2014年07月05日

グランド・ブダペスト・ホテル/THE GRAND BUDAPEST HOTEL



 ウェス・アンダーソン監督作品では、個人的に 『ダージリン急行』が大好き。 でも、



どの作品もテーマというか描きたいものはいつも同じなんだよなぁ、と感じさせる監督



でもある。 それが作家性が強いということなんだろう。



 『グランド・ブダペスト・ホテル』はウェス・アンダーソン映画の常連プラスあたし好みの



実力派俳優総出演!、といった趣きで、こりゃ見るしかないぞ、という気がしていたのだが



・・・もしかして、ウェス・アンダーソン現時点での最高傑作じゃない?



   ホテルには、謎がある。 お客様にはもっと、

     謎がある。 当ホテルの“伝説のコンシェルジュ”が挑みます。



 もともと彼の映画には箱庭感(登場人物たちを中心とした世界だけが描かれている)が



あったけど、特にこれは最強! そしてそれが面白さを補強する。



 現代・60年代・30年代と時間が遡り、最後にまた戻ってくる構成もまた美しい(とはいえ、



舞台は架空のヨーロッパなんだけど)。 トム・ウィルキンソン、ジュード・ロウ、F・マーリー・



エイブラハムとナレーション上手の方々によるリレーがまた素敵。



 特にレイフ・ファインズは、あたかも『王様のレストラン』における伝説のギャルソン・



松本幸四郎のようなきびきびとした優美さで高級ホテルの有能なコンシェルジュを演じて



おり(人間的には結構問題ありなのも楽しい)、見ていてニヤニヤしてしまうこと請け合い。



 もともとの始まりは1932年。 高級ホテルとしての評判をほしいままにしていたグランド・



ブダペスト・ホテルは名コンシェルジュであるグスタヴ・H(レイフ・ファインズ)の力でその



評判を維持していたといっても過言ではなかった。 彼の信条は<究極のおもてなし>。



彼の勤務態度に感銘を受けたベルボーイ見習のゼロ(トニー・レヴォロリ)とも信頼の絆で



結ばれていった矢先、常連客のマダムD(ティルダ・スウィントン)が殺され、遺産相続



争いに巻き込まれてしまったことでグスタヴはマダムD殺害犯として指名手配されてしまう。



身の潔白とホテルの威信を守るため、グスタヴとゼロの手掛かりを追いながらの逃走劇が



始まる。



   ある種の疑似父子関係が生まれて。



 マダムDの執事がマチュー・アマルリックだったり、レア・セドゥが数シーンだけ登場の



メイドとか、キャスト豪華すぎでいちいち盛り上がる!



 最近また映画に出るようになってきたジェフ・ゴールドブラム、完全に悪役を楽しんでいる



ウィレム・デフォー、わかりやすすぎる敵役エイドリアン・ブロディ、ナチス的将校ながら



人間味あふれるエドワード・ノートン、出番少なっ!のジェイソン・シュワルツマン、何故



その役?のハーヴェイ・カイテル。 勿論お約束のビル・マーレイ&オーウェン・ウィルソンも



チョイ役ながら出ています。 メイクのせいでゼロの彼女アガサがシアーシャ・ローナンとは



すぐに気づけず。



   芸達者たちのやりとりは、それだけで面白い。



 ティルダ・スウィントンはマダムDになるためプラス30歳ぐらい老けメイクをしているん



だけど、多分相当のおばあさんを演じるのをすごく楽しんだんだろうなぁ、という気がするし、



ひどい目に会うキャラクターの方々も、この<箱庭世界>を構成する要素であることを



ヨロコビに思っているように見えた。 それを見ているあたしも、だからとても楽しかった。



   グランド・ブダペスト・ホテル全景。

       こういう構図の絵画、なんか見たことがあるような。



 物語自体はファンタジックというかファンタジーなのだけれど、時折顔を出す残酷趣味が



いささかグロテスクを拭いきれない“ウェス・アンダーソン的世界”。 そのときどきの



「ちょっといい話」も、時代を経て過去として眺めてしまえば悲劇と喜劇はいつもないまぜ。



同じ時代を共有できた楽しさと、でもいつかは誰かを見送らなければならないかなしさ、



そしてまた自分も誰かに見送られて・・・そんな諸行無常の響きをファーストシーンとラスト



シーンの取り合わせに感じてしまうのは穿ちすぎかしら。


posted by かしこん at 16:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする