2014年04月08日

HHhH――プラハ、1942年/ローラン・ビネ

 東京創元社メルマガの新刊情報を見て、「なんだか面白そう!」と思ったものの、ハードカバーだったので買えず・・・図書館に予約を入れて、半年近く待ちましたかね。 そんなに人気があったのか(いや、所蔵冊数が少ないせいがいちばんの理由かも)。
 意味不明の題名ですが、サブタイトルの『プラハ、1942年』という部分にはついつい“プラハの春”などを連想してしまって(『プラハの春』という小説もありました)、それにもにやり。 歴史にそんなに詳しくないくせに(というか、ある特定の範囲にはすごく詳しいが、全体像がおぼろげ)、歴史モノについ惹かれるあたしの習性。

  H4プラハ.jpg HHhHとはドイツ語で“Himmlers Hirn hei't Heydrich”:「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」の意。

 ナチス・ドイツにおけるユダヤ人大量虐殺の首謀者であり責任者、金髪の野獣と呼ばれたラインハルト・ハイドリヒを暗殺すべくチェコ政府によって送り込まれたパラシュート部隊のうちの二人の青年、ガブチークとクビシュのことを中心に。
 そう、これはエンタテイメントとしての歴史小説ではなく、史実として確認されたことのみで構成されているノンフィクションやルポルタージュでもなく、もともとプラハという街の美しさに魅せられていた作者が<類人猿作戦>と呼ばれた暗殺事件にも惹きつけられていき、資料を集めていくうちにどんどん深みにはまっていく過程を記した随筆のようでありながら、実はとてつもなく実験的で野心的な手法で<小説>の本質に迫ろうとしているもの。
 だからといって難しいことはまったくなく、過去を俯瞰する未来からの立場を捨てて、同時代人としてその場にいたかった、とでもいうような作者の強い思いがトリッキーな文体をつくりだしたような気もするし、そう読むこと自体作者の罠にはまっているのかもしれないし。
 いわゆる<ナチスもの>と言われるジャンルは数多く書かれ、映画も沢山あるけれど、そういうものからも一線を画した存在でありたいという作者の自負は熱いし。
 歴史の陰には名もなき人々の悲劇が埋もれている、と示される部分にはあたしも心がえぐられます(これは、『それでも夜は明ける』よりぐわーんときた)。
 この本を読み終えようかというタイミングで、「ヒトラーの妻であったエバ・ブラウンにはユダヤ系の血が流れていた」というようなニュースを見た。
 <いわゆるナチスもの>の根は深い。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 06:01| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする