2014年02月23日

緑衣の女/アーナルデュル・インドリダソン

 先日、『ジェイコブを守るため』を返却しにいつもの図書館カウンターに出向けば、「予約本が来てますよ」ということでこれが出てきた。 ぎゃっ!、と心の中で叫ぶ。 これも予約が詰まってる本じゃないか・・・(あたし自身も5ヶ月ぐらい待ったかも)。
 ・・・また返却締め切りが迫る。
 『湿地』に続くアイスランドの捜査官エーレンデュルシリーズ、邦訳2冊目。 2003年ガラスの鍵賞、2005年CWAゴールドダガー賞受賞という華々しい経歴を持つこの物語は『湿地』のあとがきにおいて訳者柳沢由実子さんに「訳すのが恐ろしい」と言わしめた内容である。 『湿地』自体も重苦しい、救いのない話だったが、尚更なんですね!

  緑衣の女.jpg 表紙もどこかダークですしね。

 レイキャビク郊外の新興住宅地で、近くの建築現場から子どもが特別な石を見つけて宝物にした。 しかしそれが人骨の一部とわかり、発見現場周辺は発掘現場のようになる。 検視官が休暇中のため、考古学者と医学生が、それぞれ遺体は死後数十年が経過したものであると証言。 一体誰のものなのか・・・エーレンデュルとその仲間たちは地道な調査を開始する。
 現代パートの合間に、DVの嵐に翻弄される哀しい家族の物語が。
 自分の家族(だったもの?)に対してどう振る舞っていいのかわからないエーレンデュルの苦悩も変奏曲となり、暴力の根深さというか連鎖というか、相手を傷つけたり罵ったりすることでしか自分を守れない人たちの哀れさがとにかく悲しいのだが、でももし自分の近くにこんな人がいたら「あわれだ」とか言ってらんないだろうな・・・速攻で手を切るしか被害を受けない道はない。
 ジャンルとしてはミステリだが、犯人は誰かが重要ではなくて、哀しい人生を送らざるを得なかった人たちへの追悼文のような。 そういう意味では文学性が高いと言えるのかも。
 北欧とはいえども家庭内暴力(夫から妻や子供への肉体的・精神的暴力)が認められない、夫が否定したら事件にもならない時代があったというのが・・・今は声を挙げられるようになっただけ、逃げ道を行政が用意してくれるようになっただけましなんだよなぁと感じつつ、暴力をふるう男の存在が決してゼロにはならないことを嘆く。
 はぁ、それほど長い話ではないので一晩で読み終わったけど、その結果受けたダメージは計り知れないわ・・・。
 シリーズはまだ続いているらしい。 エーレンデュルとその娘との関係は修復できるのか? そこは次の翻訳を待つとして・・・彼を見ているとお悩みヴァランダー警部が結構幸せそうに思えてくるほど、エーレンデュルの人生は苦悩に満ちている。 なんだかかわいそうすぎる。

ラベル:海外ミステリ
posted by かしこん at 09:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ 読んじゃいました | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする