)。

  イヴサンローラン4.jpg YSLブランド設立についてきた、ディオール時代の仲間たちと。
 たとえば、ベルナール・ブュフェと友人だったの!、といった意外な交遊関係に驚愕。
 ハイファッションはアートだと思っている割に、画家たちと同時代であることがあたしには結び付いていなかった。 年表をつくらないといけないかも・・・。
 それにしても・・・フランス人だからか、芸術家だからか、愛憎劇の激しさがただごとではない。 サンローランの投げる自分勝手で強引だけど絶対的な愛情を受け止めてしまう、ピエールはすごい。 よくイヴを捨てなかった、すごい!、と心から賞賛したい気持ち(それを思えば『海を感じる時』はまだまだエゴがぶつかり合いすぎて未熟度が痛々しい)。
 ピエールには投げ出せない“仕事”もあったからかもしれないけど。
 でも、「今は他の人を愛している。 でも、僕の生涯の相手は君だ」なんて一見身勝手な台詞を受け入れるのは相当の想いがないと無理でしょ。 しかし相手は精神的にあやうい要素を持っているのに麻薬にもへらへら手を出しちゃうし、憎まれ役を買ってでもイヴを現実に引き留めるピエールの度量に憧れました。 でも、イヴにとってはそんなピエールの愛情が重く感じることもあり、あえて彼の気持ちが離れないか確かめるために無茶をしているように感じられるところもあり・・・安息とは程遠い関係だからこそ離れられない、とか?
 映画は1976年の“バレエ・リュス”コレクションをグランドフィナーレ的に扱う。
 そう思えばイヴ・サンローラン本人のデザイナーとしてのピークは長いものではなかったのかもしれない。 でも、歴史に残る一着があれば、デザイナーとしては十分なのかも。
 とてもきらびやかでゴージャスで、けれどとても息苦しい、そんな映画だった。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 02:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする