2014年04月03日

それでも夜は明ける/12 YEARS A SLAVE

 ようやっと見に行けば、アカデミー賞ブームはいささか去った感じ・・・ま、そのほうが、ゆっくり見れてありがたいですが(でも映画館の経営的には大丈夫か、とつい心配する)。
 アメリカ南部の綿花農園で12年間も奴隷生活を強いられたある黒人男性の実話を元にした手記の映画化、という本年度アカデミー賞作品賞受賞作。
 1841年、アメリカ北部で<自由黒人>というライセンスを持つヴァイオリニストのソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、差別と関係なく家族とともに幸せに暮らしていたが、ある日、奴隷商人の罠にはまり、南部の綿花農家に売り飛ばされてしまう。 それから始まる12年間の苦悩と苦痛の日々・・・という話。

  それでも夜は明けるP.jpg あきらめない。

 なにしろ『アミスタッド』的な奴隷制度をイメージしていると肩すかしをくらう。 むしろ“自由黒人”という“白人でも黒人でもないもの”という異物感が、「いわゆる人種差別もの」というジャンルに収まってほしくない意図とか、固定化された加害者と被害者という位置づけもひっくり返したい気持ちとか、いろんなものを連れてくる。
 なので農場でソロモンがひどく折檻された後、同じ黒人奴隷である他の人たちが誰ひとり助けようとしない・・・というのがソロモンの立場の曖昧さの象徴でもあり、なにをしても自分に跳ね返ってくるとわかっている奴隷側の恐怖と保身とあきらめをいやというほど伝えてくる(冒頭、奴隷たちに草刈り鎌を平然と与えて使わせているのを見て、「あ、白人たちは反乱を恐れていない」と驚いたし)。 自らの賢さを押し隠し、命じられたことをこなすだけの日々。 これを、今のブラック企業や労働者たちのこと(権力者とイエスマンしか残らない状況とか)と比較するのはなんだかレベルが違いますか。

  それでも夜は明ける4.jpg でも直接対話はできる。

 悪辣そのものと言える農場主のエップス(マイケル・ファスベンダー)は絵に描いたような人種差別主義者だけれど、奴隷の小娘(ルピタ・ニョンゴ)への執着を愛だと認めたくない苦悩が、「被害者だけでなく、差別する加害者の心をもまた破壊する人種差別そのものが悪である」という監督の最も言いたいことをあらわしていると思うんだけど、それを読み取るまでにこっちの精神も消耗します・・・。
 そんなわけで大変へヴィな内容で、「ポール・ダノは『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』もそうだけど、なんだか南部が似合うなぁ」とか、「おや、ベネディクト・カンバーバッチったら、イギリス映画『アメイジンググレイス』では奴隷制度廃止法案に動く首相だったのに(かっこよかった!)、こっちでは自分の主義主張を貫き通せないよわっちい農場主かい! でも時代がかった衣装が似合うなぁ」などと心の中で気分転換をしないと身がもたない。
 ラストシーンも美しいけれど全然ハッピーで終わらない・・・ソロモンは自由になるけれど(ブラッド・ピット、一人でおいしいところを持っていき過ぎ!)、奴隷制度が廃止になるわけではない・・・リンカーンの宣言まで、まだ何年かあるから。
 どよーんと気分が重たくなっても、忘れ難い映画としてプラスの印象になってオールタイムベストに入れたくなる作品もあるが(あたしにとっては『カティンの森』のような)、なんだかこの映画はちょっと違うかな・・・なんでだろう。

ラベル:映画館 外国映画
posted by かしこん at 06:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 movie | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする