2014年05月03日

アデル、ブルーは熱い色/LA VIE D'ADELE



 原題は『アデルの人生』なのになんでこんな邦題?、と思ったら、英語圏でのタイトルが



“BLUE IS THE WARMEST COLOR”だからなのね。 でもwarmは温かい、という



イメージ・・・邦題って難しい!



 高校生活に順応しているようでしきれていないアデル(アデル・エグザルコプロス)は、



自分を気にしているらしい先輩の存在をクラスメイト達にからかわれたりしつつ、日常生活に



折り合いをつけようとしていた。 しかしある日、青い髪をした女性(レア・セドゥ)とすれ違い、



それ以来彼女の姿が頭から離れなくなる。 どうにかして探し出し、運命的な再会を果たした



アデルとエマは愛し合うようになる・・・という話。



   あの時から、生きることは歓びになった――



 女同士のラブストーリーということで一部で話題になったようですが(それ以前に第66回



カンヌ国際映画祭パルムドール作品ですが)、若いが故にまっすぐで不器用で、愛がある



のに傷つけあって、自分が未熟だから結局うまくいかない、という<よくある若き恋愛の



雛型>のような物語。 性差は特に気にならなかったけど、それは見たあたしが女だから



かしら。 しかも言ったらそれだけの話でほぼ3時間というフランス映画独特の感じを受け



つけない人もいるかも・・・あたしは十分楽しめてしまいましたが。



 不思議なのは、高校時代のアデルは知性があり、独特の個性があるから周囲から浮いて



いるように見えたのに、エマと付き合うようになって、画家として成功していく彼女の友人や



周囲の人間を目にしてから自分を取るに足りない人間と決めつけて自分の枠の中に閉じ



こもっている様子。 エマがアデルを愛しているのはエマが評価する部分がアデルにある



からなのに、そのことを理解していない。 ま、そこが若さなんだよなぁ。 相手の望むように



自分を100%変える必要はないけど、多少の向上心は必要なのに。 相手を信じないって



ことは、相手より自分のほうが大事ってことになっちゃうのになぁ。



 アデルがしでかすことを見るたびに、とても残念な気持ちになる。 でもそれらはほとんど、



あたしがかつてしでかしたことだからだ。



   勿論、二人にとっていい時期もある。



 画家・アーティストとして生きていくエマにとって、人生は先のわからぬ刹那的なもので



あり、自分のチャレンジ次第でいくらでも変わるもの。 でもアデルの望む人生は、まずは



安定。 だからバカロレア通過後は学校の教師を目指すが、いい文章を書けるのだから



そっちもやってみれば、と勧められても頑なに拒否する。 教師をしながらでもチャレンジは



できるのに(そして教師だって平凡な職業ではないとあたしは思うんだが)、それ自体を



人生の安定の否定とみなすアデルの思い込みはなんなんだろ。 これはもう、生き方の



違いだとしか言えないのだろうか(となるとあたしは安定の人生を望む人間ではないという



ことか)。



 ほぼ出ずっぱりのアデル役、アデル・エグザルコプロスは高校生から20代前半までの



時間を文字通り体当たりで演じており、ほとんど自分の人生の一部にこの映画がなったん



じゃないか、と思うほど(ヒロインの名前を原作と変えて彼女と同名にしたのも監督のそんな



意図があるんだろう)。 あるときは油断しすぎなまぬけな表情を、またあるときははっとする



ほど美しい顔をする。



 対するレア・セドゥは『マリー・アントワネットに別れを告げて』のときともまったく違い、



年齢不詳のアーティスティックな本性のなかに恐ろしいほどの純粋さを隠し持つ老成した



若い女性であり続け、この人もすごい女優だと実感。



 よく言われることだが、人生には様々な曲がり道があり、出会いがあり、別れがある。



 もし、この選択をしなかったら、もしこの人と出会わなかったら・・・ふと自分を振り返れば



「そうしなければ今はない」という恐怖にも似た感情が見える。 勿論、そのかわりに今とは



違う現在があるんだろうけど、それが今よりいいかどうかわからないし(今よりいい可能性



だってあるけどさ)。 けれど、数限りない選択(意識的・無意識的含めて)の先にまた別の



人生があるとしたら、自分の未来の可能性もまた無数。



 もしアデルがああ言わなかったら、ああしなかったら・・・と考えることは、同時に自分の



人生を見つめ直すこと。



 あぁ、そうか、『アデルの人生』とは『あなたの人生』という意味でもあるのか。



 そんな、映画的体験に満ちた映画だった。


posted by かしこん at 08:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする