2014年05月08日

プリズナーズ/PRISONERS



 これはWOWOWの『ハリウッド・エクスプレス』で紹介されたのを見てから、「絶対



見たい!」と思っていた。 サスペンス・スリラー要素たっぷりの人間ドラマで、ヒュー・



ジャックマンとジェイク・ギレンホールの演技対決あり、ということで。 いや、確か他にも



大きなポイントがもうひとつあったような・・・思い出せないまま、神戸国際松竹へ。 座席が



新しくなってから来るのは初めてで、以前とは座席のレイアウトが変わっていたので自分



好みの位置がどのあたりか悩んだ(シートはたっぷりサイズのシネコン仕様になりました)。



   愛する娘を奪われた時、父が踏み越えた一線とは。



 比較的北に位置するある静かな田舎町(ペンシルベニア州?)、ケラー・ドーヴァー



(ヒュー・ジャックマン)は息子に鹿狩りを教えている。 彼の言葉の端々から敬虔なクリス



チャンだとわかる。 その日は感謝祭、隣家の友人フランクリン&ナンシー・バーチ夫妻



(テレンス・ハワード、ヴィオラ・デイヴィス)のもとを一家で訪れ、鹿肉を料理し穏やかに



過ごすはずだった。 ふと気づくと、ドーヴァー家の娘アナとバーチ家の娘ジョイ(二人とも



6・7歳)の姿が見えなくなっていた。 警察に通報し、兄たちが目撃した見慣れぬRV車の



ことも証言、連絡を受けたロキ刑事(ジェイク・ギレンホール)は車を見つけ、運転していた



男・アレックス(ポール・ダノ)を容疑者として捜査を開始するが、決定的な証拠が出ない。



警察や町の人たち総動員で森や川を探すが、二人の娘も発見できない。 証拠不十分で



アレックスを釈放せざるを得ない警察に、ケラーの怒りが爆発する・・・という話。



   警官やマスコミなどを突破して、

                     アレックスに詰め寄るケラー。



 こ、こんな豪華キャストだったのか!、と驚愕。 ヒュー・ジャックマンとジェイク・ギレン



ホールだけでなくヴィオラ・デイヴィスが登場してびっくり、テレンス・ハワードが出てきて



またびっくり(またちょっと気弱でダサい感じになっているところも面白い)、ポール・ダノに



至ってはかなり増量して“いかにもキモい感じの人”に変貌。 ケラーの妻はマリア・ベロ



だし、アレックスの叔母として登場するのは、結構老けメイクをしているがメリッサ・レオ!



みなさんスターとしてのオーラを一切封印し、<田舎町に住む人々>になっているので



「え、この人は、あの人だよね?」と不安になるくらい(思わずエンドロールで確認した)。



 犯人はアレックスだと確信したケラーが、娘の居場所を聞き出すためにアレックスを監禁・



拷問する・・・というところまでが予告編のあらすじ。 警察でもない、元秘密諜報部員でも



ないただの一般人の父親ができることには限界があり、その限界の枠を一歩越えてしまう



葛藤と容疑者との心理戦がメインなのかと思ってました。 でも、全然違った。



 ロキ刑事は優秀な人らしいが、彼にとっては事件のひとつ。 冷静さを失わないのが



彼には重要だとわかるが、娘が行方不明の家族に対してその言い方はちょっと・・・と感じる



部分もあり、ケラーの暴走に対して「そうなっちゃうのも仕方ないかもなー」と思えてしまう



恐ろしさ。 この共感って法治国家の意義を根底から揺るがすものなんだけど、でもそう



思ってしまうのは死刑存置国・日本に住んでいるからですかね。 しかしケラーの思いは、



法よりもまず“神”に対してという立ち位置で、ここが無宗教の日本人にはいまいちわかり



にくいところ。



   かみ合わないふたりの会話。



 だからといってロキ刑事が捜査に手を抜くことは一切なく、大都市だったら違法捜査で



裁判がひっくり返されるようなことも平気でやる。 かつて少年院にいたこともあるという彼の



個人的事情は映画では明らかにならないものの(身体のいろいろなところにあるタトゥーが



わずかに過去を表現?)、冷徹に真実を追い求める男が焦りと不安に急速に飲み込まれて



いく様は見物。 前半はヒュー・ジャックマンが、後半はジェイク・ギレンホールがこの映画を



引っ張っていった感じ。 とはいえ演出も見事で、この映画が153分もあることにまったく



気付かなかったほどの緊迫感に満ちていた(エンドロールで、深呼吸ができず息苦しくなって



いた自分にびっくり)。 もう空は冬で、全体的にくすんだグレーのトーンで統一されていて、



家族が希望を持てない様子がこっちにも伝染する。 あぁ、最悪の事態を覚悟しなければ



ならないのか!、という気持ちになってくる(だから呼吸が浅くなっていったものと思われる)。



   家族揃ったシーンは最初だけだったよ。



 必要なときにはアップを、そこ、追いかけてもいいんじゃないの?、というところであえて



カメラを固定し、この先はあえて描写しなくてもみなさんわかるからいいですよね、という



大胆な省略法といい、カメラワークも計算されつくしており、その過程があるからこそラスト



シーンがものすごく効果的に響く、という。



 誰だ、監督は誰だ!、で思い出す。



 そうだ、『灼熱の魂』の監督(ドゥニ・ヴィルヌーヴ)のハリウッド初進出作だった!



 ・・・なるほど、この緊迫感、納得。



 もうひとつの驚きは、かなり骨太なミステリだったこと。 動機の面ではキリスト教が背景に



あるのでわかりにくいのですが、手掛かりがフェアに提示された謎解きである、という意味



では「実は原作があるんじゃないの?」という気持ちになるというか(翻訳ミステリにおぼれて



いるあたしにはそう感じられたけど、実際はオリジナルストーリー。 トリッキーさに寄りすぎ



ない本格ミステリを映画にも期待できると知り、大変うれしい)、それくらい描かれていない



バックエピソードが沢山ありそうな“完成された物語世界”の雰囲気ばっちり。



 実話をもとにしていなくとも、これだけ奥行きのある物語を紡ぐことができる。



 物語の意味や強さを、実感させられる一本。



 そしてタイトルの『プリズナーズ』。 “囚われている人々”とは・・・登場人物すべてのこと



だった。 囚われているものの種類が違うだけ。 それはきっと、あたしたちも同じこと。


posted by かしこん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする